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第24話 僕と契約して、ヒーローになってよ

 俺は怪物目掛け疾走、そして胴体らしきところ(・・・・・・)目掛けて拳を叩きつける。


 曖昧な表現になっているのには理由がある。


 その怪物は黒い靄のようなもので全身が覆われ、どこが体なのか、足はどこなのか、そもそもどういう体の形をしているのかが分からないのである。


 辛うじて目と思われる2つの物体が怪しく光り、その周囲が頭であろうという事が推察できる程度である。


――ぐぁぁぁぁぁ


 敵の反応から見るに、一応は効いてはいるのだろう。


 だが、敵も腕らしきもの(・・・・・・)を俺に対し振り下ろし反撃をしてくる。


「はっ!」


 俺はそれを片腕で受け止めると、もう一方の腕で連続で拳を入れる。


決める! 一気に畳みかける!!


ーーぶんっ


 咄嗟に怪物が尻尾らしきもの(・・・・・・・)を横なぎに払い俺に襲い掛かる。


ーーバシーン


 一気に勝負を決めるつもりであった俺はその尻尾攻撃をまともに体で受け、吹き飛ばされる。


「お兄様!!」


 吹き飛ばされた俺を心配するロゼッタの叫びが聞こえるが、答えてあげられる余裕はない。


ーーグワァァァァ!!


 怪物も長期戦はする気がないのか、転がる俺に対して追撃を放つ。


「よっ!はっ!ほっ!!」


 なんとか回転、バク転を駆使し、追撃を逃れた。


 両社にらみ合いの形となった、だが、この一撃で決める。


「とうっ!!」


 両足をそろえ、大ジャンプ。怪物にとびかかり一気に距離を詰め


「必殺――パーンチ!!」


――グアッグアッグアッ!!


 渾身のパンチ、当たれば勝負が決まるはずだった……当たれば。


――バッサバッサ


「なっ!!」


 空を飛ぶのかこいつは……


 俺がこいつを初めて見た時はロゼッタに危害を加えようとしているときだったので、その前に空を飛んでたのかもしれないが……


「旦那! そいつは隙を見せたら口からエネルギー体を撃ってくるぞ!!」


 筋肉ダルマが言っている。こいつはよくわからんが、ロゼッタを守ろうとしてくれてたみたいだし、今だけは信用してやる。


「分かった!! お前はロゼッタ連れて逃げろ!! はっ!!」


 俺はすかさず右手を掲げる。


 まずはあの筋肉ダルマとロゼッタが逃げるだけの時間でも稼いでやる、と魔法を発動した。


 とりあえず翼らしきもの(・・・・・・)を目掛け、俺は風魔法で作った風の刃を叩きつけた……はずだった。


「魔法が……発動しない!?」


 何故だ、ロゼッタの夢の中とはいえ、それ以外、いつもの俺と何が違うのか……


変身中である(・・・・・・)


 もしかしたら、変身中は普通の魔法が使えないのか?


 そういえば、いくつか戦闘スタイルが違う変身が手に入る予感があるのだが、もしかして


――魔法が制限されるので、その代用として能力が増えるのか?


 身体能力が大きく上がり、それなりのダメージにも耐えられるようになるので魔法が使えなくなる事を差し置いても変身の恩恵は大きいと思う、だが


――グアッグアッ!!


 空から怪物が俺をあざ笑うように吠える。こうなった場合、遠距離攻撃の手段が封じられるのは痛い。


「旦那!!やっぱり俺も加勢を!!」


「駄目だ!! お前はロゼッタと避難してろ!」


「なっ!? 俺は力不足だってのかよ!!」


 この筋肉ダルマが……現実でロゼッタがこいつを恋人として連れてきたら変身してボコボコにしてやろうか?


「お前を完全に力不足と思ったなら、お前を見捨ててロゼッタ連れて逃げてるわ!」


「旦那、それって……」


「俺の最愛の妹を託せる相手と見込んで頼んだんだ、守って見せろ」


 こういう筋肉ダルマはこういう自尊心を擽ると


「っしゃああ!! 燃えてきた!! 旦那、お嬢は全力で守ってやる!! だから旦那も、お嬢に一番かっこいいところ見せてくれよ!!」


 自分の思った通りに動いてて思わず苦笑い。ほんと、こういうヤツ嫌いじゃない。


「任せろ!!」


 でも、ロゼッタが恋人として連れてくる男がこんなのだったら絶対に潰す。


 さて……とは言ったものの、今のままでは打つ手無いぞ。


 空中では怪物が口を大きく開き、そこに光が集まっているのが見える。


 あれがエネルギー体とかいうやつか、まずはあれをなんとかしなければな。


『主! 新しい変身フォームになって、僕と契約して!!』


 フェンがそう叫ぶ。


『僕と契約して、変身ヒーローになってよ!!』


「フェン、お前、契約しないって言ってたじゃないか」


『夢の中だから現実には影響しないはずだよ!! 今回だけ特別!!』


「分かった!」


 俺は左腕のブレスレットを右手の人差し指と中指をそろえ、トントン、と叩く。


 すると空中に文字が浮かぶ


***********************

・フォーム1

・フォーム2

***********************


 俺はすかさず「フォーム2」と書いてある文字をトントン、と叩き


「――変身(フォームチェンジ)


 すかさずそう叫ぶ。


 すると、変身中の俺が不思議な光に包まれ、姿が変わった。


 黒いボディースーツにフルフェイス姿、所々銀色の金属で装飾されているのは大体一緒であるが、胸当て程度であった胸部装甲は肩や背中まで覆い、例えるならハーフ鎧といったところだろうか。


拳や膝、肘も金属で覆われており、フェイスマスクにもマスクにさらに兜のフェイスガードのようなもので覆われており、全体的に重厚な見た目となっている。


 そして、その重厚な姿になったのとは別に、左腰と左上腕部あたりにこれまた金属で出来た薄くて四角い箱のようなものが取り付けてあった。


 俺はすかさずその腰の金属ケースに右手を伸ばし、ケースから1枚の金属板のようなものを取り出した。


「フェン!! 俺に力を貸せ!!」


『我が力、主のために!!』


 フェンがそう答えると、俺が手元に持った金属板がそのまま発光し、砕け散った。


 その後、フェンが緑色に光り、そのまま小さな緑色の光の玉になり俺の腹部に吸い込まれたと思いきや、俺の体の見た目にも変化が起きる。


 全身が淡く光り、ボディスーツの色が次第にライトグリーンになっていった。


 もちろん、当人の俺は見た目以外の変化も感じる事が出来る。先程と比べ、体が非常に軽いのだ。

 恐らく、フェンの特徴である素早さを能力として取り込んだのだろう。


 そして、腰の箱には4枚の金属板のカードが新たにセットされていることに気が付く。


「なるほど……フェン、力を借りるぞ!!」


 俺は腰の金属箱から金属板を2枚取り出し、そのうち1枚を左肩の金属箱にスライドして入れる。


 フェンと契約したために新しく使えるようになった能力。だがそれを俺が自力で自由に使うとなると負荷が高いのだろう。


 腰の箱には使えるスキルを保管しており、それを上腕部の箱に通す事で、人間である俺が使える形に変更し、行使するようだ。


――エアロソード


 今まで聞いたことの無いような声がどこかから聞こえたかと思うと、突然俺の前に剣が1本現れた。


――パシッ


 俺は左手で剣を取ると、続いて右手のもう一枚の金属板を左腕の箱にスライドして入れる。


――エアロスラッシュ、レディー……


 怪物が光のエネルギーを俺に向けて放つ。


――Go


 俺は剣を両手で構え、怪物に向けて剣を一振りした。


――ドカーン


 俺の振るった剣は振るった剣の軌跡と同じ形をした魔力の風の刃を発生させ、怪物の放ったエネルギー体とぶつかる。


 どうやら、エネルギー体と相殺されたらしく、空中で双方の攻撃が無効化されたようだ。


 だが、これで五分と言うわけでは無いようだ、何故なら


――エアロソード損傷拡大、消滅


 今の一発で剣が崩壊したようだ。


 つまり、今の同じ手は俺は使えないため、別の手で早々に決める必要があるわけだ。


「それなら」


 俺は再度、腰の箱から2枚の別の金属板を取り出す、そして、1枚を肩の箱に入れる。


――エアロキック、レディー……


 俺は腰を屈め、その時に備える


――Go


 俺はジャンプし、そのまま空中でジャンプをする。


 そして、それを繰り返す。


「おいおい……」

「お、お兄様?」

――グァァァァ⁉


 ジャンプを繰り返して飛行中の怪物に近づくのだ、その様子はロゼッタも筋肉も怪物も驚いているようだ。


 最も、皆を驚かせるためにやったわけではないのだ、ジャンプを繰り返しながら、俺はもう一枚取り出した金属板を肩の箱に収める。


――ファイナルアタック、チャージスタート……


 俺はその時間を利用し、さらに上空に飛ぶ。


 怪物の待機している高度も超え、さらに上に……


――チャージコンプリート、レディー……


 俺はその言葉が聞こえたところで上昇をやめ、そのまま


――Go


「必殺――キーック!!」


 怪物に向かい飛び蹴りを放つ。


 怪物ももちろん、回避を行おうとするが…


「俺の相棒の速さを、舐めんなよ!」


 そこは底上げされた素早さが勝ったようだ。

 回避行動すら間に合わない速度でキックをお見舞いしたかと思えば


「いっけぇぇぇぇ!!」


 そのまま地上に衝突したのであった。


 ただ、その勢いに俺も耐えられず


「うぉっ!!」


 そのままの勢いで跳ね飛び、変身が解除される。


 俺とフェンも分離され、そのまま別々に吹っ飛びそうになったので、俺は咄嗟にフェンの腕を掴み自分の方に抱き寄せた。

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