甘い誘惑
人生で一番、柔らかいものに出会った気がした。残業終わりのオフィスで、他には誰もいない。
初めての経験がまさかこんな場所で、こんなタイミングになるとは。
ゆっくりとPCを閉じるとカチッと音を立てて僕の倫理観もシステム終了してしまう。そんな背徳感さえも興奮材料になるのを感じる__。
きっかけは些細な事だった。同じ部署の同僚が、出張帰りに経験の少ない僕に気を使い紹介してくれた。しかしその同僚は、「本当に甘いヤツだから、ハマらないように気をつけろよ」と僕に何度も念を押した。
薄い桃色の肌、滑らかな曲線。優しく触れるとしなやかな弾力。多くを語らないクールさに、唆られる。こみあがる欲望をギリギリで抑えながら周りに誰もいないことを確認する。悟られないよう息を整え、思い切って唇に押し付けた。頭が小さく熱くなる。体温より少し低いそれが口の中でゆっくり広がり、心地良い。咀嚼の速さより先に溶けて消えてしまうのが名残惜しく、愛おしい。子供のようにもう一度、もう一度と求めてしまう。悦楽の境地に達し、つぶやく。
「こりゃハマるわ、いちご大福」
「なぁ、昨日くれたの、まだ余ってない?」
記念すべき初投稿です。無味ノ山羊と申します。短編をベースに投稿予定ですが、連載もするかもしれません。初心者ですので、皆様のアドバイスお待ちしています!