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第115話 魔導杯、金獅子杯、銀狼杯

 夢を見ていた。


 そこには変身した戦士がたくさん居た。その数は4人どころではなく、10……20……いや、もっと居るか。


「ぐ、グァァァァァ!!」


 そのたくさん居る変身した男、その中でも10名ほどが集団より1歩2歩前に出ており、前から襲ってくる人物を片っ端から倒していく。


 いや、その変身した戦士に襲い掛かる者たちは姿は人間ではない。そして、その敵を容赦なく撃退する戦士たちもまた、やっている事が人間ではない。


――ドゴォォォォォン


 変身した男たちの後ろに控える30人近い、変身した魔法使いの戦士が数人の敵にひたすら魔法を放ち、満身創痍になった敵を前で構えている10名ほどが一撃で斬り伏せる。


 それはもはや惨殺、変身している方が人類の守護者で、今倒されようとしている方が敵であるという事を認識していても、あまりの一方的な虐殺っぷりにどちらが悪なのか、分からなくなる。


 戦士たちは一歩一歩と前に進む、大量の敵を撃破しながら、目指すはその怪物のような敵が守ろうとしている女王に向かう。


 やがて、戦士たちは女王の取り巻きを片っ端から切り伏せ吹き飛ばし、残るは女王1人との戦いになる。


 女王は戦士に一気に攻められるが、その女王は一筋縄では倒れない。その戦士たちを片っ端から倒し、攻撃を防ぐ。


 戦士も女王の猛攻にさらされ一人一人倒れ、先ほどまで2桁は居たはずの変身した戦士はもはや数名しか残っていない。


 だが、残り数名は女王を段々と追い込み……最後、天秤座のマークが付いた大剣を女王の胸元に突き刺す。


「ぐあぁぁぁぁぁ!!」


 女王はそのまま仰け反り、目を見開いて絶命するが……その目は……






 夢の傍観者であるはずの、俺を凝視していた。


***


 あの旅行から数か月、俺は時折同じ夢を見るようになっていた。だがそれは、悪い夢を見やすくなっただけだ。


 精神的にダメージを受けている、とは言え、現状は時々夢見が悪いくらいである。しかも、夢の内容はよく覚えていないため、実質ノーダメである。


 それ以外は学校生活が普通に流れるだけであり、あの後に特に困ったことも無い……わけではない。


 魔法の力が弱まっており、それを取り戻すのが大変だったのだ。


 だが、俺の生活の中で変わったのはそれくらいなものであり、特段、命を失うような危機感を感じる事は無かった。


――やっぱり、フェンは過剰に言ってたのだろうか、と思えてくる。


 普段通り学校から帰ろうとする。校庭からは、居残りで特訓をしている学生たちの声が聞こえる。


「おい!! そこ!! 腰が入ってないぞ!!」

「はいっ!!」


 校庭では何故か学校の武術講師となったイザークのオッサンが、特別講師として居残り特訓をする学生をしごいている声が聞こえるのだ。


 いや、馬車の御者が何故武術講師となったのか、先輩が言うには国家権力だそうだが……あまり触れないようにしよう。


「お? レオ、お前も帰るのか? 途中で買い食いでもしようぜ?」


 気が付くと、アリオンとセラが俺の横に居た。


「さあ、今日はあのカフェに行くわよ!!」


 以前、姉さんとシャーロットさんと一緒に行ったカフェがセラはお気に入りらしい。


 値段も安く、ケーキの種類がものすごく多い上、しょっちゅう新商品を出すため、セラはよく行くのだそうだ。


 そんなこんなで帰宅中、ふと学校行事を知らせる掲示板に目が行く。


――魔導杯、金獅子杯、銀狼杯の開催日告知、エントリー期限迫る!!


「お?やっぱりレオも気になるのか?」


「父さんが2連覇して、姉さんが3連覇したと聞かされれば自然と目も向けてしまうな」


 魔導杯、それはある意味、この学校の頂点でもあるわけだ。


 互いに魔法を撃ち合い、雌雄を決するというその魔導杯は一度でも制覇すれば十分、規格外の魔法使いとして認識される。


 一方、魔法重視主義になってしまっているが故、金獅子杯、つまり互いに剣技をぶつけ合う武芸大会とでも言えばいいか、これは名前負けするような盛り上がらなさだという。


 どうしても、魔法が使えない輩が剣技に逃げたと思われてしまうのだ。


 そんな中でも上位に入ればまだマシなほうで、魔導杯敗北者と違い、金獅子杯敗北者は後ろ指をさされてしまう事が多いのだそうだ。


「魔法が上手く出来ないから剣に逃げたのに、そこでも上手くできない落ちこぼれ」と。


 だが、俺は今年新しく設定された銀狼杯が気になるところだ。


 魔導杯は純粋な魔法で戦うため動きを制限され、金獅子杯は純粋な剣技で戦うため、魔法を封じての戦いを強いられるのだが、どうも概要を見ると、銀狼杯は「魔法と剣技の総合力」で戦うクラスのようだ。


「セラとアリオンも参加するのか?」


「魔導杯? 私は興味あまり無いわね」


「俺も……厳しいが、やってみるしかないかな……」


「僕は金獅子杯三連覇がかかってるから金獅子に出場だね」


 セラが「そんなことよりケーキ!」と言った感じで興味を欠片も向けていない事に対し、アリオンは何かを決心するような表情で参加を匂わせてきた。


 だが、参加するにしてもそこまで肩肘張らなくても良いのではないだろうか? ほら、涼しい顔して三連覇を目指すと言った先輩を見習って……


「って先輩!?」


「やあ! で、レオは魔導杯に出るの?」


 魔力が落ちてるから出たくない、なんて事も言えないので


「嫌ですよ、父さんと姉さんが作った伝説を、俺が汚すわけにもいかないですから」


「ほう、なら、金獅子杯に出るということかな? 早速リベンジの機会がもらえそうだ」


「嫌です、というか、最近まともに剣振ってないですから」


 そもそも、この大会は参加しなければならないと言う訳でもない。3年間の間スルーしてもかまわないわけだ。


 ただ、非常に腹立たしい事に、今年から新設された銀狼杯。これが非常に厄介そうなのだ。


 フェンもシルバーフェンリル、銀狼であること、自分がフェンリルナイトと名乗っている事から考えると、フェンあたりが「銀狼の名の付く肩書は主以外に名乗らせてはいけないかな」などと言われかねない。


 まあ、フェンには新設の階級の事を話さなければなんとかなるだろう。と掲示板から離れる。


 だが、フェンリルナイトと名乗る男が活躍していると言われている中で銀狼杯の新設、ときたものだ。


 後援は例年通り国王直々であるのだが、この時期にわざわざ銀狼を冠する階級を作ると言うのはどうも裏があるように思えて仕方がない。


 俺のこの考えが、考えすぎであるのならいいのだが……。

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