遠い岬で
夏の思い出を綴りました。よろしくお願いします。
まるで港のコンテナのようだった。思い返せば、猫のように生きたいと常々思っていたが、結果はこのざまだ。どうせ今生には期待していなかったが、ここまで酷いとは思わなかった。陸揚げされたイルカのように我が身は地面へと叩きつけられた。妙に生暖かい液体が頬を濡らす。何故アスファルトの道路が濡れているのだろうと思ったが、それが自分の血であると気が付くと、そのまま意識は永遠の闇の中へと落ちていった…。
…目が覚めると、自分は何処か暑苦しい屋外に倒れていた。目を閉じていても日光を感じる。身体が暑い。確か今は夜だったはずだ…。怪我人を十数時間もそのままにしておいたのだろうか、なんて酷いことをするんだと思いかけたが、ふと自らの肉体には何の不調もないことに気がついた。アレは夢だったのだろうか?しかし、目を開けてみればそこに広がっていたのは、見慣れた現代日本の住宅地ではなく、何処ともしれぬ荒野であった。ちょうど西部劇の舞台の様であり、草木はろくに生えておらず、少なくともこのような植生の地域は日本にはなさそうに思えた。あたりを見回すと、民家が見えた。随分みすぼらしい家であったが、ここで野垂れ死ぬわけにも行かないので、勇気を出して訪ねて見ることにした。
私は服を脱ぎ、竿をビンビンにおっ勃ててから、興奮のあまり奇声を上げながら、民家のドアを蹴り飛ばし、大海原で同類を集団レイプするイルカ達の様に室内に躍り込んだ。すると、中にいたのはいかにも恐ろしげな魔女達であった。あえなく撃退された私は3時のおやつとして、魔女のババア共の魔法の釜で釜茹でにされた。
「あつづづいいいよぉぉおぉ!!!!」
私の間抜けな叫び声が何処までも荒野にこだました。それはちょうど港に鳴り響く鐘の音のようであった。
-完-
今は冬ですが、夏の残り香を感じていただけたなら幸いです。