116.邪教徒からの邪教徒判定
リーフ・ケミストが王都へやってきた。
街にはびこる化け物を次から次へとたおしていく。
相棒のタイちゃんと別れ、一人になった。
そこへこの騒動を起こしている邪教徒の男が仕掛けてくる。
「リーフよ!」
「! ヘンリエッタさん!」
リーフに歩み寄ってくるのは、彼が所属する冒険者ギルド、天与の原石のギルドマスター。
ヘンリエッタ・エイジ。
……に、扮した邪教徒である。
彼は邪神の力で、肉体を自在に変形できるのだ。
彼は体を液状に変えてヘンリエッタの内部に入り込んで、内側から操作する。
(本物の肉体を操ってるんだ。いくらあいつとて、見破ることはできまいて!)
本物のヘンリエッタは、この暴動が起きる前に、邪教徒によって拉致されていた。
どこかのタイミングで利用できないかと思って手元に置いておいたのだ。
ヘンリエッタの姿でリーフに近づいてくる。
リーフが笑顔をこちらに向けてくる。
(馬鹿なガキ! 完全におれを、ギルマスだと思い込んでるようだ。残念だったな! 安心して背中を見せたとき、おまえの最後だ!)
ヘンリエッタは間合いに入る。
リーフは笑顔のまま……。
「えいやぁ……!」
ザシュッ……!
「い、ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!」
リーフがヘンリエッタの胸の中心に、ナイフを突き刺したのだ。
痛くてたまらず、邪教徒がヘンリエッタの口から出てくる。
倒れるヘンリエッタをリーフが抱き留める。
「そんな……どうして、どうしておれが内側から操作してるってわかったぁ……!?」
顔無しが変装が変装してるならともかく、肉体は本人だったのに!
見破ったというのか、この男。
一体どうやって……?
「え、あなた誰ですか?」
きょとん、とリーフがしている。
邪教徒も困惑していた。
「お、おま……どういうことだ? 中におれがいて、操作してるって気づいてたから刺してきたんじゃ無いのか?」
「いいえ!」
元気よく否定しやがった……。
「異変は感じました。王都の人は睡眠薬で全員眠らせてたんで。ヘンリエッタさんからは本人の匂いがしましたけど、顔無しの化け物が匂いまで擬態できるようになったのかなって」
「お、おま……」
絶句する邪教徒。
「じゃあ、この女が操られてるって、確証が会ったわけじゃ無かったのか!」
「はい!」
「本人だったらどうするつもりだったんだ! おまえ心臓を潰したんだぞ!」
するとリーフは……。
いつもの、とぼけた顔で首をかしげた。
「え、心臓くらい潰しても、薬で治せますよね?」
……何を言ってるんだ。
邪教徒は目の前の化け物に本気で恐怖した。
「顔無しだったらそのままたおせば良い。もしヘンリエッタさんに異常が無かったら、すぐに完全回復薬で体組織をなおし、死返の霊薬で蘇生させればいいだけです」
いずれにしろ、殺しても薬で治せる。
だから、疑わしきは殺せ、という理屈だったらしい……。
「な、なんだおまえはぁ……! い、い、イカレテるんじゃねえのか……!? この邪教徒め!」
邪教徒から、邪教徒判定される、主人公であった。
【★☆新連載スタート!】
先日の短編が好評のため、新連載はじめました!
タイトルは――
『伝説の鍛冶師は無自覚に伝説を作りまくる~弟に婚約者と店を奪われた俺、技を磨く旅に出る。実は副業で勇者の聖剣や町の結界をメンテする仕事も楽々こなしてたと、今更気づいて土下座されても戻りません』
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