130.全自動エリクサー生成マシーン
俺の名前はリーフ・ケミスト。
どこにでも居る、田舎出身者。
元々師である薬師のアスクレピオス師匠と、その孫であるドクオーナと一緒に暮らしていた。
しかし師匠は死に、ドクオーナからは婚約破棄を言い渡される。
俺は王都をでて冒険者ギルド、天与の原石に所属することになった。
村長の奥さん、マーリンばーちゃんのお孫さんである、マーキュリーさんのもとで居候させてもらっている俺。
ベヒモスのタイちゃん、Sランク冒険者のエリアルさんなど、いろんな人と出会いながら、少しずつ冒険者としてのキャリアと、都会での常識を身につけていた。
そんなある日、人間に変身する顔無しの化け物が王都を襲った。
俺は仲間達とともにこの事態の収拾に当たった。
その課程で、俺の中に秘めたる力を解放。
敵を消滅させることに成功したはいいけど、俺の正体が化け物だと知られてしまう。
しかし天与の原石のみんなは、こんな俺のことを温かく迎え入れてくれたのだった……。
★
俺はタイちゃんと一緒に、王都から離れた場所に、薬草を摘みに来ている。
ベヒモスのタイちゃんは、普段は赤い毛皮の獣の姿をしてる。
よく俺を乗せてくれる、相棒的存在だ。
「さ、薬草たち、おいで!」
俺が呼びかける。
それだけで、周囲に緑色の光が転々と浮かび上がる。
これは、緑の精霊。
草花のなかに秘めたる、精霊たちだ。
俺の目は特別製で、この精霊達を肉眼で見ることができる。
精霊と心を通わせることのできる俺は、呼びかけるだけで、薬草が自動で集まってくる。
そして、俺は手を前に突き出してスキルを発動させる。
「【【調剤:回復薬】】!」
薬師のスキル、調剤。
素材となる薬草を使い、薬を作るスキルだ。
回復薬以外にも、毒や麻酔など、使い方を誤れば危険な代物も作れる。
俺は主にこのスキルを使って、薬を作る、いろんな問題を解決していた……んだけど。
「…………」
「どうした主よ?」
ぽん、とタイちゃんが人間の姿になる。
獣耳に赤い髪がうつくしい、妙齢の女性へと変貌する。
「やっちゃった」
「む?」
俺はタイちゃんにポーション瓶を突き出す。
彼女は瓶を一つうけとり、すんすんと鼻を鳴らす。
「! これは……回復薬ではないな」
「うん、完全回復薬だね」
怪我も、病気も、一瞬で治してしまう凄い薬、完全回復薬。
「俺はただの薬草を摘んで、回復薬を作った。でも、できあがったのは完全回復薬」
「薬草から完全回復薬を作ったのか……まったく、主は相変わらず凄いな」
むーん……。
「どうした?」
「いや、完全回復薬ってそんな凄いかなって」
タイちゃんが「またか……」とあきれたような顔になる。
「だって完全回復薬って村じゃみんな、1日1完全回復薬飲んでたし」
「そんな牛乳感覚で!?」
「うん。完全回復薬くらいだったら簡単に作れるでしょ?」
師匠も楽々作っていたし。
まあ、もっとも完全回復薬って、怪我病気にはきくけど、加齢から来る節々の痛みなどは和らげられるけど、根治はできないんだよね。
「主よ……もう何度目になるかわらかぬが、言っておくな」
すぅ……とタイちゃんが息を吸い込んで言う。
「主の言うところの普通は、普通じゃない!」
「えー……? そうかなぁ?」
「そうだぞ! マーキュリーもいっておるだろうが!」
「まー……たしかにそうだけども」
まあでも、俺にとっては薬を作ることは手足を動かすかのごとく、簡単にできること。
それに俺の周りには、じーちゃんばーちゃんといった凄い人たちばっかりがいた。
そんな彼らと比べたら、俺は全然まだまだ。
てゆーか、村の中で最弱まである。
「頑張ってもっと薬師としての経験と勉強を積んで、世界中の人にきく万能薬に俺は……なる!」
「もうすでに万能薬なんだよなぁ……」
タイちゃんが、大きくためいきをついた。
「さ、納品に行こうか、タイちゃん」
どろん、とタイちゃんがベヒモスの姿になる。
俺は彼女にまたがる。
タイちゃんはタンッ、と地面を蹴ると空中を走り出す。
『しかし主よ……今回のクエストは、回復薬を20本納品だろう?』
「あー……そっか。しまったなぁ。クエスト失敗かも」
完全回復薬しか作ってないや。
怒られちゃうかも……。
『まあそれはないだろうが』
「どうして? 頼まれた物もってこなかったのに?」
『まあいけばわかる』
タイちゃんが王都ニィガへと到着。
商業ギルド、【銀鳳商会】へといき、納品すると同時に頭を下げた。
「ごめんなさい! 回復薬じゃ無くて間違って完全回復薬作ってきてしまいました!」
頭を下げる俺に……。
受付のお姉さんは、首をかしげていた。
「すまない、受付嬢殿。この子は少々、常識がなくって……」
人間姿のタイちゃんがぺこりと頭を下げる。
結局許してもらえた!
やったね!
納品を終えた俺はタイちゃんと一緒に、ギルド天与の原石へと戻ってきた。
「あ! 帰ってきたわ!」
受付嬢のニィナさんが、どたばたとこちらに駆けてくる。
「ニィナさん、どうしたんですか?」
「リーフさんに会わせたいひとがいるんです!」
「俺に?」
ニィナさんと一緒に、俺はギルドの奥へと向かう。
そこにはすでに、人だかりができていた。
「む! 来たか!」
そこには、10歳くらいの小さな男の子がいた。
赤銅色の髪の毛に、明るい笑顔。
誰だろう……?
ギルドの人じゃないや。
すると彼は俺を見て笑いかける。
「おれはローレン! 今日からこのギルドに入る! よろしくおねがいするぞ! 先輩!」
……ギルドに、また新しい仲間が増えるってこと?
後輩だ!
しかも……今回は男の子!
年も近い!
うぉおお!
「うん、よろしくローレン君!」
【★読者の皆様へ お願いがあります】
ブクマ、評価はモチベーション維持向上につながります!
現時点でも構いませんので、
ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂けると嬉しいです!
お好きな★を入れてください!
よろしくお願いします!




