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第28話 公園の茂みに隠れてコソコソと人を物色していたが、これは正義のために必要な行為だったんだ

 あの一件以来、ロゼッタは元気を取り戻したようだ。


 元からロゼッタは心配かけまいと平然を装っていたので、殆どの人はロゼッタの様子がおかしかったことすら気が付いていないのだ。


 そんなロゼッタの変化をに気が付いたミナさんが、太鼓判を押すほど元気になっているという事で、ひとまずよかったよかった。


 ただ「私が怖い夢を見た時は、レオ様と一緒に寝てもいいですか……?」って聞いてくるのは反則だからやめて欲しい。


 本当に間違いが起こってしまったらどうするんだ、という考えは無かったとは言わない。だけれども、俺の本心はそちらではない。俺はミナさんに本心の方を答えていた。


「ミナさんが本当に大変な時は、俺は何を差し置いても助けに行くよ!」


 そう言われた時のミナさんは頬を真っ赤にしていた。


 そして、そんな俺を冷たい視線で眺める2人がいた。


「お兄様のああいうセリフ、自分が言われると嬉しいですが、他人が言われてるのを見ると無性に腹立たしいのはなんででしょうか?」

「主の言葉が本気だと分かってるからじゃないかな?」

「お姉様、フェンちゃん、ミナ、そして私。一体、誰に言った言葉が本気なんでしょうかね?」

「ロゼちゃんも分かってて言ってるかな? 主のああいうセリフ、全部本気だよ」

「軽薄な言葉を重ねられる中身の無い殿方よりはいいのですが……」

「全部本気だと分かってる分、それはそれで厄介かな?」

「「はぁ……」」


 そんなこんなで俺も間もなく高等学院への入学を控え、ミナさんもロゼッタも王都に引っ越してからの新生活が始まろうとしていた。


 家もそれほど大きくは無いが、5人で暮らすには問題が無い程度の家を借り、元々荷物が少ない俺と王都に既に引っ越していた姉さんは引っ越し作業完了。


 ミナさんとロゼッタがまだ荷物があるようで、実家と王都の間をあと何往復かするようだ。


 概ね順調であった、概ねは。


 いや、ひとつだけ、まだ全く進展が無いものがあったのだ、だから今日は「一緒にショッピングに行くわよ!!」という姉さんを撒いて、フェンと一緒に王都の公園の茂みに隠れているのであった。


***


 公園の茂みの中、眼鏡をかけた俺とフェンは、公園を行き交う人を物色していた。


 しかし、このフェンに借りた眼鏡、よく見えて良いな。


「なあ、フェン、あの子なんてどうだ? 俺的には70点な気がする!!」


「主は見る目が無いかな。僕から見たら20点」


「そうかー? それじゃあ、あの子、おえ……5点……」


「点数付けるのも烏滸がましい。今すぐこの世から消し去った方が世界の為かな」


「……ほう、あの子は双子か、しかも両方ともナカナカ……68点×2ってところかな?」


「あれはすごいよ主。僕もそれくらいだと思う。男の子なのにあれは凄いかな」


「え? マジ? あれ男なの!?」


 昼間の王都の公園、フェンと2人で茂みに隠れ、そこに来る人を物色していた。


 俺は一応正義のヒーローなので、人道から外れた事はしない。


 だが、俺と同じような事をやって、人に不埒な真似をする不届き者が居るそうだと小耳に挟んだのだ。


 勘違いされたらたまったものではないので、何をやっているかをきちんと話しておかなければならない。


 俺はただ単に、茂みから公園に出入りする人を覗いて採点して、点数の高かった子とお話したい!



 可能なら、そのままベッドの中で!!



 ベッドがムリっていうなら、公園の茂みの中ででもいい!!



 二人でたっぷりと語り明かしたいだけだから!!



 大丈夫! すぐに気持ちよくなるから!!


「主、あの男の子が今のところ一番よさそうかな。声掛ける?」


「そうだな……いや、ちょっとまて、今公園にやってきた2人組、ちょっと見てみろ……」


「……主、悪い事は言わない、あの2人には声掛けるの止めた方がいい」


「いや、でも……」


 見えてしまったのだ……右の子は、一目見ただけで完璧と分かる。なんだこれ、こんなのが世界に存在していいのか!?


 完全無欠、その言葉が一番ぴったりくる。


 100点満点中、100点だ!!


 そして……問題はもう一人の左の子。


 明らかに漂う妖しいオーラ。この子は危険だ!! 手を出してはいけない!! それは本能のレベルで察してしまう、しかし……


 目を奪われてしまう。心が奪われる。弄ばれるのが分かってても、むしろ弄ばれたいとすら思ってしまうほどに……異次元の存在であった。


 100点満点中、300点!!


「右の子は100点、左の子は300点……うっ!! 俺はどちらに声をかければいいんだ!!」


「主、本当にやめよ? 特に左の子はダメ、いろんな意味で、僕、勝てなくなる!!」


 フェンが相当焦っている、分かった、左の子は諦めよう……


「だが、右の子にはアタックする!!」


「主の馬鹿ぁぁぁぁ!!」


 そんなフェンの叫び声を聞きながら、右の子に突進する俺。


 あ、女の子か男の子か聞くの忘れた……まあ、どっちでもいいか。


「そこ行くお嬢さん。」


「……はいっ?」

「まったk……えっ!?」


 俺は右の子に声をかけたのに、左の子の方が大きなリアクションをしたようだ。


 俺は右の子の手を何とか握った。フェンのこの眼鏡、よく見える(・・・・・)のはいいのだが見えにくくなる(・・・・・・・)のが欠点だよな。


「お嬢さん、よろしければこの後、私とお茶などどうですか?」


「えーっと……」

「な、ななななな」


 左の子の挙動が徐々に怪しくなってきた、OKにしろNGにしろ、早めに答えを決めてもらった方が俺の身の安全のためな気がしてきた。


「そして貴女がよろしいのであれば、私は貴女とベッドで一晩中語り明かしたいのです!!」


「ふぇー」

「ななな、何してんのよ!! レオ!!」


 という一言と一緒に、左の子が思いきりビンタしてきた。


 その衝撃でフェンから借りた「幻獣魔獣確認用眼鏡げんじゅう・まじゅうスカウター」が外れ、俺をビンタした相手の素顔が見えた……


「あ、姉さん……?」


「レオ、あんた、私の誘いを断って、私の目の前で私の友人をナンパするって、どういうつもり?」

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