4話 原因不明の『それ』
三鷹は昼食を食べていた。最初は不味かったらどうしよう……などと不安に思っていた事もあったがいざ食べてみるとそんな不安が消し飛ぶ程の美味しさだった。この美味しさが本当の味なのか、美少女のご飯だから美味しい。という補正なのかは分からない。それでも美味しい事には変わりなかった。
三鷹は午後の授業も済ませ、また指導室へ向かった。今日も佐々木からのキツい雑用が待っているのだ。実際自業自得のため、言い返すことは出来ないので大人しく従っていた。指導室の扉を開ける。この扉は劣化しているのか心の問題なのか、とても重い。その扉をゆっくりとあけるとそこには……
笑顔であの美少女が座っていた。
「え!? 何でお前がここにいるんだよ?」
すると少女は長い黒髪をたなびかせて立ち上がって平然と
「本読んでたの」
「本……こんなとこでか?」
「うん、こんなとこで」
「その本を読んでるところ申し訳ないんですけどこの部屋この後使うんだよね」
すると少女は驚いたように
「え!? そうだったの? ヤバい。 早く出なきゃ」
彼女の焦りように三鷹は違和感を感じながら
「何でそんなに慌ててるんだよ。」
「私あんまり人に会いたくないの」
少女はそう答えた。三鷹にはこの答えの意味は分からない。ただコミュ障か何かなのか?と思っていた。
「あーそういうことね。なんかすまねぇな」
「いやいいの。て事で私は抜けるから、ここであの……楽しんでね。」
三鷹はキョトンとした顔をしていたが意味を直ぐに理解し反論した
「いやそういう使い方しないよ!?そういう使い方すると思って君は急ごうとしたんだよね!?」
すると彼女は首を縦に振った。
「はぁ……で結局君はこの部屋から出ていくの?」
「うん。結局用事があるから」
彼女は廊下を走り去っていった……
三鷹はそんな彼女を悲しそうな目で見ていた。
佐々木から今日もめちゃくちゃ絞られた三鷹は今にも干からびそうな状態で家へと向かった。道中おばあちゃんから心配されたりもしたがなんとか言い訳をして家まで辿り着くことが出来た。三鷹は夕食を食べいつも通り風呂に入る。
(今日の風呂は何か熱いな……)
風呂の温度はいつもと変わらない。でも今日は身体の芯まで温まっている。この原因不明の熱さが何なのか三鷹にはどれだけ考えても分からない。『それ』を見つけるには自分の心に正直にならなければいけないのだから。
三鷹はもう1つ考える。なぜ彼女が自分の前ばっかりに現れるのか……実は自分の前だけじゃなく色々な人に会っているかもしれない。そう思うだけで胸が苦しくなっていた。その原因不明の『それ』から逃れるように三鷹は風呂を出た……
次の日もその次の日もまたその次の日も
彼女が三鷹の前に現れる事は無かった……
恐らく学校から居なくなった訳ではない。時々他のクラスのやつが美少女絡みで大声で話しているのを聞いたりしているのでまだこの学校にいるのだ。
三鷹はずっと疑問に思っていた事が一つある。それは……
なぜ彼女は教室には居ないのか
どのクラスの名簿と学級写真などを見ても彼女の姿はない。なら違う学年?そう思い他の学年も調べたが見つからない。実は彼女は幽霊なんじゃないか。そう思う事も何度かあった。今日の三鷹は普段より暗い顔をしている。彼女に会うために学校に来ていると言っても過言ではないからだ。今日も誰とも話さず屋上で1人虚しく青空を見上げて弁当を食べる三鷹だった。