136.オーラバトル
俺……リーフ・ケミストは、公爵令嬢のプリシラさんの屋敷で、ローレン君と模擬戦している!
戦いながら、俺は心地よさを覚えている。
「はぁ!」
「まだまだぁ!」
俺とローレンくんの拳が、空中でぶつかり合う。
衝撃波で地面がめくり上がって、周囲にあるものをぶっ飛ばしていく!
「ひぎやぁあああああああああああああああああああああああ!」
マーキュリーさんがまるで台所でゴキブリ(5メートル)を見つけたような叫び声を上げる。
え。5メートルのゴキブリくらい、いるよね? 普通に。
でも周りにはゴキブリらしき物が見えないし、何に叫んでたんだろう……。
「よそ見は禁物だぞ!」
ローレン君が死角から鋭いけりを放ってくる。
俺は攻撃を受け流しそのまま地面にたたきつける。
ばごぉん! とまるでトカゲ(5メートル)を叩き潰したときのように、地面に大きなクレーターができあがる。
え、5メートルのトカゲ(翼、爪あり)くらいいるよね?
「はは!」
「ふふ!」
どうしよう……俺、今たのしくてしょうがない!
いくら殴っても……ぶっ壊れない相手なんて初めてだ!!!
「ローレン君……すごい」
「いや、リーフせんぱいこそ、すごい!」
俺はちょっと孤独だった。
都会に出てきて、いろんな人に出会った……。
あれ、もしかして俺おかしいんじゃないかって。
俺が異端児なんじゃ無いかって、思って、ちょとさみしかったのだ。
でも……俺は出会った。
ローレン君。
俺とおなじく、化けものに!
「俺は……一人じゃ無いんだ!」
「そうだ! せんぱい! おれもいるぞ!」
俺のこぶしとローレン君のこぶしが、すごい勢いでぶつかりあう。
キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!
「もうキンキンやめろやあああああああああああああああああ!」
マーキュリーさん、絶叫。
喉渇くだろうなぁ。完全回復薬、あとであげないと。
「ぜえはあ……もそろそろいい加減にしなさい!」
なるほど……。
「そろそろ、決着を付けようか」
「そうだね!」
たんっ、とローレン君が俺から距離をとって、「むぅん!」と気合いを入れる。
その瞬間、彼の体が黄金に輝きだしたのだ!
「あ、あれは……まさか、闘気!? 嘘でしょ!? 武芸の達人だけが、習得できると言われる、最上位の身体強化術じゃないの!!!!」
達人だけが到達できるわけじゃないけど、都会で闘気をマスターしていた人、いなかったから……。
久しぶりに見る闘気の輝きに、思わず見惚れてしまう。
「すごい……練り上げられてるね」
アーサーじーちゃんにも負けないくらいの、強い闘気だ。
「さぁどうする、リーフせんぱい!」
「そんなの……真っ向から受け止めるに、決まってる!」
全力で向かってくるんだ、逃げるなんてもってのほか!
全力で……応じるのみ!
「ちょっとリーフ君! やめなって! 木っ端みじんになるわよ!」
「はい!」
「はいって!」
「え、でも木っ端みじんになっても、回復薬があれば生き返られますよね?」
「ねーーーーーーーーーーーーーーよ! 木っ端みじんになったら死ぬんだよ普通!!!」
「え、死にませんけど?」
「あんたはね! ちくしょう!!!!!! もう知らない! 好きにすれば!」
マーキュリーさんが、俺を信じてくれてる。
俺が……絶対に勝つって。
だって逃げろって言わなかった。
好きにしろ、つまり、好きに戦えと、そうすれば……勝つと!
「ひどいねつ造を見たわ……」
「来て! ローレン君!」
「応! これが……おれの一撃! 究極闘気砲ぅ!」
その瞬間、ローレン君の攻撃は音を置き去りにした。
手から、凝縮された闘気が放射される。
ワンテンポ遅れてすごい衝撃が走る!
「はぁあああああああああああああああああああああ!」
俺が採った選択肢は、調剤スキル。
回復薬をひたすらに作り、ひたすらに耐えること。
壊される都度、再生する。
そうやって俺の手を、体を、再生し続けた結果……。
しゅぅうう……
「はは! 見事だ、せんぱい……!」
ばたん、とローレン君がその場に倒れる。
大汗をかいて、肩で息をしていた。
「まいった! おれの……体力が底を突いた。せんぱいの勝ちだ! お見事!」
ふぅ……勝てた!
せんぱいの面目を、保つことができたぞっ。
まあでも、ローレン君もなかなかやるなぁ。
アーサーじーちゃんほどじゃなかったけど、結構強かった!
俺はポーションを作って、ぶっ壊れた物を全部再生し、ローレン君に腕を伸ばす。
「ナイスファイト!」
「ありがとう!」
こうして、俺たちの模擬戦は、俺の勝利で幕を下ろしたのだった。
ふぅ……。
「ふぅじゃねえよ! なんだよ今の! 妖怪大戦争かよぉおおおおおおおおおおおおお!」
マーキュリーさんが叫んで、喉渇いてそうだったので、完全回復薬をプレゼントしてあげたのだった。
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