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第53話 魔獣先輩

 俺の姿が先ほどの魔導騎士のような姿から、より守備力が高そうな鎧姿となり、ボディスーツの色が黒からワインレッドに変わる。


 このドラゴンスタイル、あまりに強力なのであの闘い以来使っていないが……


「マジで強くなってやがる……」


 少なくともこれなら……先輩を苦しめることなく、一撃のもとに葬り去る事が出来る。


 俺はそのまま左腰の箱から金属板を取り出す。


 金属板に記載されている技、その名はアトミックパンチ。


 これならば!


『ヤ、ヤメロ!!』


 この攻撃の危険度を察知したのか、魔獣が俺に対し素早い攻撃を仕掛けてきた。


 右から、左から、おおよそ、剣技を呼べない無茶苦茶な攻撃だ。


「邪魔、すんじゃ、ねぇ!!」


 俺は躱しながらも、技をセット。


――ファイナルアタック、チャージスタート


『ヤメロ、ヤメルンダー!!』


 剣を滅茶苦茶に振り回す、だが、先ほどにも増して剣筋も何もかもがメチャクチャだ。


「まだ準備中っつってんだろ!邪魔すんな!!」


 無茶苦茶に振り回されても当たると痛いんだぞ、と俺は回避を続ける。


 まだか……まだ準備は出来ないのか⁉


――チャージコンプリート


 よし、準備完了だ!!


「はぁっ!!」


 俺は剣を振り回すだけの魔獣の隙だらけのボディに思いきり蹴りを入れる


『グ、グォォォォ!!』


 魔獣はその蹴りをまともに食らい、大きく吹き飛ばされる。そのままゴロゴロと転がり、建物の壁にぶち当たり止まる。


 よし、今だ


「はぁぁぁぁぁぁぁ!! アトミック、パーンチ!!」


 俺はその場で思いきり拳を魔獣目掛けて突き出す、すると


――グォォォォォォォ!!


 拳の先から炎の龍が飛び出し、魔獣に向かって真っすぐと飛んでいく。


『ク、クソォ!!』


 魔獣が俺の予想よりも早く体制を整え立ち上がった。しまった! 避けられる!!

 俺はそう危惧したが、魔獣は俺の想定外の行動を取ったのだ。


『ハァァァァァァ!!』


「なっ!!」


 先程、俺の攻撃を危惧して滅茶苦茶な攻撃で阻止してきた魔獣が、今度はその攻撃に向かって突進し


『グァァァァァァァ!!』


 俺の龍の拳を剣で受け止めた、


――グォォォォォォォォ!!

『ヤラセハセンゾォォォォォォ!!』


 炎の龍と魔獣の壮大なぶつかり合い。それは街の真ん中の広場で大きな炎の渦を生み出し、熱気が周囲に激しく拡散される。


「くっ!!」


 その元凶である俺もその炎の渦の中心地からはそれなりに離れているのに、熱気に体が焼かれるような感覚に陥る。


「キャロル、フェンちゃん、伏せて!!」


 俺からさらに離れた場所に居るミラがそう叫ぶ。ミラの居るところまで熱気が届いているようだ。だが、周囲にはそれ以外に人が居ないようで、これ以上の混乱は起きていないようだ……?


(……あついよう……あついよう)(伏せて!)(エーン、おとうさーん、おかあさーん!!)


……魔獣の後ろの方からそういった声が聞こえるような気がする。


「まさか、逃げ遅れがいたのか!!」


 不覚だ!! そうだ、こんな混乱の最中、全員が無事に避難できてるとは限らないじゃないか!!


 非常にマズい、魔獣になってしまった先輩を一撃で葬るために、俺は全力で攻撃を放ったのだ。


 見ると魔獣は踏ん張ってはいるものの、今にも俺の攻撃に押し切られそうな様子だ。


 このままでは先輩はおろか、避難出来なかった人たちまで巻き添えになってしまう!!


『グッ……グォォォォォォ』


 魔獣は順調に炎の龍に押し込められ、俺の龍のパンチを受け止めている剣からは


――パキッ……パキパキッ


 と音を立てている。ヒビが入っているようだ。


「おいドラゴ!! この攻撃止められないのか⁉」


『む、無理ですよ旦那ぁ! 一回放った攻撃は止められないんです!!』


「くそっ!!」


 俺のミスだ! 殺す事ばかりに考えが向いていて、周りに目線が向いていなかった。


『サせヌ、さセぬゾォォォ!! 貴族ハ、騎士は……』


――ビシッ!!


 魔獣の持つ剣に完全に亀裂が入る。剣も間もなく折れそうだが、俺の攻撃の勢いはまだ死んでいない。


『力なキ者を守るためにあるものだ―!!』


――バキン!!


 魔獣がそう叫んだ瞬間、剣が根元よりパキンと音を立てて折れたのが見えた。


 先輩も、逃げ遅れた住民も、もう手遅れだ。助かりはしまい……


――ぴぃぃぃぃぃぃぃ!!


 俺がそう諦めたところに、謎の甲高い鳴き声が響き渡った。一体何が⁉ そう思った俺の目の前に飛び込んできた風景は


『はぁぁぁぁぁぁ!! とまれぇぇぇぇぇぇぇ!!』


――ぴぃぃぃぃぃ!! ぴぃぃぃぃぃぃ!!


 剣のガードとまだ残った剣身を盾のように構え、炎の龍を抑え込もうとしている魔獣であった。


 そして、魔獣は


「ふん!!」


 と炎の龍を押し返し、炎の龍は消滅したのであった。


「フェン!!」


「主、あの時の音叉鳴らしてみて!!」


 まだ先輩は完全に取り込まれてない可能性があると思った俺は、フェンに何か方法は無いか聞こうとしたが……俺が聞く前に回答が来た。流石は頼れる相棒だ。


「ドラゴ、おつかれ、あとは俺がやる」


『ええ? 俺の出番これだけですか!?』


 俺は悲しそうにそう言い残すドラゴを無視し、腕輪をトントンと叩く。次に選択したフォームは


変身(フォームチェンジ)!!」


 フェンリルナイトであった。


 俺はそのまま腰の所にあるバックパックに手を伸ばす……あった! あの時に属の親玉から奪った音叉。

 あの後ドラゴンが出てきたりして忘れていたが、しれっとバップパックに入れたまま、入れっぱなしであった。


 前に実家に帰った時、コッソリと変身の練習をした時についうっかり転んで、音叉が一瞬鳴ってしまった事を思い出したのだ。


 フェンの反応、そしてロゼッタの身に起きた事から察するに、恐らくこいつは「人間と神獣、または魔獣を強制的に切り離す」ようなものなのだろう。


 つまり、先輩が完全に魔獣に飲み込まれていないとするなら……魔獣と先輩を分離できるかもしれない!!


 チーン、俺は音叉を鳴らした。

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