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第49話 鬼神様は餌付けされたい

「むふぅぅぅ」


 あれから数日。入学式初日から波乱はあったものの、学校生活としてはまあ、順調だ。


 そんな昼下がり、俺はアリオンとセラさんの3人で学院の中庭に座り、お昼ご飯を満喫している。


 遠方から引っ越してくる人の為、学校から寮生には最低限の食費くらいは支給されるが、その際に自炊をし、お金を浮かせるのが平民出身の寮生には当たり前の事のようである。


 そういった事情を聞き、アリオンはセラさんの食材費を多めに出す代わり、たまにお弁当を作ってもらう事になったそうだ。


 アリオン曰く「セラはうちに遠慮して何も相談してくれない、こういう方法でも取らないとセラの弁当めっちゃ楽しみ俺は力になれなくて悔しいな」と嬉しそうに語っていた。


 本音が堂々と顔出してるぞおい。


 そしてここ数日、俺とアリオンとセラさんの3人は毎日のように一緒にお弁当を突くのであった。


 そんな中、一際情けない声を出しながら俺はお弁当をつついている。


「何だか今日のレオくん、お弁当食べてる時の顔がだらしないというか……」


「これが学院内で『剣聖狩りの鬼神』と言われている男の本性か……」


 実際は、あまりにデタラメな事をやったのが先輩、それを咎めたのが俺、という話になるはずだ。


 それに、これまでお互いにガマンしていたものを叩きつけておかないと後に禍根を残す事になりかねない、だから俺は抱いた殺意をぶつけられるギリギリまで叩きつけたのだ。


 その様子が、負けた相手を情け容赦なく狩る「鬼だ」と評判になり、剣の道一筋12年以上の先輩を、鬼が情け容赦なく駆逐したとして語る輩が出始めた。


 こういう時は、大体面白い話がマシマシに出来る方がウワサとして残りやすい。


 結果、俺はそのウワサ合戦の波に飲まれ、剣聖を屠った鬼神として認められたようだ。それよりも


――パクッ


「んふふふぅぅぅぅ♪」


 流石今日のお弁当当番の姉さんだ、バッチリ俺好みの味になってる


「すごい……人間って、本当にトロけるんだね」


「なんというか、今ふと脳裏に『鬼神様は餌付けされたい』という物語のタイトルが思い浮かんだぞ」


「え? なにそれなにそれ! どんなお話なの⁉」


「いや、ふとタイトルが思い浮かんだだけでストーリーまでは考えてない……セラ、お前、物語を書き出すと勉強がおろそかになるだろ? 書くのはかまわないが、しばらくはやめておけ」


「ん? セラは物語を書く仕事をしたいのか?」


 お弁当を食べ終わって、若干シュンとした感じで俺、参上。


「あ、固形になった、おかえり。 そうだね、最終的にそういう方向で働きたいかな」


「だが、お前の魔法の力は我が領内出身者の中でも歴代トップクラスだと思うぞ。最終的にやりたい仕事に就くのは否定しないし応援したいが、しばらくは魔法に専念をだな……」


「はいはい、せっかく入学したばかりなのに将来の話し過ぎ、まずは目先の事を楽しもう……という訳で」


 俺は中庭から、庭の中央を指さす。庭の中央は上等院と共有なのだが、そこでは、クラブ活動の説明会をしているようで、高等学院と上等院、場合によっては中等部、果ては初等部の学生まで入り乱れ、すごく賑わっているのだ。


「入る入らない問わず、一回くらい冷やかしにいかね?」


 俺は2人にそう提案した。


***


「いやあ、一回前を通っただけですごく勧誘されたね……」


 セラが疲れを隠さずにそう言う。


「流石に初等部中等部の女の子にお手伝いさんの恰好させての客引きは卑怯だろ、断る時の罪悪感がすごくて困る……」


 アリオンも微妙に後悔しているようだ。


「しかし、いろんなクラブ活動があるものだな」


 鬼神、なんて呼ばれてるくらいだから、どこか……例えば「異国戦闘技術研究会」みたいなクラブが声を掛けてくるかと思ったが、予想以上に俺は避けられていた。なるほど、運動関係よりも、どこかに籠って研究したりする部活が主なのだな。


 そりゃ、すぐに暴れる鬼神は入れたくないわな。


 ちょっとショックだが、まあ、クラブの一覧表をもらったからざっと見てみる。


 星詠(ほしよみ)研究会、物語創作クラブ、フェンリルナイト・マジシャン様ファンクラブ、幻獣研究室、地質学研究部、お料理研究会、カタン同好会…


 へー、お料理研究会、いいね。俺も料理のレパートリー増やして料理当番変わってあげられるようにしたいところだ……


 皆、俺の料理を「茶色い、可愛くない」「お弁当としては持っていきたくない」とか言うのだ。酷いよね!!


 同じ男なら理解してくれるのではないかと、アリオンの方を見ると、なんだか変な顔してる


「フェンリルナイト・マジシャン……? ドラゴンじゃないのか?」


 あかん、あえて(ほんにん)がスルーをかましていた、一番ダメなところに反応してやがる。


「なあ、レオ、ちょっとここに行ってみよ……あれ?」


 俺はアリオンが提案してくる前に、そそくさとその場を離れた。


 ……その結果、物語創作クラブの説明を聞きに行こうとしてたセラがアリオンにつかまり、フェンリルナイト・マジシャン様ファンクラブの説明を聞かされていた。


 スマン、セラ。お詫びに、お前が物語創作をの道を志すときは、ツテを紹介してやる!

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