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第61話 旅立ちの朝に

 さて、俺のお弁当が完成して、翌朝である。

 え?茶色の弁当?こんなこともあろうかと、料理部の先輩方に、とりあえず見た目だけは整うような方法を学んできてるから、皆から失望されることはない!! ない……はず……


 大丈夫ですよね!? 料理部部長!!


 俺の脳内の料理部部長がサムズアップしていた……明後日の方向に……


 こういう時のために、料理部とこっちを掛け持ちしたんですから、よろしくお願いしますよ!!


 まあ、どちらにせよ、どうせ旅行するのなら楽しくやった方がいいよね、ってことで、俺の弁当以外の不安要素を感じていないアリオンとセラと和気藹々と談笑していた。


「ん?あれ?坊主、おい、坊主!! こっち向け!!」


 急に野太い、どっかで聞いたオッサンの声に振り向くと……ああ、あの時の……


「まさか俺に偽名使って騙そうとしてたとは……ナメたガキだなぁ、おいタクト! いや、レオ!」


 先の馬車集団襲撃事件の時に会った、乗合馬車管理組合の支部長、イザークのオッサンがそこにいた。


「てめぇ、あん時はよくも俺の顔面蹴り飛ばしてくれたな!! し返しだ、こんにゃろ!!」


 そう言いながらイザークのオッサンは、俺の頭を乱暴にワシャワシャと撫でつける。いやほんと、髪の毛グチャグチャになるからやめてほしい。


「おや、レオとイザークさんは知り合いだったのかい? ちょうどよかった、彼が今回、僕達の旅行の御者をしてくれることになったんだよ」


 先輩が横から俺にそう呼びかけてきた。

 そんな先輩、今は腰から剣の握りが2本ある。2本の剣を帯刀しているという、ちょっと不思議な見た目をしている。ただ、そのうちの1本は、この前の戦いで折れていることを俺は知っている。それなのに、なぜ帯刀するのか……何となく予想はつくが、あえて黙っている


 そんな柄だけの剣を、フェンは不思議そうに見ていたが……「まあ、教える程の事でもないか……」とか言いながら目線を外した……ん?


「ほら、イザークさん、出発前の馬車の点検しますよー!!」


 奥から出てきたのは、今俺の頭をワシャワシャしてたオッサンと出会った時に応対してくれた受付のお姉さんだ。「わ、わかったわかった」と言いながらオッサンは馬車の点検に戻った。


「レオさん、あの時はありがとうございました」


 お姉さんが深々と頭を下げてくるので、逆に俺が恐縮してしまう。


「そ、そんな、あの時ホント何もしてないですし……まあ、支部長蹴り飛ばしはしましたが」


 遠くからイザークのオッサンが「聞こえてるぞ!」と、ちょっと怒り気味に、ちょっと楽し気に俺に対して言ってきた。


「ああ見えて、自分の目を覚まさせてくれたレオさんに何かお礼したいんですって」


 お姉さんはコソコソと俺に話しかけてくる。うーん、本当に、あの時は俺の焦りが爆発して八つ当たりしただけなんだけどなー。


「お礼を言われるような事は何もしてませんが……俺、こう思うんですよ。もし俺の行動に影響を受け何かを感じたなら、それは元から自分の心にあったものなんだって。だから、そのお礼は俺に対して言うものではないです」


「それじゃ、誰に対してお礼を言うべきなんです?」


「自分の信念を最後まで捨てていなかった自分自身に、ですよ。……オッサン、わかった!?」


 俺はイザークのオッサンに聞こえるようにあえて声量をちょっと上げて話していた。イザークのオッサンは絶対聞こえてるはずなのに


「あー? 聞こえねぇなぁ!!」


 とか返答してきたのであった。


 まあいいや、オッサンが俺に何かお礼をしたいと言うなら、それもオッサンの信念のようなものなんだろう。むやみやたらに否定しなくてもいいや。


「そんじゃ、今回の旅の間、よろしくな!! 頼りにしてるぜ、オッサン!!」


「おう、任せろや!!」


 オッサンはそっぽを向いて気の無い返事をしたように見せて、その実声にものすごく気合が入っていた。


***


 さてさて、そんな平和な旅立ちを迎えようとしたところで、まさかとんでもないジョーカーが飛び込んでくるとは誰も予想できな……いや、姉さんが主導して動いた時点で薄々は気が付いてはいたものの、まさかこんなに騒ぎになるとは……


「シャーロットです、ミラちゃんの保護者? お姉ちゃん? の代わりに参加させてもらう事になりましたー!」


 姉さんの連れてきたもう一人の保護者。それは、シャーロットさんだった。

 うん、予想はついていたよ。シャーロットおばs……お姉さんなら、人あたりもいいし家柄も保証されてるので、そうそう拒否する人も居ないだろう。

 王族なので、もしかしたら近衛なり護衛なりが影日向と皆を守ってくれるかもしれない。一応は王族に連なるミラとキャロルちゃんに対して堂々と護衛を付けてしまうと波風が立つかもしれないが、シャーロットさんに対してなら堂々と護衛を付けられる。


 実際、以前のケーキの時に仲の良くなったフェンと、元から仲のよかったであろうキャロルちゃんはシャーロットさんの回りでぴょんぴょん飛び跳ねてる。


 先輩は「王女様と旅が出来るとは……生まれてきてよかった!!」とか言ってるし……お前、姉さん一筋じゃなかったのかよ、減点1な。


 セラは「王女様だ―!!」と喜んで……小説書きたい、とか言ってたから、色々話を聞く気だろうな、これは。アリオンですら見惚れている。


 よかった、誰からも変な顔とかされずに受け入れられている、ロゼッタとミナさんが俺の方を苦い顔で見てるけど……なんでや、俺関係ないやろ。


 ロゼッタとミナさんも「何故か俺に不満はあるみたいだが、シャーロットさんに不満があるわけではない」と。よかったよかった、これで皆仲良く……


「アタシは認めないわよ!!」


 強く拒否反応を示したのは、ミラだった。

もし本作を気に入っていただけましたら、ブックマーク、評価等を戴けますと幸いです。


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