表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

132/257

132.ギルマス脅す


 リーフ・ケミストの保護者役である、魔女マーキュリー。

 彼女はリーフ、そして新しいギルメンである少年、ローレンを連れて、冒険者ギルド天与の原石へとやってきた。


 ここは王都にある、最高ランクの冒険者ギルド。

 当然実力者が集まるし、依頼も多い。


 賑わうギルドの中を、マーキュリーはずんずんと進んでいく。

 受付へと向かうと、そこには黒髪の、背の高い少年がいた。


「……あ、ま、マーキュリー、さん。お久しぶり……です」

「こんにちはキルトくんギルマスいる? いるよね? 出せ」

「……は、はひぃい」


 この気弱そうな少年、名前をキルト・インヴォークという。

 受付嬢、ニィナ・インヴォークの兄であり、【とある秘密】を抱えているのだが……まあそれは本題には関係ない。


 マーキュリーは一言言ってやりたかった。

 ギルマスに。


 キルトはうなずいて、いったん奥へ下がって戻ってきた。


「い。今は居ない……って、答えろと……」

「いるのね。わかった、直接乗り込むわ」


 マーキュリーは少年二人を引きずりながら、2階ギルマスの部屋へとやってくる。

 ばんっ! と扉を開く。


 しかしギルマスのヘンリエッタの姿は無い。


「……いない」

「え、居ますよ?」


 くんくん、とリーフが鼻を鳴らす。

 彼は鋭い嗅覚を持っているのだ。


 マーキュリーには知覚できないが、彼が言うなら、この部屋にヘンリエッタはいるはず。


「ゆけ、猟犬リーフ君! ギルマスを見つけ出すのよ!」

「わんわんっ!」


 リーフはノリで犬のように吠えた後、「調剤!」とスキルを発動。

 ふわ……と甘い香りが周囲に漂う。


「ふぎゃぁああああああああああああああああああああ!」


 天井から何かが落ちてきた。

 ヘンリエッタが、鼻を押さえて悶えていた。


「なんつーにおいじゃ! これはなんじゃ!」

「南国の花を使った香水です! 獣人にはちょっときついかも知れないですね」

「くそぅう……わしの完璧な隠蔽を見破るとは、さ、さすがリーフじゃなっ。見事な嗅覚じゃ!」


 一方で、マーキュリーは額に怒りの血管を浮かべながら、小娘の頬を手で挟む。


「ふぁ、ふぁふぃ?」

「ギルマス、どういうことかしら? なんで、わたしがこの化け物2体の面倒を? ん?」


 笑顔のマーキュリーからは、絶対許さないというすごみを感じた。

 後ろでローレンおよびリーフがが「化け物? どこだ?」「どこだろうね?」とボケを噛ましていた。


 ヘンリエッタはマーキュリーから離れて、椅子に座る。


「こ、こほんっ。マーキュリー。おぬしに依頼を」

「NO」

「まだ何も言ってないのじゃ!」

「この子らの面倒見ろってんでしょ? じょーーーーだんじゃないわ!」


 だんだんだん! とマーキュリーが机を激しく叩いて抗議する。


「リーフくんひとりでどんだけ手を焼いてるって思ってるの!?」

「う、うむ……し、しかしのぉう。ほら、化け物を一匹手懐けていられるのじゃから、二匹も変わらないんじゃ……」

「ストレスで死ぬわ……! ああもう! リーフ君!」


 わかってますよ、とばかりにリーフが近づいてきて、頭痛薬エリクサーを渡す。

 ごくごくと飲んで、マーキュリーがドスのきいた声で言う。


「……こっちはね、ただでさえ面倒ごと、増えてて大変なんだから」

「う、うむ……詐欺のやつじゃろ?」


 今王都で、詐欺事件が横行してるのだ。

「そう。買ったのが贋作か本物か、見極めて欲しいって……次から次へ依頼がくるのよ!」


 マーキュリーには鑑定眼がある。

 そのため、偽物のアイテムや武器を簡単に見抜くことができるのだ。


「せ、盛況で何よりじゃな?」

「あ゛? ぞ?」


 殺すぞ? って言いたいらしいマーキュリーに気圧される、ヘンリエッタ。


「とにかく、化け物二匹はむり! むりむりむり!」

「しかし他に面倒見てくれるものなどおるまいて……」

「エリアルとかいるでしょ。なんだったらギルマス……貴女でも? ねえ」

「い、いやわしは……ギルマスじゃし……」

「じゃあ面倒見てくれるひと探して。今すぐ、なう」

「わ、わかったのじゃ……ふぇええん……」


 ふんす、とマーキュリーが鼻息を着く。

 そこへ、リーフが潤んだ目で見上げながら言う。


「マーキュリーさん……俺……迷惑、ですか……? そばにいたら……」

「うぐ……」


 正直おまえが一番迷惑かけてるよ、って言いたい。だがマーキュリーは、リーフに惚れている。


 惚れた弱みで、リーフにはそう強く物が言えないのだ。

 ツッコミは入れるけれども。拒むことはできない。


「め、迷惑じゃ無いから……ただ私ひとりじゃ手に余る、化け物だから君」

「そっかー! よかったー!」


 化け物って言ったのに喜んでいるリーフ。

 ほんと、変な子と思う一方で、笑ってる彼をかわいらしいって思う。


「は、話がついたぞい!」


 どうやら通信用の魔道具を使っていただろう、ヘンリエッタが言う。


「プリシラ殿が手伝ってくれるそうじゃ!」


 プリシラとは、グラハム公爵家の令嬢で、リーフがかつて助けた貴族娘である。

「そ。じゃ、いくわよ二人とも」

「はーい!」「うむ!」

【★読者の皆様へ お願いがあります】


ブクマ、評価はモチベーション維持向上につながります!


現時点でも構いませんので、

ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂けると嬉しいです!


お好きな★を入れてください!


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ