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1話 遅刻の日に起きた出会い

俺の名前は三鷹総士(みたかそうし

俺は今、この人生の中で1番と言ってもいい危機に直面している。


それは…遅刻だ。この世には良い遅刻と悪い遅刻というのが存在する。良い遅刻というのはよくあるヤンキーがおばあさんを助けて遅くなりました的なやつだ。一方で悪い遅刻というのは寝坊だ。俺はこの悪い遅刻をしているのだ。

ただ何故そこまで焦っているのか疑問をもつ人がいそうなので説明をしておく。


今日は高校2年生になって最初の始業式を終えた次の日なのだ。そして新しい担任は佐々木良隆(ささきよしたか)というみんなから一言『鬼』とあだ名を付けられる程怖い先生なのだ。ここまで言えばどこまでピンチなのか察しがつくだろう。そう。このままではマジでシバかれる。

これが俺の危機の理由なのだ。


幸いにも学校までは自転車で10分の距離で意外と近い。だが1つ難点があるのだ。それがこの坂。もはや角度が60度と言われても誰も驚かないレベルだ。この坂を登り切らなければ学校へは辿りつかない。部活に入ってない俺にとってこの坂はただの地獄だ。いつもこれを登るだけで5分以上は費やしてしまう。そして今日は更に不幸な事がある。それは……雨だ。

さっき学校までは10分だの、坂を登るのは5分以上だの、言っていたと思うがそれはあくまで晴れの日の話である。そして今日は雨だ。最初から学校に間に合う筈も無かったのだ。


そして結局学校に着いた頃には、1限目が始まろうとしていた。色々な先生にバレないように学校内をコソコソと移動しクラス前へと辿りついた。そこで俺は衝撃的な言葉を聞いた…

「あいつ、シバくか。」

間違いなく佐々木の声だった。いや、鬼の声だった。

俺は全身が震えた。まるで産まれたての子鹿のように廊下でプルプルしていた。

このままだとまずい、そう思い俺は1限目のチャイムがなるタイミングで教室に駆け込んだ。どこかのヒーロー漫画に勝るようなスピードで……


三鷹が教室に駆け込んだ瞬間クラスから驚きと悲鳴の声が飛び交う。その数秒後同じように驚いていた佐々木の顔が般若のような顔となり驚きの感情は怒りへと変化していた。

「みーたーかーくーん?」

「は、はいぃ!!何でしょう佐々木先生!!」

三鷹は今までに出したことのない声で反応する!

「何で遅れたのかなァ?」

「え、えーっと道でおばあさんをタスケテマシタ」

「そうか。お前は今日の授業後に指導室へ来い」

三鷹の必死?の嘘は佐々木には通用しなかったようだ。まぁ当然だろう。誰があんな嘘に騙されるのか。

いい遅刻でも悪い遅刻でも遅刻をしている事には変わりないのだと気付かされる三鷹だった。

三鷹はその日佐々木に怯えながら好きでもない教科の授業を受けながら午前を過ぎた。


昼食の時間。この時間は三鷹にとって最悪の時間である。三鷹は友達というのが出来ていない。それにはちゃんとした理由がある。三鷹は高校の入学式の日に事故にあっている。そこで大怪我をおったのだ。意識がない時もあったと医者から聞かされたくらいだ。かれこれ3ヶ月程入院&リハビリを続けていたため友達を作る期間が無かったのだ。そのため三鷹には友達がいない。

三鷹はいつもひとりで屋上で昼食を食べている。何故屋上なのか。それは本人にも分からない。そんな曖昧な感じで屋上にいつもいるのだ。今日もいつも通り屋上への階段をあがる。そこで三鷹は気づいた。

(あ、今日雨だ。佐々木に気を取られて忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)

三鷹は心の中で渾身の叫び声をあげる。叫びはしたがどこで飯を食べるかの方が重要である。普段雨の日はトイレに籠って食べているのだが、ここは屋上付近、なんとトイレが遠いのだ。今から行くと時間が無くなると思った三鷹は屋上の扉の前で食べる事にした。

そうすると、カツカツと階段をあがる音が聞こえてきた。

(誰だ…?ここは誰もこない俺の秘密基地のような場所なのに)

その足音は更に近づいてくる。カツカツと。三鷹は恐怖のあまり小さく丸まっていた。どんどんカツカツ音が大きくなり、止まった。


三鷹は少しホッとし丸まっていた体をほぐして立ち上がった。そして階段の下の方を見るとそこには…可愛らしい女の子が立っていた。

「え、えーっと、すいません。驚かせるつもりは無かったんです。」

そこにいる彼女は顔つきは凛としているが雰囲気はかわいい系で癒される系の女の子だった。可愛いなぁ。三鷹は呑気にそんなことを考えていた。自分が埴輪のような顔をしながら眺めているのも知らずに。

「あ、あの、何か反応してくれないと私も困るのですが…」

そこで三鷹は我に変える。顔が埴輪のような顔からカッコつけるような気持ちの悪い顔へと変化する。そして三鷹はカッコつけるように、

「いやぁ、すみません。少し僕もビックリしてしまって。こんなところに人が来るなんて何年ぶりでしょうねぇ。しかも何年ぶりかに来た人がこんな美少女なんて。これは何かの運命ですよ。もう恋愛物の映画ならここでときめいちゃってそのままゴールインもありえちゃいますよ!」

と、自分でも何を言っているか理解出来ないほどの早口で語る。

「あのすみません。何を言っているかよく分からなかったのですが、あなたは何をしているのですか?」

謎の少女は早口なんて気にせず質問をした。

「いやちょっとくらい僕のギャグに反応してくれませんかね!?まぁいいですけど、僕はここで飯を食べようとしていたところです。」

いつのまにか一人称が俺から僕へと変わっていたが三鷹本人は気づいていないようだった。

謎の少女は

「え、あれがギャグ…」

と小声で呟いたあと

「あ、ご飯を食べていたのですね。邪魔をしてしまって申し訳ないです。誰かといるより1人の方が楽しいですよね。」

少女の言葉からは悪意など感じられなかった。三鷹はそれを聞き今にも泣きそうな声で

「いやいや、僕だって誰かと一緒にご飯を食べてた方が楽しいよ!?勝手にひとりぼっちが好きな人認定されても困るんですけど!?それにあと、僕の渾身のギャグに対しての反応が酷すぎて今にも泣きそうなんだけど!?」

三鷹にとってひとりぼっちが好きという事より自分のネタがスべった事の方が問題なのだ。今まで女子とただでさえ喋って来なかったのにいざ勇気を出してギャグを言ったらスべる。これ程悔しいことは無いだろう。

「反応が酷かったことに関しては謝ります。でも本当のことだったので」

と謎の少女はすこし笑いながら三鷹を嘲笑した。

三鷹は既に撃沈していた。

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