110.混乱の王都
エリアルが変態した一方。
王都では大混乱が巻き起こっていた。
「いってえ! なにすんだよ!」
「うるせえ! さっきおまえが殴ってきたろうが!」
「ああ!? 殴ってねえよ!」
街のあちこちでケンカが発生してる。
天与の原石受付嬢のニィナが、ケンカの仲裁に入った。
「どうしたんですか!」
取っ組み合いしていた中年ふたりが、互いににらみ合いながら言う。
「こいつが後ろから殴ってきやがってよぉ」
「ああ!? てめえだろうがそれは!」
「嘘つくんじゃねえこのたこ!」
「何がたこだごらぁ……!」
ニィナは冷や汗をかく。おそらくは、顔無しの化け物の仕業だろう。
あの化け物は他人になりすます能力がある。
つまりこの二人組、どちらも顔無しの化けものに殴られたのだ。
片方が変身し、その人のフリをしながら相手を殴り、逆にも同じことをする。
そうやってケンカの火種を作ったのだろう。
「お、落ち着いてください」
「うるせえ、嬢ちゃんは関係ない。ひっこんでな!」
どんっ、と男Aがつきとばす。
ニィナが尻餅をつくと、男Bが憤る。
「おい女に手を上げることねえだろ!」
「うるせえぼけ! 誰のせいでムカついてると思ってるんだ!」
……男AとBがケンカを始める。
厄介だ。
たしかに最初は顔無しのせいでケンカが発生したかも知れない。
だがそれがきっかけとなって、本物同士でケンカが勃発し始めている。
「…………」
ニィナには相手を【消す】力が合った。
だが、それは相手を無差別に消してしまう。
リーフのように、薬で顔無しだけを消すという器用なマネができない。
力が制御できないのだ。
「ギルマスの目がないと、見分けがつかないわ……」
結局AとBのケンカが止められないニィナ。
同じようなケンカがあちこちで発生してる。
今は殴る蹴る程度の、小さなケンカですんでいる。
しかしこれがドンドンエスカレートしていくと……。
ギルマスの言っていたとおり、暴動が起きて、王都が大変な事態になりかねない。
「リーフ君……早く来て……!」
だが……間の悪いことに……。
「大変だあ……! ま、魔物が! 魔物の大群が王都に流れてきたぞぉお!」
誰かが、叫ぶ。そう、誰かが。
それが顔無しの策かもしれない。本当なのかも知れない。
「……私も、わからなくなってきた」
疑心暗鬼にとらわれるニィナ。
こんなときに……Sランクの冒険者がいれば。
「黒銀さん……リーフさん……助けにきて……!」
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