123.化け物になる
リーフ・ケミストと王都で相対する邪教徒。
彼は今瀕死の重傷を負っていた。
リーフの強烈なパンチを受けて完全に内臓が破壊されていた。
ありえない。どういうことだ?
邪神から分けてもらった力のおかげで、彼の体は人間ではない別のものになっている、はず。
そう、人類を超越した、高次元の存在へとシフトした……! はずだった。
だというのに、たかが人間ごときの攻撃を受けて瀕死の重傷を負っている。
たかが人間ごときに恐怖している。
「ありえない……こんなの……あっていいはずがない……何者なんだ、貴様は……」
「俺はリーフ。王都の冒険者ギルド【天与の原石】に所属する冒険者だ」
冒険者……?
これが。
こんな化け物じみた力を持った、冒険者なんて存在するのか!?
「おとなしくしてもらえないでしょうか。そうすれば、傷は癒やしてあげますよ? 大丈夫、俺は薬師なんです。痛いのはすぐに治りますから」
にこやかに笑う人間に、恐怖する邪教徒。
「くそ! がはっ! ごほっ!」
「あー、だめですよぉ。今肋骨が全部折れて、一部が肺に突き刺さってて、すっごい痛いはずですから」
「な!? なぜ……げほげほ!」
きょとんした顔でリーフが首をかしげる。
「えっ……だって匂いでそれくらいわかりますよね? 内臓のどこから、血が出てるかなんて」
……わかった。
ひとつ、確信を得た。
「貴様は……人間じゃない……!」
道理で話が通じないと思った。
人間でないなら会話が成立しないのも、思考回路が常人とかけ離れているのもうなずける。
「なるほど……そうか。邪神様と同じ、神の存在」
「いやだから人間なんですけど……」
相手の言葉は無視する。
もう彼の中では、リーフは化け物という確信しかなかったから。
「神に、人間の体で太刀打ちできるわけがない。こちらも、同じ条件でなければ」
邪教徒は懐から1つの、肉の塊を取り出す。
これは伝書鳩から渡された、彼らが信じる邪神の肉片。
「邪神様! いま、わたくしはあなた様に、全てを捧げまする!」
邪教徒は肉片を飲み込む。
プディングのようにつるりと、喉を通って体の中へと吸収される……。
「う、ぎ、ぐがぁあああああああああああああああああああああ!」
変化は劇的だった。
体の細胞が、まるごと強制的に変えられる。
肌が黒色に変色。
体のパーツも人間の物からかけ離れていく。
体中に目が生えた。
腕は長く、地面に届くほど。
痩せ細った肉体は筋骨隆々とした体へ変わり、耳鼻口は消え去った。
……そこにいたのは、
「正真正銘の、化け物ですね!」
……おまえが言うな、というツッコミをつい入れてしまう邪教徒であった。
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