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第1話 転生特典

 俺こと辺境の男爵家の長男、レオ=ルーディルは転生者である。


 転生者、といっても、自分がそうであると漠然と知っているだけである。


 何故なら俺は、前世の知識を持ち込んで剣と魔法の世界で政治チート!! とかする気もなかったようだ。

 断言できないのは、前世の記憶をほとんど覚えてないので仕方ないと思っていただきたい。


 また、チート能力をもらっているわけでもない。


 いや、厳密に言うとチートについては「保留、いずれ結論を出す」と転生の際に転生担当の女神様とお話していた。

 なので、普段はいつも通り生活しているのだ。


 父であり領主のランバート、母のルリア、3歳年上の姉リリカ、2歳年下の妹ロゼッタ。そして俺たちによくしてくれるお手伝いさんや庭師、執事のみんな。

 家族との何気ない日常を過ごし、子供として遊び、眠りにつく、そんな毎日を繰り返してたある日のことであった。


***


「こんにちは、レオくん、でいいんでしたっけ? 元気にしてましたか?」


 一瞬、夢かと思ったが、ふと思い出した。


 数年前、生まれる前に感じた事のあるこの感じ。


 転生の際に女神様とお話をした場所だ。


「女神様。こんにちは! ご無沙汰してます」


 本能的にこの人が、転生の時にお世話になった女神様であると分かった。


 どうやら、一部生前? 死後? の記憶が残ってたらしい。


「じゃあ、あの面談室でお話しましょうか」


 普通は転生後に女神世界に呼ばれるのはほとんど無いという事であるが


 俺の場合は特別対応が必要だとの事で再度呼ばれることとなっていた。


 また、転生特典やそれに類する記憶は今だけだと思うが、何となく思い出していた。


「さて、まずは結論から言いますね」


 部屋に通され机を挟んで対面で座って早々、女神様から本題についてお話をされるようだ。


「本来なら難しいところなのですが、レオさんの前世の善行を鑑み、転生先に合うようにアレンジした形でよければご希望に沿う事は可能です」


「ありがとうございます! でも、転生先に合うようなアレンジというのは?」


「そうですね……。例えば、前世の地球で使っていたバイクをそのまま持ち込むというのは、点検する技術もなければ燃料すら困る事になります」


「なるほど」


「よって、その場合はバイク代わりに騎乗用の幻獣をご用意することとなります。普段はペットと同じように、必要に応じてバイクのようにお使いください。あと、デザインについても、ご希望通り前世の見た目通りに与えてしまうと、今お住いの世界の方々に過剰な恐怖心を与える可能性がありますので、変更を加えさせていただきます」


「いろいろと無理をお願いすることになりました、ごめんなさい」


「いえいえ、レオさんのためであれば、むしろこれくらい苦労にすらなりません」


 女神様は謙遜しているのか、それとも本当に苦ではなかったのかは分からないが、恐縮する俺にやさしく微笑みかけてくれた。


 本当に苦労してないのだろうか?


――前にお会いした時と比べて、若干やつれてるようにも見えるのだが


「さて、再度聞きます。転生特典は、前世、地球のニホンに暮らしていた頃に『ご自身が使っていた特殊能力の持ち越し』でいいのですか?」


「お願いします」


 即答だった。


 それを聞き届けた女神様は、先ほどまでのフレンドリーな感じよりも、威厳を感じさせる声色で俺に告げた。


「転生者レオ=ルーディルよ、そなたの生前の多大なる善行に対し、そなたの望みである、生前に持っていた特殊能力『変身ヒーロー』の能力を授けましょう!」


 レオの前世、それは『変身ヒーロー』であった。


 現世でも何か満たされない感じ、これは魂に刻まれた前世の記憶とかそういう類いだったのだろうか。

 レオは今の家族に不満があるわけではなかった、だが……


 前世で何年も変身ヒーローをやっていた身としては、変身が出来ないというだけで体の半分を持っていかれてたような感じを受けていたのだ。


 ようやく、本来の自分に戻ることが出来るのだ。これを喜ばずに居られるか?


「有りがたき幸せ! 女神より賜りしお力を正しきことに使い、正義を貫いて見せましょう」


 あまりの喜びに、何となく前世の朧げな記憶の中から時代劇を思い出し、ははぁ!! と平伏せんとばかりに頭を下げていた。それだけ感謝しているのである。


「さて、転生者レオ=ルーディルよ、顔を上げてください」


 先ほどの威厳のある声色ではなく、柔らかい口調に戻ったのでレオは顔を上げて女神の顔を見る。


――あれ? 女神様、なんか困ったような、疲労困憊のような、今にも泣きそうな顔をしている。


「さて、これからが本番ですよ! 転生特典を選ぶ面談の続きです」


「え?」


 意味が分からなかった。


 わざわざ女神様自ら手間をかけてもらってわがままを通してもらったのだ、これ以上何を話し合う事があるのか。


「さて、私は先ほど言いましたよね? 貴方の望みをかなえるなら時間をかけても苦労のうちに入らないと」


「おっしゃってましたね」


「そして、生前の善行に応じて特典を与える必要があるのです」


「はぁ……」


「レオさん、いいですか? 貴方は『初代の変身ヒーロー』として長年世界平和に貢献してきました。それは後輩の育成や精神的支柱になることでの間接的な貢献から、場合によっては後輩との共闘等で40年近くも直接貢献してきたことになります」


「はい……」


「あー!! ピンときてない!! いいですか? 正義のヒーローが! 40年間も! 志を曲げずに! ヒーローとして! 平和を守っていた! こんなの善行ポイントが普通の人の比較にならないレベルで貯まる行為なんですよ!!」


「そうですか……」


「現に、先ほどのお願いも前世の貴方の貯めた善行ポイントの15%も使ってないんですよ!! 善行ポイントの利用率があまりに転生特典の量と乖離してると私の仕事ぶりが監査で引っかかるんです!!」


「うーん……」


「とりあえず滅茶苦茶難度が高い事言ってください! 世界を滅ぼしたいでも、世界中の女全部自分のものにしたいでも! 魔王になりたいでも! 大丈夫!! 多分、大体叶えられます!! お願いしてくれないのなら、貴方を寝かせて私も寝るー!!」


「落ち着いてください。それに、今言ったようなものは先ほど正義を貫くと誓った人間が望まない物だと思います」


 女神様が変なテンションになってしまったので、クールダウンの時間を取ることとした。


「とはいえ、俺としては変身能力さえあれば他は何も要らないのですが……」


「つまり、既に与えた能力で大体満足してしまっていると……うーん」


「前世の通りであれば、変身は身体能力を大きく上げますが、元の力が低ければ十分には能力は発揮できないでしょう」


 そこでレオは一呼吸置いて


「ですが、そのための努力すら怠るようになってしまえば正義を名乗る資格は無いと思いますから、過剰な能力アップ、みたいなもの要りません」


「……そういえば世界に適合するように変身能力を調整してる最中に思ったのですが、変身時の武装のようなものはないのですか?」


「ああ、俺の変身ヒーローとしての武装は、俺の体だけです!!」


「え? 正義の味方は変身して剣や銃のような武装や魔法のような特殊能力を使うと思ってたんですが」


「後輩が使ってる変身は武装や魔法技術みたいなのが使えたみたいですね。それはそれでうらやましいと思ったこともないことはないです」


――半分、嘘である。


 実際、前世ではそれほどうらやましいとは思わなかったのだが、今俺が生活している転生先は、剣と魔法の世界ってやつだ。


 剣と魔法の世界をマーシャルアーツや格闘術だけで生き抜く正義のヒーロー……

 絵面的にかっこいいのかどうか判断が難しいところだ。


 別に格闘術が悪いとは思わないし、十分なのだけど、やはり敵が持ってきそうな武装に対抗するための同格の武装くらいはあっても問題はないかもしれない。


「そ、それだー!!」


「ふぁい?」


「変身能力のオプションとして、その、貴方の後輩が使っていた武装付き変身能力を追加付与します! 複数の能力を使いこなすには努力や工夫が必要かもしれませんが、それを乗り越えて正義を貫くのが貴方の目指す正義なようですし」


「なるほど、その変身能力の付与にもカスタマイズが必要だから、善行ポイントも無理なく消化できる訳ですか」


「そう、貴方は自分の希望に対してのサポートを受けられ、さらに武装不足の状況も補える!! 私はノルマが達成できて数年ぶりに寝る事が出来る! まさにWin-Win!!」


――女神様は俺の転生以降寝てなかったのか……どおりでげっそりとしてる。


「素晴らしいと思います! それでお願いします!! でも、また時間がかかるのでは?」


「それでは、先ほどあげた変身を経由しての変身に限定する形にしましょう、それならあまり時間もかけずに対応出来ると思います」


「あ、女神様、使いこなすのは俺の努力次第ってことですが、簡単な戦い方や変身方法だけは教えてもらえますか?」


「わかりました、では、能力付与時に直接脳内に情報を注ぎ込みます。それじゃ、善は急げです、どの能力を使うか一緒に選びましょう!」


 その後、女神様とワイワイと話し合いながら、6つの変身フォームの追加を順次してもらえるようにお願いした。


***


「さて、お時間ですね」


 女神様がそういうと、途端に視界がボヤけてきた。


「おそらく、次に会うのは貴方がまた転生をする時かと思います。その時まで私と転生についての記憶はほとんど消える事になるでしょう」


 これで本当に女神様に会う機会も無くなるわけか……そんなに長く一緒に居たわけでもないのだけど、ちょっと切なくなった。


「転生者レオ=ルーディルよ、一つ教えてください。貴方が数年過ごしてきた転生先の世界ですが、魔物等の被害が多少はあれど、怪物が直接的に人の世界を襲うような危機には陥っておりません。その中でも変身ヒーローの力を二つ返事で欲したのは何故です?」


 もはや声すら出ない。言いたいことも女神様に届かないのか。


 俺がヒーローの力を欲したのは……


 聞こえているかどうかは分からないが、納得したというような首肯をしたあと、女神様は消えゆくレオに対し微笑みかけ


「それでは、私も貴方が貴方の正義を貫くことを祈っています」


 この言葉を最後にレオの意識は落ちていき、気が付いた時にはいつも通り、自分のベッドの上で目が覚めたのである。


 いつも通りでないところといったら、自分が変身ヒーローであるという自覚があり、いつの間にか左手についてるブレスレットが変身のためのキーアイテムであると知ってることくらいである。

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