(24) 終戦そして卒業
カエルラ公爵領上空。
《…決着をつけようぞ》
《うん。》
高空を飛ぶエンシェントドラゴンのフウガの背中に乗り、カエルラ公爵領を侵攻してくる巨大ゴーレムを見下ろす。
ゴーレムはわざと畑を、家々を踏みつぶして進んでいる。
時折、カエルラ公爵領の魔術士が“ファイヤーボール”や“ライトニング”で反撃しているけれど、ゴーレムに傷もつけれていない。
「『あはははっ。魔法は効かないわよ。』」
「『さあ、大人しく領主一家の首を差し出せば、止めてやるぞ。』」
ゴーレムからローズとバーク殿下の声が拡声器で聞こえてきた。
こいつらを倒す!私の、かけがえのないもののために!
《行くぞ!》
フウガが急降下してゴーレムに接近する。
私の魔法の射程に入った!
「“アイアンニードル”!」
ゴーレムの真下から鉄の槍が飛び出す。
高い金属音と火花が散ったけど、ゴーレムを貫通するには至らない。
「『なに~?ひょっとしてドラゴン?…と私のペット?なぁんだ生きてたんだ。こっちにおいでよ。』」
「っ。」
甘ったるい空気が充満してくる。
《アリシア、大丈夫か?》
脳裏に浮かぶローズと親しくなりたい気持ちをグッと否定する。
「誰がペットよ!!」
《もう少し距離を置く。遠距離から速攻で片付けよう。》
そう言ってフウガが“凝縮太陽光線”を放つ。
焦点の合った頭部が溶け堕ちる…かと思ったけれど、何かがおかしい。
ゴーレムの表面で光が乱反射しているみたい。
「『ふっ…ふはああ。驚かせやがって。やはり僕のゴーレムは無敵だ!さあ、こい。僕とローズの行く手を阻むのなら丸焼きにしてくれる!』」
ゴーレムから“メルト”が飛んでくる。
フウガが翼を翻して回避するけれども、息切れすることなく立て続けに“メルト”が連射される。バーク殿下もゴーレムを駆動させるための魔石の魔素をつかっているみたい。
《アリシア掴まれ!》
フウガが右に回避すると見せかけて勢いよく左にターンする。
《もう一発じゃ。》
フウガが今度はゴーレムの胸元の部分に開いている裂け目を狙う。あの時、捕らえられた私がワイバーンで脱出した裂け目だ。
今度は反射しないと思ったけど、感づかれたのか、焦点が一致する前にゴーレムは腕をクロス。胸元を守られた。
腕の表面の装甲で光が散乱させられていく。
「『効かんなぁ?こっちの番だ!』」
《くっ。》
攻防が逆転。バーク殿下が繰り出す多数の“メルト”を回避しきれず、1発がフウガの翼に当たった。
高位魔法なだけあって、穴が開いてしまっている。
《この程度ならば問題ないぞ。それよりも、どうする?》
“凝縮太陽光線”を跳ね返えされたのはゴーレムのツルツルした装甲が原因なのか…それとも聖女ローズ様が素晴らしいから?…って、なに考えているのよ?
「ちょっと待って、今、考えが回らない。」
《一旦下がるぞ。このままではアリシアが“魅了”の雰囲気にあてられてしまう。》
フウガがかなりの距離を取ってくれたおかげで落ち着いた。
…ローズの“魅了”の範囲が広いのも問題ね。
《アリシアが望むなら、我一人でアレに組み付いて泥臭い戦いをやっても良いぞ?》
「それはダメ。」
フウガが負けるとは思わないけれども、あのゴーレムは116年前に、魔の森でドラゴンを倒したやつだ。
ただ、このまま放置して後日再戦ってわけにはいかない。イリーナ様が危険にさらされる。
「でも、物理攻撃ってのはありね。私が“アイアンエッジ”を連発してみるわ。」
《ふむ。質量でいくか。》
飛ばすのは無数の鉄の礫。大きなダメージを入れれなくてもいい。装甲をへこませれば、“凝縮太陽光線”を反射しなくなるかも。
《あとは、もっと集める光を増やしてみるかの?焦点を合わせるのが大変じゃが。》
「それなら、私が“グランドウォール”で落とし穴を掘ってゴーレムの足を止める。」
《いずれにしても、アリシアが魔法を使うために、ゴーレムに近づかんといかんのう。》
問題はそれ。私が魔法を撃てるということは、相手の“魅了”の範囲に入るということ。“メルト”だって飛んでくるはず。どれだけの量をぶつければいいかわからない持久戦では…。
《…皆で当たればなんとかなるか。そら、来たぞ。》
ん?皆?
疑問に思ったら、左下からワイバーンが近づいてきた。
「アリシアぁぁあ!」
ワイバーンに跨ってこちらに向かってくるイリーナ様。ワイバーンを巧みに操ってフウガの上に寄せる。右手を伸ばして…って、飛び移るの!?
「『待った!待った!ハリウッドみたいなことしちゃだめだから!』」
慌てて止める。
「フウガ。」
《我の背中はおいそれと乗れる場所ではないんじゃが…。そうも言ってられんの》
そう言ったフウガはワイバーンに合図を出す。イリーナ様を乗せたワイバーンは静かに背中に降りた。
「アリシアっ!」
イリーナ様が抱きしめてくれた。心地いい。
「イリーナ様、どうして?」
「本当は、私が立ち向かわないといけなかったのに…。アリシアに戦わさせて私だけ逃げるなんてできないわ。」
「そんなことない。あいつは、わた…」
「でも、私は無力で戦えない…。だから、当事者として、せめて、アリシアのそばに居させて。」
「…うん。」
「ところでハリウッドって言葉を知っているの?」
「あっ。あははは?」
しまった、感極まってバレた。
ただ、秘密がバレたというのに、私は清々しい気持ちだった。
「後で詳しく聞くから。」
ジト目で睨んでくるイリーナ様に「はーい。」と答える。
「ひぃ~死ぬうう。」
続いて海側から大声が聞こえる。
見れば、緋色の髪の令嬢と、淡い黄髪の令嬢がワイバーンに摑まって飛んできている。
「王道のパターン入りました!」
レベッカとティアですね。わかります。
私は手を振ってワイバーンの誘導を行う。
降りてきた変わらぬ2人。これで全員が揃った。
おかえりなさい。私の大切。
「決着をつけるのでしょう。」
「アリシア。私はあの街を守りたいの。」
「うわっ。もう次の街まで距離がないぞ!」
レベッカの言うとおり、ゴーレムの行く先には公爵領領都の街の外郭がある。
残された時間はあまりない。でも焦るな。冷静に。
《本国から増援もきたぞ。》
ゴーレムの後方、北の方向から豆粒のような黒い点の群れが見えるけど…。
どんどん近づいてきて…ハッキリと姿が確認できるようになってわかる。
ウチの戦闘機と爆撃機の編隊。それを守る多数のワイバーンたち。
キルシュバウムの総力だ。
ワイバーンの1頭が急に迫ってきた。
乗っているのは…お父様とお母様!
「『アリシア。皆、来たわよ!援護すればいいかしら?』」
心強い。
それに、皆が来てくれたなら、もっと手段が広がる。
「『ゴーレムの装甲をへこませて!』」
「『よし。爆撃でボッコボコにしてやる。』」
お父様が少し茶化して返事する。お父様、それじゃあフラグですからね。でも、ありがとう。
「『高度は5000mを保て。少なくとも4000mまで近づくと“魅了”にあてられる。2000mまで近づくと“メルト”が飛んでくるぞ。』」
「『OKっ!』」
フウガの警告に、お母様が力強く答える。
「『発煙弾か信号弾ある?』」
「『持っているのはこれだけだ。』」
そう言ってお父様が背嚢を落としてきた。
受け取った中身は、25mm擲弾銃と、20発の信号弾。
「『信号の種類に関係なく全部撃つからね。』」
私は受け取った装備をレベッカに渡す。
「レベッカ、信号弾だけは何回か撃たせてあげたでしょ。覚えてるわよね。合図したらゴーレムの周りに煙幕を張るように撃って!」
「おおっ。自分やるぞ!」
「イリーナ様も同時に“ダークネス”でゴーレムの目隠し。」
「わかったわ。」
「ティアは迎撃をお願い。」
「任されました!」
「さあ、行くわよ!」
再びゴーレムに近づく。
「『来たわね小娘ども!さあ、どうする?組みついてくる?私の犬にしてあげる。』」
ローズ…光魔法か何かでこちらが見えるのかしら?
《アリシア。気分は大丈夫か?》
「《大丈夫。皆が私の手を握ってくれてるから。》」
仲間と、親友と一緒にいる私は最強だ!
「『業火に焼かれて落ちろ!』」
再びバーク殿下の“メルト”が飛んでくる。
「ティア!」
「余裕です。」
8発続けて飛んできた“メルト”は、あっという間に“ウォータースラッシュ”で相殺。
「この程度でしたら、私が攻撃に回っても?」
ティアは、ついでとばかりにゴーレムにも魔法をかますけれど、やっぱり表面で弾かれる。
「『あはははっ。何度やっても無駄よ!』」
「…。アリシア、最高位魔法を試してみましょうか。」
「いやいや、ちょっと待って。あれは未だ練習中だったでしょ。今回はウチに任せて。」
「このままでは癪ですが…仕方ありませんね。」
「だいたい、ゴーレムの魔石を使っているバーク殿下と、素で張り合ってるティアにこれ以上負荷かけられないって。」
「まだあと40回は上位魔法撃てますから。危なくなったらアリシアが居ますしね。」
会話しながら片手で“メルト”を処理し続けるティア。
改めて思うけど、頭脳もあって保有魔素も膨大で、コントロールに優れた魔法を気軽に連発できる上に、素で最高位魔法撃てるなんてチートじゃない?
ティアがちょくちょくゴーレムにも攻撃を当てているせいで、相手の注意をこっちに引き付けられている。チャンス。
「《全軍、攻撃開始!デカいだけが取り柄の図体に風穴開けてやれ!!》」
フウガの念話を借りて宣言する。
待ってましたとワイバーンたちが急降下爆撃を仕掛ける。
直撃した爆弾は衝撃信管が作動して爆発。ゴーレムの装甲をへこませる。
周囲に落下した爆弾は地表で爆発して破片や土砂をまき散らす。
「『ぶっ!?な、なんだ!魔法は効かないんじゃなかったのか!?』」
「『おのれ!何をした!?』」
私たちの攻撃手段が魔法だけだと思ったら大違いよ!
「まだ、こんなものじゃ済ませないわ。『爆撃隊っ!』」
高度4000を菱型の編隊を組んで飛ぶ4機が一斉に120kg爆弾を投下する。
殆ど同時に着弾した16発が轟音と閃光を繰り返す。
「『鬱陶しい!』」
「《次っ!》」
さらに次の4機が雨のように爆弾を降らせる。
絶えることのない爆炎。
ゴーレムを文字通りボコボコにしていく。
「レベッカ、やって!」
コクりと頷いたレベッカは中折れ式擲弾銃のレバー部分の安全装置を外し、真正面に構えて引き金を引く。
撃ち出された発煙弾は50mほど進んでから煙を巻き散らし始める。
レベッカは私が教えたとおり、上部の閂をずらして銃を折り、空薬莢を鞄に捨てる。
口に咥えていた次の弾を装填して銃身を戻し、閂でロックして、ワンテンポ確認を入れてから引き金に手をかける。
単に優れた剣士というだけじゃなく、他人の呼吸を見てフォローに回れたり、ムードメーカーなレベッカ。適応というか吞み込みが早いというところも凄い。
「イリーナ様!」
「ええ。“煙霧”!それから“硫酸霧”」
さらにゴーレムの周囲をスモッグが覆う。
…イリーナ様、こんな魔法つかえたの?
頭部の装甲が硫酸の霧に晒されて腐食していく。
「…。」
少し目をそらしたイリーナ様を強く抱き寄せる。
世間では闇魔法を使う人間は気味悪く思われがちだし、あまりエグい魔法は見せたくなかったのかもしれないけれど、私はそんなこと気にしない。イリーナ様はイリーナ様。逆境にあっても、芯が通っていて、優しくて、暖かくて…大好き。
「『ちょこざいな!!』」
さあ、終わらせるわよ。
“グランドウォール”でゴーレムの足元を掘り下げ、膝まで埋める。
「『な、なにが起こっている!!』」
バーク殿下の阿呆な声が響く。
「フウガ!」
《うむ。》
フウガが空中に形成した特大のレンズが光を集める。
焦点がゴーレムの頭部に向けられる。
ゴーレムの周りを覆っていた煙を風魔法で吹き飛ばす。
「『なっ!?』」
もう気づいても遅い。
ゴーレムの頭部が真っ赤に熱を帯びる。今度は乱反射しない。
「『キサマらぁ!』」
「『まっ、待ってくれ!!あ、熱い!』」
ローズの怨嗟の声とバーク殿下のみっともない声がゴーレムの拡声器で王国中に拡散され続けている。
2人とも化けの皮が剥がれたわね。
「『そ、そうだ、イリーナ。お、お前は僕のことが好きだろう。助けてくれ!』」
なんとも都合がいい。
振り返れば、イリーナ様が決意の表情で首を切るジェスチャーをしていた。
そうよね。
「さようなら。」
私の声と重なるようにして、ゴーレムの頭部が溶融。
「『がああああx…………』」
乗っていたローズとバーク殿下は無事に蒸発しただろう。
続いて“凝縮太陽光線”はゴーレムを縦に貫いていく。胴体が真っ二つに裂けていく。
ゴーレムは完全に動きを止め、その場で擱座した。
「これで終わりよ。」
失ったものは取り戻した。元凶は消え去った。
私は…私たちは勝った。
陽が傾き、赤く照らされるゴーレムの残骸。
ウチの工廠の主任のヤクモさんが調査してくれたけれど、完全に壊れ、もう動くことはないとのこと。
内部に人は残っていなかった。
ローズとバーク殿下以外、乗っていた人間は他には居なかったみたい。
「アリシア…ありがとう。私は…」
イリーナ様が抱き着いてくる。「《私たちは救われたわ。》」
微かに、なんだか、もう一人の…きっと1度目のイリーナ様の笑顔も見えた。
信号弾が上がる。
ワイバーンたちが、爆撃機を護衛しながら帰っていく。
フウガに王国全体への強制念話を開いてもらう。
「さあ、良いぞ。」
少しの間をおいて、フウガのGOが出る。
「『終戦宣言!』」
私は皆に見守られながら念話に乗せて宣言を出す。
「『王国の皆さん。偽の聖女と偽の王は、彼らが操るゴーレムとともに、カエルラ公爵領にて倒されました。偽の王国は終わったのです。今、ここに、終戦と、そしてカエルラ公爵を首班とする真の王国の独立を宣言します。』」
イリーナ様がえっ?って顔をしている。
「『王国の全ての民は、真の王国に帰属せよ!』」
ここまでお膳立てしてあげたのだから、あとはカエルラ公爵とミニアーノ侯爵になんとかしてもらいましょう。
「『そして、治安維持と言いながら狼藉を働く王国内のウェルナーク共和国軍の皆さまに通告します。ただちにウェルナーク共和国へお帰りください。動きが無い場合、今回の独立を支援してくれた全ての勢力と共同で皆さまを相手いたします。以上。』」
私は宣言を終える。
振り向けば、苦笑いしている皆がいた。
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戦いは終結した。
カエルラ公爵は「聞いていないぞ」と愚痴を言いながらも真の王国というか公国の君主に就いた。
あ、帝国は結構ごねましたよ。「ウェルナーク共和国軍への共同攻撃など聞いていない」と。ですよね。カエルラ公爵が頭を抱えながら、ビガー公爵領の割譲に同意していました。
そして、あの宣言で肝を冷やしたウェルナーク共和国軍、皆さま大人しく帰ってくれました。もう二度と来るなよ。
武術課程の皆はしっかりと生き残っていました。
ただ、セントレア学園は王城を攻撃した余波で建物が吹き飛んでしまったため、授業などできるはずもなく、残念ながら私たちは強制的に卒業ということになりました。
まあでも、折角なので、勝手に跡地に集まって卒業式を敢行することにします。
「アリシア総隊長に敬礼!」
レベッカ…貴女がそんなこと言い始めるからこんな大所帯になったのよ。
セントレア学園の庭園で、私は皆に迎え入れられた。
懐かしい。初めてイリーナ様とあった場所だ。ただ、周囲には崩れた建物。がれきの山。薔薇は全て消し飛んでいた。
カエルラ公爵の判断で、ここには偽聖女ローズがもたらした災厄を繰り返さないよう戒める石碑が建てられる予定とのこと。
私はカエルラ公爵に希望を出し、ここに鎮魂の鐘を建て、桜の木を植えさせてもらうことにした。ウチの領にとって桜は守り神的存在だからね。見守ってくれるように。
用意した桜の若木を植樹したあと、私は皆の前に立つ。
「私が伝えたいのは、平穏な日常の尊さです。日常なんて何かの拍子に簡単に崩れ去ってしまいます。大切に守り抜いてください。そして、今ある日常は私たちの知らない誰かの犠牲で成り立っていることを知ってください。」
皆を見渡す。「今回、終戦して歩み出す私たちの新たな日常の背後には、先の戦いにおける王国の民の犠牲があります。これを心に刻み、鎮魂を願います。」
紐を引いて鐘をならす。私が敬礼の姿勢をとれば、皆がそれに続いた。
…決して、忘れません。
「ではでは、始めるよ。」
レベッカの合図で皆がグラスを手に取る。じゃあ、改めて、
「皆が皆、それぞれの道を歩んでいくと思います。しかし、私たちは強い絆で結ばれていることを、困った時には助け合える仲間であることを忘れないで下さい。私は皆に出会えて幸せです。来年の春もこうして皆でここに集まれることを楽しみにします。これからもよろしく!乾杯!」
「「「乾杯!」」」
掲げたグラスを飲み干す。
さあ、美味しい料理もたくさん用意したぞ。早い者勝ちだ。
皆が料理に群がって談笑を始める。
そんな中、ティアは少し暗い表情だ。
「アリシア。改めて、私はサモナに戻らないといけません。」
名残惜しそうなティア。
そっか。まあ、全員が強制卒業だから、王国に残る意味もないもんね。
「それで、その…これからもワイバーンで定期的に手紙を送ってくれませんか?」
あーなるほど。でも、もっと良い手段がある。
「手紙とは言わず、乗ったらいいじゃん。実際2人とも乗ったでしょ?」
「いや、そうなんだけどね。吐きそうだった…。」
「ふふっ。」
ティアが思わず噴き出した。「アリシア、普通はワイバーンに乗ることなんてしませんし、そもそもできません。仮にできたとしても上空を飛べば矢を射られ、魔法で迎撃されるのが常識です。あの時は非常事態でやむを得なかったのですよ。」
いや、知っているよ。だから便利なワイバーン便を王都の公館では飛ばせてないんだから。
庭につくったヘリポートだって、この前の事件の時に初めて有効活用されたんだし。あー、ヘリポート。そうだ。
「とりあえずさ、サモナに帰ったら、庭にでっかい印付けてよ。こんな感じの文字なんだけど。イリーナ様もね。」
私は紙に”H”を〇で囲った図を描く。「できる限り平らで、固い地盤にしてくれるといいな。皆にも乗れるようになっていてもらうから。」
「うわーアリシアの目が本気だ。」
「まあ、アリシアですものね。」
いつも通りの日常。これからも続けるもんね。
入学してからここまで長くて短かった。気が付けば予定よりもずいぶんと早い卒業ね。
卒業すれば皆、別々の道を進んでいくけれど、どこかで必ず繋がっている。
私はキルシュバウムへ帰り、5代目領主(見習い)という立場で歩み始めるけれど、でも、それはお別れという意味ではない。
日常を謳歌するって目標もあるからね。定期的に遊びに行くよ?皆もウチに御招待しましょう。
「アリシア。思い出したけど、ちゃんと話を聞かせてよね。」
「あはははっ。」
私たちは幸せです。
(ありがとうございました。
これにて本編完結です。
イリーナたちをキルシュバウム領に招待したり、サモナ沖で海賊相手にチート海戦したりのネタはありますので、構想ができ次第、おまけの続編を投稿予定です。
よろしければ数か月ほどお待ちください。
それまでに小ネタはいくつか投稿できたらいいな。)




