122.小さな邪神
リーフ・ケミストの前に立つ邪教徒。
彼は困惑していた。
「なんなのだ……なんなのだ……!」
リーフ。理解不能の化け物だ。
邪神の力も人のルールを逸脱するものだった。
この男も、同じだ。
なぜこんなのが、人間の形をして振る舞っているのだろう。
「さては貴様……邪神様の仲間か!? 他の邪神だな!」
「? 人間ですけど……」
「うそつくな! 貴様の力は人間の領域を遥かに超えている! どこの世界に、薬を体外から直接投与できる薬師が存在するというのだ!?」
「? ここにいますけど……」
きょとん顔されると、妙にいらついた。
人をおちょくっているのか?
感情的にさせることで、相手から冷静さを奪うという戦法なのか!?
……いずにれにしろ、今はかなり劣勢を強いられている。
邪神の化身は怪しげな薬で溶かされてしまうし、他の人間に化けても怪しげな薬で自白させられてしまう。
「怪しげな薬を使う不気味な薬師が……!」
「いやぁ、それほどでもぉ~」
「褒めてない……!!!!!!」
もうなんだか、いちいち動作がムカつくのだ。
くそ……と悪態をつきながらも、次の一手を考える。
「おとなしく投降してくれませんか? 俺……できれば人を傷つけたくないんです」
確かに、見た目はなよっとした男だ。
……良いや、待てよ。
邪教徒は考える。
ふりかえると、彼は確かに異様な力を使ってきた。
しかしそれはすべて、薬を使ってのもの。
そうだ、薬さえ使わなければ、たいしたことないのでは?
そうだよ。道具を使うと言うとことは、道具に頼らないと戦えないと言うこと!
素の力で挑めば、勝てる……!
「投降か……答えは、NOだぁ!」
邪教徒が腕を変質させる。
巨木のごとく、大きく肥大化させた。
その腕で思い切りリーフの顔面をぶんなぐる。
ばきぃい……!
やはり! 素の力は弱……「うげあぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
壊れたのは、リーフの顔面ではなかった。
今の音は己の腕が壊れた音である。
その場に倒れ込む邪教徒。
リーフはきょとんとした顔で首をかしげた。
「え、何かしました今?」
殴ったときに、まるで神威鉄を殴っているかのような感覚に陥った。
なんて、硬い。
人間の堅さじゃ無かった。
薬使ってないで、これか?
どうなってるのだ!?
なんなのだ、こいつは……!?
「えっと……暴力は嫌いなんですけど……しょうがないですね」
にっこり、とリーフは笑う。
一瞬で彼は消えた。
「は……はやっ?」
「フンッ……!」
リーフは一瞬で邪教徒の懐にもぐりこむと、みぞおちに一撃を入れた。
どごぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!
凄まじい衝撃を受けて、邪教徒は背後にすっ飛ばされる。
王都の建物をいくつも破壊しながら、あげく、王都の外壁を破壊して……。
地面に転がる邪教徒。
「がは……! は……! げほ……おげぇ……!」
邪教徒は死ぬ思いをしていた。
攻撃が当たる瞬間、体の一部を硬質化させたのである。
一瞬でも遅れてたら、完全に死んでいた。
「あれぇ? まだ生きてるんですかぁ?」
外壁を乗り越えてこっちに向かってくるリーフを見て……。
邪教徒は、完全に怯えていた。
そこにいたのは……小さな邪神そのものだったからだ。
【★☆新連載スタート!】
先日の短編が好評のため、新連載はじめました!
タイトルは――
『伝説の鍛冶師は無自覚に伝説を作りまくる~弟に婚約者と店を奪われた俺、技を磨く旅に出る。実は副業で勇者の聖剣や町の結界をメンテする仕事も楽々こなしてたと、今更気づいて土下座されても戻りません』
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