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131.魔女の受難



 リーフ・ケミストが暮らしているのは、ゲータ・ニィガ王国と呼ばれる場所。

 広大な土地と、歴史と伝統のある王国。


 そんな王国の北東部ある街、王都ニィガ。

 ゲータ・ニィガ王国のなかでも、特に栄えたこの町に、魔女の工房がある。


 彗星亭。

 魔女マーキュリーが経営する店だ。


 マーキュリー。

 金の髪に、眼鏡をかけた、若く美しい女である。

 彼女はデッドエンド村の村長夫人、マーリンの孫娘だ。


 偉大なる魔女の孫ということで、彼女には人にはない才能があった。

 鑑定眼。そして、高い魔法の力。


 マーキュリーはそれらを駆使し、悩み相談に来る人たちを助けたり、アイテムを渡して導いたりしていく。


 人は彼女を、彗星の魔女と呼ぶ。

 ……さて。


 彼女は依頼されていた魔道具の一つを完成させる。

 ペンダント型の魔道具だ。


 よしとうなずいて、彼女は工房から出てくる。

 そこへ、ちょうど小さな女の子がそわそわしながら待っていた。


「お待たせ」


 マーキュリーが微笑みながら、女の子にペンダントを渡す。


「どう?」

「うん! ままのこわれたペンダント! 元通りだ!」



 この少女からの依頼であった。

 母が大切にしていたペンダントが、最近調子が悪くなってしまった。


 それを直して欲しいという依頼である。

 マーキュリーは、基本何でも屋をやっている。


 戦うこともあれば、こうして道具の修繕を頼まれることもある。


「守りの魔法がきれかけてたから、新しくかけなおしたわ。あと、魔核にひびが入ってたからそこも修繕して……」


 マーキュリーは女の子の表情が、みるみる曇っていくのがわかった。

 手がかかればかかるほど、修繕費がかさむと思っているのだろう。


 マーキュリーは微笑むと、女の子の頭をなでながら言う。


「おめでとう! 実は今日ね、開店10周年の記念日なんだ! だから今日は修繕費……なんとゼロ!」

「えー! いいのぉ!」


 ええ、とマーキュリーが優しく微笑む。


「だからほら、速くお母さんのとこへかえって、プレゼントしてきなさい」

「うん! お姉ちゃんありがとう! やさしくてかっこいい、お姉ちゃん!」


 ひらひら、とマーキュリーは手を振る。

 賢く、そして優しいその姿は、なるほど二つ名がつくほどの魔女であるといえた。



「優しくてかっこいいお姉ちゃん……かあ……」


 ふへ、とマーキュリーが締まりの無い笑みを浮かべた……そのときだった。


 ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


 ……ちょうど少女が出て行って数刻もしないうちに、マーキュリーの工房のドアがぶっ壊れたのである。

 またか……! と思いながらマーキュリーは叫ぶ。


「リーフ君! まーたあなたねえ!?」


 叫ぶ姿からは、先ほどの神秘性などかけらも感じられない。

 これが本来のマーキュリーである。


 リーフがぼけて、マーキュリーが突っ込む。

 彼が王都にきてから繰り返されてきた、いつもの風景。


 しかし……扉をぶっ壊したのは、リーフではなかった。


「おお! 扉が自動であいたぞ!」

「……って、誰君?」


 赤銅色をした髪の毛の少年だ。

 年齢は一〇歳ほどだろうか。


 にかっ、と快活に笑う姿は、年下のやんちゃ小僧のように見える。


「あなただれ?」

「おれはローレン! ただのローレンだ!」

「はぁ……そう……」


 吹っ飛んだ扉を見やる。

 これにはまじないがかけており、マーキュリーに対して敵意や害意を持つものでは、決して開けられない防犯扉となっていた。


 しかし……。


「まじないが……ぶっ壊れてるわ」


 それは見事に、ぶっ壊されていた。

 粉々である。


 リーフであっても、ここまでの破壊はできないだろう。


「君……なにもの?」


 ちょっと気になって、マーキュリーはローレンを鑑定する。

 彼女にはランクの高い、鑑定眼が備わっている。


 それでローレンの姿を見て……驚愕する。


「な、な、なぁ……!? あ、あなた……いえ、あ、あなた様は!?」


 マーキュリーは、鑑定結果を見て驚愕する。

彼の正体について、知っていた。

 この少年が、【ただのものではない】ということを。


「あ、マーキュリーさん! ただいまー!」

「リーフ君!!!!!」


 マーキュリーが駆けつけて、リーフの肩を揺する。


「ちょっと君、この子なに!?」

「え? ローレン君ですよ。ヘンリエッタさんがスカウトしてきた、新しいギルメンですって!」

「新しい、ギルメン……!?」


 なんで!?

 とマーキュリーが驚愕する。


「うむ! 今日からおれは、天与てんよの原石のギルメンだ!」

「は、はぁ……」


 マーキュリーは彼を知ってる。

 歴史の教科書に載るほどの、偉人だからだ。


 しかしその人物は死んだと記録に残っている。

 では、なぜその偉人が子供の姿で目の前に居るのか?


 ……一つ考えれるのは。


「……転生」


 生まれ変わり現象のこと。

 おそらくは、このローレンという少年は、歴史上の偉人が転生した姿なのである。

 

 大地を割り、天を貫き、そして海を干上がらせた。

 そんな怪力と剣術の使い手が……この少年である。


「ローレン様が、どうしてうちに?」


 するとリーフが、ごく自然な調子で言う。


「え、今日から一緒に、居候することになったからですけど?」


 マーキュリーは天を見上げる。

 聞き間違い……ではなさそうだ。


 居候?

 ただでさえ、リーフ・ケミストという異次元の化け物の面倒を見てるだけで、毎日精神的に疲弊しているのに?


 そこに加えて、歴史上の偉人が転生してきた、少年も面倒見ると?


「ふ、」

「ふ?」

「ふざっけんなぁあああああああああああああああああああああああああ!」


 さっき少女に見せたミステリアスなレディはもういない。

 彼女はガリガリと頭皮をかきながらもだえる。


「なーんで私が、爆弾二つも抱えなきゃいけないのよぉ!」


 心労がかさむのは目に見えていた。

 そんな彼女に、リーフ・ケミストが笑顔で何かを手渡す。


「はい、頭痛薬!」


 リーフ・ケミストの手に持っていたのは、明らかに完全回復薬エリクサーだった。

 ……もはや、マーキュリーにとって、この全ての怪我・病気を瞬時に治す、超レアアイテムは必須だった。


 ごくごく! とマーキュリーは頭痛薬エリクサーを飲ほす。


「美味いわちくしょう!」

「もう一本?」

「いらんわっっっっっっ!!!!!!」


 ……マーキュリーの受難は、今回も続くのであった。


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