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第20話 新しい変身フォームとママだった俺

 深夜、人気のない湖の畔。


 そこに月灯りに照らされる1人の少年と1人の大きな狼が居た。


 レオ=ルーディルとフェンである。


 レオは先ほどからからだをちょこまかと動かし、フェンがそれを呆れた目でじっと見る、といった構図であった。


「へんs……うーん、ちょっと違うな。へん!! s……これもパッとしないな。おいフェン、どれがいいと思う?」


 そう言いながらレオは「へんへん」言いながらポーズをとってるが、フェンにとっては


『どうでもいいかな』


 あくびをひとつ。正直なところ、帰って寝たいのだ。


「おい、相棒が困ってるんだぞ、助けろ」


『困る必要ない所で勝手に困ってるだけじゃないかな?』


 レオの悩み、それは


――変身ポーズが決まらないと、意識の切り替えが難しい


 とかいうしょーもない理由であった。


「しょうも無くないわ! 大事な事なんだ!!」


『前はポーズ取らなくても戦えてたんじゃない? なんで今さらポーズとか言い出したのかな?』


 レオは遠くを見つめ、こう言った。


「人のピンチにかっこいいポーズで駆け付けるヒーローはな……ロマンだ」


『心底どうでもいいかな』


()は相棒としての自覚がないな……フェン(・・・)身!!」


『どさくさに紛れてわざと名前間違えるのやめて欲しいかな』


「それならもうちょっと付き合ってくれよなー」


『……屋敷に戻ります。ここに居ると馬鹿な発言に苛々させられる』


 若干マジなトーンで見捨てる宣言を始めたフェンに対し、レオは懇願する。


「わー、お前居ないと朝までに戻れないから待って!! あと1回だけだから!!」


『主、眠たいんだから早くしてほしいかな。最後1回だけかな』


 仕方ないので最後の1回、これはゆったりと。


 左手をグーにして腰に、右手を左上に上げ、そこから右手をゆっくりと自分から見て時計回りに……その右手が頂点に来た瞬間、叫んでみた


「変身!!」


 レオはそのまま変身をしたと思いきや、そのポーズのまま動かない。


『主、どうしたのかな? 満足してもしなくても帰るよ』


「これだ…これは最有力候補だ……」


『主!!』


「ああ、すまんすまん。帰るんだったよな……あとちょ……」


『なに⁉ もうこれ以上はダメ、帰って寝る!!』


「わ、わかったわかった……」


 レオはフェンの剣幕に押され、そのまま帰宅することとなった。


***


「しかし…どうしたもんかね」


 帰り道、フェンに跨り高速移動をしながらも、レオは悩んでいた。


『主が悩んでるの、新しい変身フォームのことかな?』


「そうなんだよ、新しい変身フォームが」


……使えない。


 いや、誤解があるといけないので弁明すると、レオは使い方もわかっているし、強い事も理解はしているのだ、だが……


「害意のある魔獣を捕えて強制的に契約するか、精霊や幻獣のような高位精神体に協力してもらって強化する、か……」


 正直、魔獣ですら、あの忌まわしい冬山で1度会った以外は見かけた事すらないのである。


 精霊や幻獣なんてそうそう……幻獣?


「なあ、フェン。お前確か幻獣だったよな?」


『僕はダメだよ、主。僕を使うといざという時に逃げられなくなるかな。それに……』


「それに?」


『何でもないかな』


 フェンは基本的に移動手段として重宝しており、レオはむしろ変身能力よりもフェンを使役して遠出が気軽に出来る方が有用であるのではないか、とすら思っている。


 そう、本当に、一度の例外を除いて戦闘のような荒事は起こってないのだ。それなのにレオは戦力を強化する事に余念がなかった。


「はあ、どこかに幻獣か精霊落ちてないかな……」


『そんな道端にポンポン落ちてるものではないかな。というか主、基本的に平和なのになんで主が戦力増強してるのか、分からないかな』


 戦いたいのかな? なんて目でフェンが俺を見るので、違う違うと答える。


「何故だかしらないが、俺の所に戦う力が集まってるわけで、これが不吉の前兆なんて可能性もあるだろ? もし不吉な事が起こった場合、俺がこの力で皆を守りたいと思ってるだけだ」


――実際は、レオがその能力を欲したから次々に能力が集まってきてるわけで、不吉な前兆でもなんでもなく、ただのレオの転生特典(自業自得)なのである。


だが、記憶を引き継ぐことを良しとしなかったレオはその事を覚えてない。だから、変身とかいう能力に対し、自分の力になる事を歓迎する反面、疑問も持っているのであった。


「なあ、フェン。お前、幻獣の知り合いとか居ない? もし居たら紹介して欲しい」


フェンは心底イヤそうな感じで


『えー、知り合いの女の子に、自分の気になってる男の子紹介するのはちょっといやかな』


「え? 幻獣って皆女の子なのか?」


『いや、冗談』


「お前の冗談は分かりにくいんだからいい加減に……そういえばフェン、お前ってどこで生まれてどこからやって来たんだ?」


 そうだよ、フェンの生まれ故郷とかがあれば、そこが幻獣誕生の地、などかもしれないじゃないか!


『主』


「ん? どした?」


『だから、主なんだよ?』


「は? 何が俺なんだ? よくわからないぞ?」


『だから、僕は主から生まれたんだよ』


「へ?」


『つまり、主は僕のママかな? ママ、おっぱいちょうだい!!』


「ちょ! こわ!! 幻獣こわっ!!」


『ママー!! 昔みたいに僕におっぱいちょうだい!!』


「昔もやったことないわ!! は? ちょっとまて、まさか……」


『夜中におっぱいが恋しくなって、主のおっぱいたまにしゃぶってたかな』


「ひぇぇぇぇぇぇぇ!!」


冗談であったとしても、怖かった。


『まあ、過去の暴露はおいといて、僕が主から生まれた、これがヒントになるかも?』


「冗談じゃないのかよ!! 暴露かよ!! やってたのかよ!! ……でもまあ、有益な情報だな、サンキュー」


フェンはお安い御用と一言言ってから


『どちらにせよ、主が言うにはその戦闘フォームで契約が出来るのは1体だけでしょ? その後の事を考えると慎重に考えた方がいいかな。焦って後悔するのは主かな』


「そうだな、いつも通り構えつつ、のんびり探すか」


『じゃあ、今日久しぶりに主のおっぱいを……』


「やめろ」


俺の知り合いの幻獣、変態率100%じゃねぇか、幻獣は全員変態だな、そうに決まってる!と思うレオなのであった。

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