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(22) 宣戦布告

「『宣言。僕とローズの国に賛同しない逆賊どもを討伐する!』」


 それは再びゴーレムの拡声器から王国全土へ発せられた宣言だった。


「『前国王を毒殺するような悪女を育てたカエルラ公爵家は取り潰しだ。真相を追求してからなどと言い出すミニアーノ家も同罪だ。そして食料や物資の援助をしないキルシュバウム家も取り潰しだ。様子見など考えているユーグ伯爵家も潰す。あと、何だったっけな。ともかく、賛同しない奴らは全て敵とみなし、軍を向かわせて滅ぼしてやる。』」


 それは、王国を敵か味方かに二分する過激なものだった。


「『良識ある民たちよ、逆賊を討て!悪徳領主の首を差し出せ!褒美をとらせよう。だが、僕たちに反抗的な民は騎士団が拘束する!』」


 バーク殿下は、国王になったその日のうちに、混沌の内戦を宣言したのだった。


----------


 ワイバーンに咥えられて脱出した私は、痛みで気を失った状態でキルシュバウム領まで連れられて戻った。イリーナ様を置いて…。


 気が付いたら自室のベッドの上だった。丸2日経っていた。


「お嬢様っ。気が付かれましたか?」


「ここは…。わ、私…っ。」


 涙があふれてきた。


 ユーリがそっと触れてくれている間も、ワイズマンさんに連れられてお父様とお母様が部屋に入ってきてからも、私は嗚咽を漏らして泣き続けた。


 あの時、寸でのところで身体を捩ったから、傷は浅かった。


 ただ、ローズに切られたというのに、触られた瞬間から私は、ローズ“様”と親しくなりたいと思っていた。ローズ“様”の言いつけを守るためにイリーナ様に乱暴をしてしまった。


 自身が…無意識のうちに何をするかわからないなんて…。誰かを傷つけてしまうかもしれないなんて…。そう思うと怖い…。


 それ以上に、私の記憶は?ティア、レベッカ、…そしてイリーナ様。大好きな皆との幸せな日常。武術課程の皆とやんちゃして過ごした日々は? 無くなってしまうの?


 お父様、お母様、領の皆を大切に感じているこの想いは?平凡な次の時代をプレゼントしたいという私の目標は?どうなるの?


「 私は…なんのために頑張ってきたの…。」


 今まで積み上げてきたものは儚く崩れ去り、意味のないものになってしまった。


「大丈夫よ。アリシア。」


 一人、引きこもりたいのに、皆が私を抱きしめてくれて…、優しくて、暖かくて…皆を遠ざけることができない。


「…アリシア、落ち着いた?」


「お母様、私っ…私は…。うう゛っ…たすけて…。」


 縋るようにお母様に抱き着く。


 私は、事の顛末、そして感じている恐怖を全て皆に話した。


「《傷口に…血液に直接、光の魔素を入れられたか…。ローズと親しくなりたいと思っている気持ち、“魅了”か何かの可能性があるな。》」


 庭に降りたフウガが教えてくれた。


 光系統の“魅了”には2種類あって、まず、元々その人に少しでも好意を持っている人に対して、自分をさらに魅力的に感じさせる空間タイプの魔法。空間タイプといっても、本人の使える魔素が少ないと部屋一つ分程度らしい。しかも空間に流す魔素が薄いと効果は半減。即効性はなく、初めのうちは継続的に効果空間内に相手を入れておかないといけない。


 次に、直接手を触れて相手の身体に“魅了”を混ぜた魔素を送りこむタイプ。こっちのほうがかなり強力。即効性もあるし、一度成功すれば継続的に効果が出る。ただ、相手の保有魔素が多いと薄まってしまう。それに、こっちのタイプも、元々の好意がないと、中途半端になる。


 …そう言えば、魔法薬学のオリエンテーションで、ローズに火傷を治療された子たちは、翌日から極端にローズに好意を寄せていた。


「《だから、魔素の多いうえに、ローズに全く好意を寄せていなかったアリシアには、しっかりとかかっていない。》」


 フウガが私を安心させるように言う。けれど…。


「しっかりとかかってない状態でも、私はイリーナ様に乱暴を…。」


「《じゃが、直ぐに正気に戻ったじゃろう。しっかりとかかってないからこそ、切っ掛けさえあれば正気になれる。今回の場合は、アリシアの身体がイリーナとやらの魔素を感じたからじゃろう。お主の心は、友にかなり惹かれているようじゃの。》」


「でも、私たちは枷を嵌められていて、魔素は…」


「《そのアーティファクトと呼ぶ枷は、王城の装置と違って、体内の魔素を放出できなくするものじゃ。古来からの方法…魔素の混じった血液などは干渉を受けん。》」


 そうだった…、あの時、私たちは枷を嵌められていたのにもかかわらず、ゴーレムが起動してしまったのは、そういう理由だったんだ。


「《しかし、それが切っ掛けで、今、正気に戻っているだけじゃ。解決したわけではない。》」


「どうすれば完全に解けるの?」


「《確実なのは術者を殺すことだ。次に、術者から遠く離れること。離れたまま時間を置けば、自然と治るだろうが、どれくらい時間を置けばいいかはなんとも…。あとは、我が“時戻し”を行使することじゃが…腫瘍や外傷と違い、“魅了”にかかった意識を、戻すというのは…上手くいくかわからん。最終手段だと思ってくれ。》」


「なるほどな。手はあるということか。」


「アリシアはどうしたいのかしら?」


 お父様とお母様が私の意思を聞いてくれる。


 もちろん、このままじゃダメなことはわかってる。


 私はローズの操り人形になんかなりたくない。この世界の私の大切を踏みにじられたくない…。


 領主になって、お父様、お母様、領の皆との平凡な日常を守りたいという気持ちは変わらない。


 それだけじゃなく、ティア、レベッカ、そしてイリーナ様…。武術課程の皆たちとの日々も取り戻したい。


 外の世界に出て、ほんの2、3年なのに、私は親友たちとの日々を満喫していた。一緒に過ごす時間は幸せだった。


 全てが私の大切。


 この暖かい気持ちを…、想いを、“魅了”なんかで奪われたくない。守り抜きたい。


 何よりも、イリーナ様をあそこに残したままでいいわけない。


「このまま待っているのはできません。イリーナ様を助けだして、ローズを倒したい。」


「うん。そう言うと思ったよ。」


「でも、まずはこちらの話を聞いてちょうだい。」


 お父様とお母様が説明してくれたのは、バーク殿下が内戦を宣言してからのこと。


 王都のキルシュバウム公館、チェリー商会の関係者は全員が無事に地下鉄の臨時便で脱出。公館に来客として来ていたティアとレベッカはワイバーン2頭が2人の護衛と一緒にサモナに送り届けてくれたらしい。


 翌日のワイバーンの偵察で、王都の公館は聖女の信者たちに焼かれ、チェリー商会の王都本部は打ち壊されて略奪されていたことがわかった。


 王都では騎士団が憲兵隊のようにバーク殿下とローズに従わない者たちを処刑して回っている。惨たらしく首を吊るしているのが空から見えたらしい。


 王国軍60,000の兵はカエルラ領、ミニアーノ領、キルシュバウム領の三方に向かって進軍を始めた。


 東のダンジョンから溢れ出た魔物たちが未だに王国内で猛威を振るっているのに、それを無視して…。


 王国軍は即日でユーグ伯爵領など幾つかの領を攻め滅ぼした。滅ぼした領の女子供を捕らえ、他は惨殺して回った。つい昨日まで同じ王国の民だったというのに…。


 今日の偵察では、王国軍がカエルラ領とミニアーノ領に到達したのが確認された。領軍を圧倒して侵攻を続けている。


 ここキルシュバウム領へ向かってきている王国軍は、ビガー公爵領やグレゴリー侯爵領からの10,000ずつの領軍と合流して向かってきている。


 明日には領境に到達すると予想されている。


 問題は、それだけではない。


 今回の内戦にあたって、西の共和国がバーク殿下とローズをサポートするとかで、王国内に警備隊を派遣し始めている。王国を乗っ取るつもりだわ。


 そして東の帝国も、王国の混乱に乗じて攻め入ろうとしているらしい。


 ローズの思い描いたとおりになってしまう。


「キルシュバウムへ攻めてくる第一波は40,000人の兵。攻城兵器も多数確認されている。対してこちらは正規軍4,500に志願兵。残念だけれども、こちらの対人戦の経験は乏しいわ。さらに言えば、キルシュバウム領軍は防衛目的の軍。兵力を送り込んでくる敵の後方拠点を叩ける装備は数が限られている。」


「これを私たちが凌げるとしても、それを好機と共和国か帝国か…あるいは両方が王国になだれ込む。先に待っているのは混沌だ。」


お父様が真剣な表情で言う。「場合によっては、今回の戦いが、私たちの独立戦争となるのかもしれない。一番いいのは、王国軍を凌いだ後、共和国と帝国がなだれ込む前に、カエルラ公爵かミニアーノ侯爵あたりの勢力に王国を引き継いでもらいたいんだがな。」


 キルシュバウムだけで独立した場合、領境が帝国との国境になってしまう。帝国が受け入れなければ、目と鼻の先に今の3倍の帝国軍が並べられるんだろう。


「幸いメルの実家の繋がりのおかげで、帝国軍西部管区を取り仕切っている皇族とのチャンネルは以前からある。」


 お母様の実家は帝国で有名な武家。特にお母様の父親、つまり私の母方のお爺様は帝国軍西部管区トップの皇族の副官を務めている。


 そして帝国軍西部管区はチェリー商会のお得意先。ウチで量産している刀剣や鎧、さらには保存食なんかも定期的に購入してくれている。一度に3万本の長剣の発注を受けたこともあった。翌週に揃えて納品してあげたら、何とも言えない表情をされたという話は有名だ。


 お母様がウチに来てくれたのは、それがきっかけか、それともお母様が来てくれたからお得意先になったのか。


 ともかく、それ以来、西部管区トップの皇族はウチがそういう地域だと認識している。安易に手を出せば火傷では済まないことを理解している。


 だから、帝国と交渉する。既に昨日のうちにワイバーンが帝国軍西部管区の本部に手紙を入れた筒を投下しているらしい。今日の偵察で受諾の旗が立っていたらしいから、明日、交渉が行われる。


「…私は領主を退くよ。今回の事態を防げなかった。」


 お父様は、少し間を置いて告げた。


「そんなっ。」


 今回の事態は、「無償で永久に食料や物資の援助を行え」なんて無茶苦茶を断ったら、いきなり戦争を吹っ掛けられた状態。相手は交渉の余地も何も残していない。


「奴隷の如く服従するか、戦争か、そんな選択肢を突きつけられて、服従を選択する馬鹿はいないわ!戦いを選んだ勇気ある者を批判する奴は敵から「自分だけは特権階級を与えられる」と裏約束している汚い奴よ!!敵の要求をキッパリ断ったお父様は正しいわ。それを分からない領民は、キルシュバウムには居ない!」


「まあ、別に責任をとるとか、隠居するとか、そういうわけじゃない。ただ、領民の皆には、今回の戦いの後に、さらに楽しみな次の世代がくるんだとアピールしたい。アリシア、任せたぞ。」


「…」


「ただ、退くのは今回の戦いを終えてからだ。アリシアが今やりたいことは、領主という立場の(しがらみ)にとらわれていては為せないことだからな。」


「…うん。」


「さて。じゃあ、チトセ基地に移動して、皆で私たちの行く先を決める作戦会議を行おうかしら。」


 私たちは戦う。私の意思を、私の記憶を賭けて!自由のために。大切なものを守るために。そして、再び訪れる平凡な日常を!




 チトセ基地の会議室にはミズホ市の市長や、チトセ基地の司令、その他大勢が集まっていた。机は口の字に並べられていて、中央に大きな地図と駒が置かれている。


 作戦会議が始まった。


 まず、キルシュバウム領へ侵攻しようとしている王国軍に対して。これは砲撃で対処する。さらに侵攻を続けられたら戦車と歩兵を出す。白兵戦は最終手段。防衛戦の指揮はお父様が担当。


 同時に、王国軍の後方、指揮所や物資集積所の攪乱。特務隊のマーティン筆頭に敵の真っ只中に潜入する。信号弾の合図を受ければ、戦闘機とワイバーンが強襲する。


 次に、敵の補給拠点…特にビガー公爵領領都、グレゴリー侯爵領領都に対して爆撃を行う。目標は領軍関連施設と領主の館。ワイバーン2個小隊を護衛に爆撃機24機全てを出す。指揮官はワイズマンさん。工廠主任のヤクモさんが同乗する。


 そして、王国軍の最大の拠点、王都に対しても爆撃を実行する。こちらはフウガが直々にワイバーン8個小隊を率いて奇襲をしかける。王国軍関連施設を破壊し、王城を吹き飛ばす。


 最後に、帝国に対しては、今回の事態についての説明を行い、不可侵条約の締結を行う。これは…お母様がワイバーン1個小隊を連れて向かうことになっている。


「アリシアがやりたいことは、3つ目の王都での作戦に呼応して行うといいわ。」


「《アリシアの友の魔素は、途切れ途切れだが、辛うじて感知できている。位置は王城の地下だ。》」


 …王城内部では魔法が使えなくなるアーティファクトがある。使えない前提で忍び込むには、こちらも地下からトンネルを掘って進むしかない。


「《しかし、今、王都にはローズが行使している“魅了”の雰囲気が漂い続けている。恐らくはゴーレムを駆動させるための魔石を使って広範囲に広げているのだろう。人間の男には…それに一度“魅了”にかかったアリシアにとっても、かなり危険な場所になっている。》」


「けれど、イリーナ様の顔を知っている人が行かないと。それに、王城には地下からトンネルを掘って潜入するつもりだから、それだけの魔素を扱える人間が行かないと。」


「《仕方がない。制限時間は設けるぞ。そちらの作戦も我が管制しよう。》」


「ありがとう。」


「お嬢様。私たちも共に行きます。」


 ユーリを筆頭にメイドたちが頷いてくれる。


「アリシアの友達を助けるということだけに、公に軍を関与させることはできない。君たちは軍属ではなく、只のメイド。それから…今から休暇中だ。休暇中の行動は自己責任とする。」


「はい。ただのメイドです。」


 近衛副隊長のユーリが満面の笑みで答える。


「皆…。」


 私には、支えてくれる人がたくさんいる。


「アリシア・ラナ・キルシュバウム。」


「はい。」


「この戦いの後、貴官は第5代キルシュバウム領主とする。また、現時刻を以って、その権限を先行付与する。もしカエルラ公爵令嬢の救出に成功したなら、その後は、その権限を以ってカエルラ公爵家に堂々と恩を売ってやれ。」


「アリシアのお友達の領を残したいのなら、帝国との窓口だけは用意してあげる。」


「承りました。」


「…さて、王都方面作戦を実行中、友人がとらわれている場所を知ったアリシアだが、困ったことに一時的に通信が困難になったため、領主権限で緊急判断を下し、単独で領民でもない友人を助けに行く…。」


「はい…。」


「作戦に支障は出さないように。あと、独断専行と、事前相談を行った上での単独行動は違うとは言え、帰ったら始末書な。」


「アリシア…必ず戻ってきなさい。」


「うん。お父様、お母様、愛している。」


「「私たちもだ(よ)」」


 私たちが抱き着き合うのを、領の皆が優しく見守ってくれている。私は…この人たちと、これからも平凡な日常を過ごしていきたい。


「明朝5時を以って作戦を実行に移す。全軍に通達。安全保障法第一条に基づき、領に迫る全ての脅威を打ち払え!」


 キルシュバウム領は、116年の歴史の中で初めて、国家を相手とした戦争へと向かって行った。




 久しぶりに家族3人、川の字で寝た。よく眠れた。


 未だ太陽も登っていないけれど、目覚めのタイミングは同じだった。


 普段通りのおはようの挨拶のあと、顔を洗って、歯を磨いて…。


 皆で朝ごはんを食べて、お化粧する。


 軍服に着替えて皆で飛行場へ移動する。朝焼けが綺麗だった。


 途中、初代キルシュバウム辺境伯爵、つまり116年前の勇者が祀られている社に寄ろうとしたけど、先客がいた。


 樹齢100年に近い桜の大樹の根本に添えられた小さな社に手を合わせる女性。いつも武器を整備してくれているヤクモという名の工廠の主任さん。


 無言で譲ってくれたので、私も前に進み、社に手を合わせる。


「初代様。私たちに平和な領を残してくれてありがとうございます。初代様が残してくれた平和を守るため、そして私は奪われた日常を取り戻すために戦いに行きます。見守っていてください。」


 そんな私の祈りに答えるかのように一陣の風が吹き、桜の花びらが私の周りを舞う。まるで祝福してくれているみたい。 


 5年前、私が領主になると決めたときも満開の桜が祝福してくれるようだった。…あの時みたい。大丈夫。私の意思を貫き通せる。きっと。必ず。


 私はしっかりとした足取りで飛行場に向かった。


 朝日に照らされた飛行場。眼前に広がるのはズラリと並んだ戦車。12cm要塞砲を積んだトレーラー。75mm野砲を牽引した兵員輸送トラック。


 滑走路には複葉の複座戦闘機。誘導路には胴体よりも長い翼を持った爆撃機。駐機場に整列するワイバーンと兵士たち。


 上空を飛ぶのはフウガ。私の傍らには、お父様とお母様、ワイズマン、ユーリ、マーティン。そして領の皆。見渡せば無言で頷いてくれる。


 大丈夫。私は、戦える。これまでの努力は決して裏切らない。それに私には、皆がついていてくれるんだから!


 私は用意された台の上に登り、風の魔法で声を拡大して宣言する。


「『皆さん、おはようございます。5代目領主となるアリシア・ラナ・キルシュバウムです。王国が帝国との戦乱に巻き込まれる中、皆さんの働きによって領民がいつもと変わらぬ平和な生活を送れていることを嬉しく思い、感謝いたします。』」


 不測の事態に備えて臨戦態勢を保ち続ける領軍の皆には感謝しかない。


 おかげで領民たちは安心して過ごしていられるから。


「『一方で、皆さんが動かざるを得ない状況になってしまったことを申し訳なく思います。』」


 軍隊が暇な状態でそこにいることこそが、日常が守られている証。


 それが保てなかったことが悔しい。

 

「『しかしながら、王国を戦乱に巻き込んだ元凶たちが、私たちを悪と断定し、一方的に戦いを宣言しました。王国軍は容赦なく攻め込んできます。こちらの話も聞かないでしょう。』」


 ワイバーンの偵察によると、昨日、カエルラ領やミニアーノ領では既に王国軍との戦闘が始まり、多数の死傷者が出ているらしい。


 カエルラ公爵やミニアーノ侯爵から交渉のために派遣された軍使は、王国軍の陣の入口で、見せしめのように殺されていた。


 もう話し合いができるような相手ではない。ゆえに、彼らに動いてもらうしかない。


 外交でいう最後の手段、実力の行使による解決を。


「『我が領の理念には、他の国、他の領の地を欲しない。占領政策は思った以上に面倒だから。他の国、他の領の争いに介入しない。絶対に終わりが来なくなるから。とあります。この理念に反するかは正直グレーなとこです。ただ、詭弁を述べさせてもらうなら、降りかかる火の粉は祓わなければならなりません。』」


 私はキッと皆を見渡す。


 兵士たちも、そして人間の言葉を覚えたワイバーンたちも強い眼差しを持って真っ直ぐ前を見据えている。


「『この戦い、私は諸外国との本格的な戦争にまで発展させるつもりはありません。もし、そうなりそうならば私を止めてください。これは命令です。第一目標は、領を戦禍に巻き込もうとする元凶たちを討つこと。第二目標は、元凶たちを討ったあと、我々の領がこれまでどおりの、歴史の表舞台に立たない平和な日常を過ごせるようにすること。』」


 皆が頷く。


「『心に刻め。全ては愛する者のため、守りたいものを守るため!』」


 私は領の皆と、そして私の親友たちとの日常を守りたい!


 皆の顔が思い浮かぶ。


「『我ら、奪われるのを黙って受け入れなどしない。』」


 ローズの思い通りになんてさせない。私たちが私たちの意思で決める日常を取り戻してみせる。


 このまま奪われたままになどしない。返してもらうわよ。


「『我らの平和を脅かそうとする敵に知らしめよ!我らの意志を!我らの力を!』」


 私たちは、守るために戦う。


 ゆえに私は宣言する。


「『我、此処に、戦を宣すものなり!』」


「「「応っ(グァウ!!)」」」



(次回「終末の王国」

1週間程度お待ちください)

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