第59話 ラブラブで甘々な2人だけの世界
それは休日の昼間、俺は自室のベッドで横になっていた。
その横にはベッド脇に腰掛けるフェン。フェンはすまほをいつも通りいじっていた。
「はぁ……」
ため息をつきながら俺はベッドに横になり、自分のすまほをいじっていた。フェンに待機してもらっているのは、すまほの使い方をレクチャーしてもらうためだ。
「ああ、もう、手袋邪魔で扱い辛い!」
この、手袋をした状態で触ると言うのが結構、細かい操作が難しくて困る。俺はちょっとイラッとした。心なしか、俺の顔面の光ってる部分も普段より激しく光っているようだ。
「でも、その状態でしか扱えないんだから、慣れないといけないかな?」
フェンが「落ち着け」とでも言いたげに俺の胸元を手で叩くと、コンコンと軽い音が部屋に響く。そもそも……
「寝そべってたら使いづらい」
よいしょ、と俺は体を起こす。
「でも、主のその恰好、威圧感がすごいよね」
フェンにそう言われ、俺は部屋にある鏡を見る。
今の俺は全身黒づくめのスーツに黒のコート、胸当ては軽い素材で作られているが、これも黒。フルフェイスヘルメットもいつもの銀の狼をあしらってはいるものの、基本的には黒。だが、顔面の中央にだけ縦に細く切れ目があり、その中から青い光が怪しく発光している。
どちらかというと、悪役みたいな見た目だ。
「今までの主の変身フォームの中では、見た目の怖さは一番かな? 敵として出てきたら一番絶望感ある」
「そう見えるだろ? 実は基本能力、こいつが一番低いんだぜ」
そう、この変身フォーム、見た目の威圧感とは裏腹に今までの変身フォームと比べ、能力が全体的に低いのだ。それでも、ただの野盗や魔法使いであれば何人居ようと圧倒する事が出来るレベルではあるが。
俺はすまほをぽちぽちと触れる。基本的には普通のすまほなのである。変身中しか使えないため、フェンみたいに遊びに使える感じでもないのだが、一応、フェンとドラゴとはめっせーじあぷり(?)だったかの設定はしておいた。
ただ、すっと指を横に滑らせるとそこには……
『必殺技設定アプリ』
恐らくこれがこの変身フォームの特徴なのだろう。俺はその『必殺技設定アプリ』をトントンと叩く、すると。
「うわっ……」
何度見ても変な声が出てしまう。細かい文字がいくつも出てくる、そして、どうやらそれを好きなように選ぶことで必殺技を作ることができるようなのだ。
ただまぁ、何と言うか、細かすぎる。例えば
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1.必殺技に欲しい特徴を選んでください
□連撃 □絶対の一撃 □高速移動 □属性攻撃
□武器攻撃 □格闘攻撃 □対空性能 □遠距離攻撃
2.必殺技で使いたいアクションを選んでください
□パンチ □キック □チョップ □背負い投げ
□すくい投げ □つっぱり □ぶちかまし
□魔法攻撃 □射撃 □前転 □バク転
□側転 □ジャンプ
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こんな質問が10個くらいあるのだ。組み合わせはいくつあるんだ……
さらに、頑張って選んだとしても、その後が問題である。
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設定しております。しばらくお待ちください
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と言う文字と、この変身フォームのチビキャラみたいなのが躍る映像が出てくる。
まずこの踊ってるチビキャラがうざい。
そして、そのまま1分くらい待たされる。これもまたウザい。そして
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申し訳ありません。ご要望の必殺技を作成できませんでした
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組み合わせがマッチしなければこうやって失敗となるのだ。
「がぁぁぁぁぁ!! 何度目だよ!!」
上手く組み合わせられないと技が作れない。前回フェンリルナイト・マジシャンばかり使ってたのはこれが原因でもある。
一応、必殺技設定アプリで一度完成した必殺技はショートカット、とかいうやつで9つまですぐに呼び出せるそうだ。だから、必殺技をあらかじめ作っておけば、多彩な戦い方が出来るのだろう、とは思うのだが……
俺はそのショートカットを見る、まだ技は1個しか登録されていない。そして、このショートカットも読み込むには10秒くらいのタイムラグがあるのだ。
「とりあえず、必殺技5個くらいは登録しないと使い物にならないぞ……」
この変身フォーム、クセが強すぎる気がする……いや、この魔法の世界で魔法を封じられる時点で全部クセのある変身フォームか。
気が付けばフェンが横から画面をのぞき込んでいた、そして一言
「主、この、コンビネーション設定ってところ、触ってないよね? これなに?」
「ああ、これなー」普通の設定で四苦八苦してたので、そこまでは手が回ってない。だがまあ、フェンなら何か気が付くかもしれない。俺はそのコンビネーション設定をフェンに見せる。
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コンビネーション設定:コンビネーション技の相手を選んでください
□なし □フェン □ドラゴ □フェン&ドラゴ
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「つまり、俺の必殺技は単独でなくとも、フェンやドラゴに強力してもらう事も出来るってことだな」
フェンはその画面を見て、何か考えているようだったが、すぐに
「主! 僕に1回設定させてもらっていいかな?」
などと言うのだ。俺も一人だと行き詰まっていたこともあり「いいぞ」とすまほを貸してみた。
「ありがと、主! えっと、ここがこうで……そうするとここがこうで……」
フェンは俺からすまほを借りると、数分ほど真剣に画面とにらめっこし、そして
「よし! これで!」
フェンが決定ボタンを押す。
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設定しております。しばらくお待ちください
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憎たらしいチビキャラが躍る画面が数秒、そして
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必殺技設定が完了しました、必殺技名を設定してください。
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「やった!」上手くいったと喜ぶフェンと
「えぇぇぇ!!」と嘆き悲しむは何度も失敗していた俺。
てか、あまり無理な設定しなければ数秒で必殺技設定できるんだな。
「主! 僕が必殺技の名前決めていいかな!?」
フェンがすごくいい笑顔でそう言ってくる。そもそも俺は必殺技の名前にこだわりは無いから、俺としても断る理由は無い。
「ああ、いいぞ!」
「やったー!」
そう言うとフェンは嬉しそうにすまほをいじり……慣れてるのか、動きが早いなぁ。
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必殺技名の設定が完了しました。必殺技ショートカット2番に登録しました。
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「はい! 設定できたよ! なんなら残りも僕がやってあげようか?」
フェンは俺にすまほを返してくれる。俺はそれを受け取りつつ
「おお、サンキュ! そうだな、もし行き詰まったらまた手伝ってくれ」
そう言いつつ、画面を確認し、絶句した。
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ショートカット2
コンビネーション設定;フェン
技分類:ファイナルアタック
名前:主とフェンのラブラブで甘々な2人だけの世界
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「フェン、必殺技の名前変えていいか?」
「だめ!」
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