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117.とらわれの魔女



 リーフが猛威を振るう一方。

 魔女マーキュリーは顔無しの化け物に捕らわれていた。


「う……うう……ここ、は……」


 彼女がいるのは王都の地下に広がる迷宮。

 マーキュリーの居る場所は、なかなかに悪趣味な内装をしていた。


 紫色をした肉が、粘土のようにぺたぺたつなぎ合わされて、巨大なホールを形成している。


 マーキュリーは逃げようとしたが、手足を肉の壁に埋め込まれていた。


「この……! くっ……! んんぅ!」


 どれだけ力を込めても、肉の壁の中から手足を引っこ抜くことはできない。


「……駄目。私の力じゃ……魔法も使えないし」


 魔法を発動させるのに必要な杖を、彼女は取られている。

 魔法無しではただの非力な女でしか無かった。


「ほんと……駄目ね、私……」


 エリアルは自分の無力さを嘆いていた。

 けれどマーキュリーだって同じだ。

 というか、どんな人もそうだ。


 至らない自分にいらだったり、落ち込んだりする。

 人間だから、仕方ないことだ。


 それでも……あの天与の原石にいると、余計に自分が弱いってことが浮き彫りになってしまう。


 だから、エリアルが落ち込む気持ちもわかった。

 マーキュリーもまた、同じく弱い人間だから。


 それでも……。

 

「できることは、しないと」


 エリアルよりマーキュリーのほうが、精神的に少しタフだった。

 それは化け物のお世話係をやらされてるからだろう。


 マーキュリーは無詠唱で、魔法を発動させる。


「だれかぁ……! 助けてぇ! 私はここに居るわよぉ!」


 己の発した声を、魔法で増幅させる。

 風魔法を応用して、音波を遠くまで運ぶ。


「やれることが助けを呼ぶことって……まったく、つくづく私って弱いわよね! こんちくしょー!」


 エリアルは、リーフ・ケミストの助けを得て立ち直ることができた。

 一方、マーキュリーは己の力だけで、頑張って立ち上がれた。


 マーキュリーにあってエリアルにないもの。

 それは……ど根性。


「おらぁ! 誰か助けてよぉ! 私はここにいるぞぉお!」


 必ず、ギルメンの誰かが助けに来てくれるはず。

 あのギルドは、そんな人たちばかりだから。


 ならば探しに来てくれているひとが、自分を見つけやすいように、大声を上げる。


 ずぶずぶ……ずぶずぶ……


「ひっ! し、沈んでくぅう!」


 うるさくしすぎたからか、肉の壁がマーキュリーを取り込もうとする。

 だがマーキュリーは諦めない。


「だれかきてえ! できればリーフ君来てぇえええええええ!」


 と、そのときだった。


 どがぁん……! と肉壁がぶっ壊れたのだ。


「! 誰かいるのですわね!?」


 やった、援軍だ!

 マーキュリーは壁を破壊してきた人物を見て……。


「わたくしが参上いたしましたわ! おーーーーーほっほっほぉ~~~~~~~~~~~~~!」


 そこにいたのは、扇情的な衣装に、鞭を手に持った……。


 エリアルだったのだが。


「だ、誰だぁおまえぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」


 そう叫んでしまうほど、エリアルは変わり果てた姿をしていたのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >あのギルドは、みんな人たちばかりだから。 人たち→お人好し ではないでしょうか?
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