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第47話 西洋剣術は力こそパワー

 入学式も終わり、その後のクラス分け試験も粗方終わった。


 俺たち1年は実技試験を行った闘技場の観客席で試験結果を確認し、皆一喜一憂しているようだ。


「ようレオ、結果どうだった?」


「Aクラス維持だぞ、アリオンは?」


「俺もAクラス、それで、ほら」


 アリオンが傍らに立つ女の子を指す。


「今朝言っただろ? こいつがセラ。セラもAクラス決定だ」


「ああ、君がアリオンの行ってたセラさんだね。初めまして、レオです!」


「あ、はい! セラです! よろしくお願いします!!」


「そんな畏まらなくてもいいって」


「そうそう! 主なんて威厳ゼロなんだから、普通にしてればいいかな」


「あ、あの時の!!」


「フェンだよ! よろしくね!!」


「はい、仲良くしてくださいね」


 さて、ここからは通称「悪あがきタイム」だ。


 自分に下された評価が納得いかない場合、ここで異議申し立てを行い、実戦形式で証明する事でランクアップを狙う、最後の悪あがき、ってやつだ。


 昇格可能性あるならいいじゃないか? それが、結構無理難題なんだよ。


 この最後の昇格試験、3年の先輩が何人か助っ人で参加しているのだが、最期の悪あがきの勝利条件については「この先輩と1対1で戦い、勝利する事」なのだ


 特に成績が悪かった貴族連中でプライドの高い1年は、3年の平民出身の先輩を舐めてかかり、手も足も出ずに返り討ちに合うのがある意味風物詩らしい。


 今年もクラスDだのEだのになった貴族連中が平民出身の先輩に挑み、ぼろ負けする姿を何度も見せられた。もうこれで終わるかな、いや……


「先生!! 今回の試験結果に異議を申し立てます!!」


 試験の補佐を行っていた3年生首席、レイスが教師にそう進言したのだ。


 確かに、客観的に新入生を観察し、試験結果に異議を申し立てる権利も3年の試験補佐の仕事だ、だが。


「レオ=ルーディルの能力は高等学院のレベルに達しておりません!! 即刻の退学勧告、またはクラスFが妥当と進言いたします!!」


 ちょっとこの人の精神、ゴミすぎひん?


「異議を却下します! 彼の試験結果は十分、クラスAでも上位であると認められます。彼を退学にするなら、今年の1年生のほとんどを退学処分にしなければなりません」


「それは先生が愚かで、目が節穴だからそう見えるだけです」


「発言を訂正しなさい!!」


「本当の事を言って何が悪い!!」


 今朝の俺と先輩のやり取りを見ていた、または聞いていた1年の皆がドン引きしていた。


 ぶっちゃけ、オレも引いている、だが……


 さっきからずっと先生と先輩のやり取りが終わらない、このままでは帰れない。


 はぁ、仕方ない。


「主、喧嘩、買っちゃうのかな」


「部屋に閉じ込められ、買うまで軟禁されているみたいな状態だけどな。まあ、変身しない状態でどれくらい戦えるか、確認も兼ねて、いってくるわ」


 俺が歩いて中央の闘技スペースに行こうとするのを、アリオンが止めようとする。


「お前、あんなのに付き合う必要無いぜ? 何やろうとしてるんだ?」


「分かってるけど、ここまで言われて引き下がれるほど、俺、人間出来てないんだよ」


 若干イラっとしているのだ、だから


「あのバカにはっきりと教え込んでやるよ、お前の踏んだ尻尾は、どう猛な狼の尻尾だったってな」


***


 俺は闘技スペースに向かう前に、装備保管場所に赴き、胸当てと肘、膝のガード、そして、軽めの木剣を借りた。


 先輩達は元々勝負を挑まれる可能性があるため、既に装備を着用済みなので、俺の装備がそろえばすぐにでも戦えるのだ。


「レオ!」「弟くん!」


 ふと振り返ると、姉さんとシャーロットおばs…お姉様が心配そうな顔でこちらを見ている。


 恐らく、あまりに異例な事なので、情報の回りが早かったのだろう。


「レオ、こんな勝負する必要ないわよ!!」


「そうです、彼は明らかに異常です!! この事はお父様にも報告し、適正に対処します!! だから……」


「姉さん、シャーロットさん。ありがとう、でもね」


 俺は笑顔で応えた


「今日のうちに俺があいつぶっ飛ばさないと、次会ったとき俺があいつに何するか分かんない。それくらい今ブチギレてる」


 姉さんとシャーロットさんは何も答えない。実際、今起きている理不尽があまりに無茶苦茶過ぎて頭が追い付いてないのだろう。


「それじゃ、行ってくる」


***


「ようやく来たな、レオ!!」


「レオ君!? いけません、こんな無茶苦茶な話、教師として許可できません!!」


 俺が武装してやってきたのをみて、先輩はニタニタと、先生はワタワタとしていた。


「先生、やらせてください。話の通じないバカにはコレが一番だと思いますので」


 と、俺は軽く準備運動を始める……


「……わかりました、しかし、これはあくまで参考の勝負です。その事を忘れなきよう」


 先生は闘技場の端に寄り、俺と先輩はそのまま対峙する、


「じゃあレオくん、勝った方が負けた方に何でも一つ命令できる、そうしないかい?」


「……ちなみに、先輩が勝ったら何を命令するんですか?」


「君はリリカさんから指輪を外し、目の前で壊そうか。リリカさんはキミと一生会わない、そして学院からは退学、どうだい?」


 3つやんけ。


「キミへの命令は指輪破壊の1個だけだよ、あとはリリカさんと学院への命令だ。君への命令1個というのは変わりない」


「ふーん、そういうのいいんだ」


 俺はすかさず中級魔法の火球を先輩に向け放出する。


「無駄だよ」


 先輩はその火球に剣を打ち付け、そのまま火球を切り裂いた。


 ――ドォーン!!


 切り裂かれた火球がそのまま後ろに逸れ、闘技場の壁に当たり爆発する。


 ガッチガチの特注で作られた闘技場なので壊れこそしないが、普通の家屋くらいなら爆破できそうな威力だった。


 周囲がすかさずどよめく。


 威力だけ見れば、3年の上位の人間が使える威力の魔法、それを使う1年、さらに、その魔法を剣だけで完全に防ぐ3年。


 情報量が多すぎるのか、見物している人間が混乱している。


「ふっふっふ。どうだい? 僕の剣技は魔法をも切り裂く!! そして、君は魔法だけが秀でた人間だ!! 君に勝ち目は無い!!」


 先輩が勝ち誇る、だが俺は


「あー、はいはい、これか」


 実家に居た時、ふと剣術を学ぶことになった。その時に使用人の中で一番強かった人、何故か剣術達者な庭師のトムさんがやってたな、と懐かしくなった。


『剣術の基本は、力で押し切る事にあります! そして、達人級になると、魔法すらも切り裂くことが可能です!!』


 そして剣の極意、それが


『人間、どうしても剣筋に左右のブレが発生しますが、このブレが力の分散を生んでしまうのです!! 剣術の極意は、上から下へ、力が100%乗った真っすぐな剣筋、この1点のみです!! さあ、毎日素振り1万回!!』


 だったのだ。


 だから、先輩が長年、鍛錬に鍛錬を積み、恐らく剣では右に出る者が居ないレベルまで至ったのであろうという事は理解できた。


 そのひたむきさを、何故、今、憎しみとして開放しているかは謎だが。


「よかった、力試しにはちょうどいい相手かもしれない。殴る相手としては合格だ」


 俺は左手で木剣を構え


「さて、先輩が魔法を使わないなら、俺も剣だけで勝負だ、行くぞ!!」


 先輩の懐目掛け、駆け出した。

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