第57話 すっごい茶色だよこれ!
さて、先の魔獣襲撃はまだ明るい時間帯であったことにより、大々的に知られてしまったようだ。ただ、その中でも先輩が活躍し、その結果復学が認められたという事で、学校に所属している学生の間では若干ポジティブなニュースとして取り扱われているようであった。
もちろん、他にも変わったことがいくつかある。まず、フェンリルナイト・マジシャン様ファンクラブが無くなった。これ自体は喜ばしい事だが、なんとこの一件、裏では王宮が動いたそうな。王宮からの勅命が出るとか。意味が分からない。
そして、無事、料理部への入部を決めた俺は、今日から料理男子!見事な料理を作って姉さんたちの度肝を抜いてやるぜ!
「って思ったのに―!!」
今日は思い思いに料理を作ってきて、持ち合いましょう、との事で、頑張って作ったんだよ。できるだけ、カラフルになるように、味も悪くならないように、って考えながら。その結果、料理部の皆さんからは
「いやー、茶色いなぁ……」
「ここまで茶色いと……矯正はムリ、かなぁ……」
「食欲減退色の方がまだおいしそう……」
とのお言葉が……俺、泣いていいよねこれ!?
「まあまあ、お兄様、お茶でも飲んで落ち着いてください」
――ズズズズズズ
「おちついたー」
打ちひしがれていた所、ロゼッタにこの部屋に通され、今はお茶をごちそうになっている。
「そういえば、中等部も初等部も部活に入るのはOKなんだっけ。何の部活かはわからないけど、ロゼッタはここに入るつもりなのか?」
「はい!私の居場所はきっと、ここだと思いました!」
ロゼッタがいつにも増して熱く語っている……ロゼッタにも打ち込めるものができたのか、兄として喜ばしいぞ。
「レオちゃん、私も一緒だよー……ですわ!!」
「まあ、ロゼッタもキャロルも居るっていうから、アタシもね」
ミラ、そしてキャロルちゃんも一緒なのか。うーん、一体何の部活なんだ?
「お? レオじゃないか! クラス外でもお前と一緒になるのか! これからの学校生活、楽しくなりそうだぜ!」
「あ! レオくんだ! いいね! レオくんも居るなら私も観察のしがいがありそう!」
アリオンとセラまで! ほんと、知り合いの多いところだなここは。
「やあ、レオくん!キミも入ってくれるのかい?もしそうなら僕も嬉しいよ」
先輩まで居るのか。バライティに富んだメンツだことで。
「先輩、あんたの方が先輩なんだから、レオ、って呼び捨てでいいよ。その代わり、俺はタメ口にさせてもらうけど」
「いや、流石にそれは……うん、わかった、よろしくな、レオ!」
「ああ、よろしくな、先輩。ところで、ここって何の部活なんだ?」
正直、何をする部活をしようとしているのか、メンツだけ見ても検討が付かない。不思議に思っていると、入口から男女4名ずつの計8名が大きな布を抱えて入ってきた。その中には、ちょっと前の深夜に、魔獣に襲われていた所を助けた人らも……ははは、あの時の男の子と女の子、ちゃんと手をつないでら。
気のせいか、フェンリルナイトがらみの顔見知りが多い気がするなぁ。フェンリルナイト……フェンリルナイト!?
い、いや、大丈夫なはず。王宮からの勅命で忌まわしきファンクラブは消滅したはずだ! まさかこの期に及んで「闇クラブ!」とか言って復活とかしてないよな?そんな危険な集まりだったら俺は、ロゼッタとキャロルちゃんとミラとセラを連れて逃げ出すぞ。
先輩がニコニコしながら俺を見ている、先輩、こわいからその笑顔止めましょう。
「君に一番に見せられて光栄だよ! これが、我々のクラブの正体だ!!」
先輩がそう叫ぶと、いつの間にやら皆が先輩の近くに寄っており、先ほどの8人が持ってきた布を引っ張って広げる、すると……これは、変身中の俺の絵か? そしてそこに文字で
――王国客員騎士 フェンリルナイト様の活躍を助け隊
「レオ、どうだ!これが我が国のフェンリルナイトへの忠義だ!」
「よし、この王国滅ぼすわ」
「なぜっ⁉」
なぜ!? じゃねぇよ。恥ずかしいだろ!!
「そして、レオ! フェンリルナイトである君が入ってくれると、このクラブは完全なものとなる!!」
「わっ! ちょ!! し―!! しー!!」
先輩が急に俺の正体をおもらしするので、騒がしくなった。
まず元凶の先輩と、ロゼッタ、ミラ、キャロルちゃん、ここは既に知っていたから、反応は無い。
次いで、アリオン。アリオンは何となく気が付いていたようで「やはりか……」といった反応。
8人とセラは単純にビックリしてる感じ、かなぁ?
「やめてくれ! 俺は料理部で料理の腕を磨くんだ!!」
「茶色……」ロゼッタが何か言いたげな呟きをすれば
「矯正はムリ、は流石に。クククッ……」ミラが笑いを一生懸命堪えようとし
「レオちゃん! しょくよくげんたいしょくって何ですか⁉」と元気よく聞いてくれるキャロルちゃん。
いやー、心が抉られるんじゃぁ!!
「わ、わかりました!! 入る!! ここに入るから!! そうやって心抉るのやめて!!」
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