第114話 王国の疑惑
「あら? もういいの?」
あの話が終わったあとしばらくして、姉さんが麦粥を作って持ってきてくれた。俺は腹が減っているのか一気に掻きこむ、かと思いきや何かがおかしい……
美味しいのだが、何だか味覚が変わったような……これが精神を消耗したというものだろうか?
姉さんが持ってきてくれた分くらいは普段ならペロッと食べてしまうくらいの量だ。だけど……2割くらい残した状態で俺の手が止まった。
「あ、うん。病み上がりだからね、そんなにたくさん食べられないかも」
まあ、病み上がりにたくさん食べるのはやめた方がいいって言うし、そんなにおかしな発言でもないから大丈夫だろう。
「そう……」
と思っていたら、姉さんが何か考えてるようなしぐさを見せる。
そして視線は、俺の発言が本心から来たものかを伺うような様子で俺をじっと見ている。
まあ、あれだけ無理して倒れたんだから心配にもなるわな。そう考えると、皆にも今度心配かけた事を謝っておかないといけないかもしれない。
「主が食べないなら僕が食べたいかな!!」
フェンはいつも通りのようだ……いや、いつもよりテンションが高いような気がする。
姉さんに詮索されてる俺を守るためにテンションを高くして俺から視線をそらすようにしてくれているのか、それともフェンが無理をしているのか。
「あんた、そんなに食べて大丈夫なの?」
「問題ない!!」
若干食い気味に返事をしたせいか、姉さんが呆れた顔でフェンを見ている。
いつもの空気感のようで、いつもとちょっと違うこの空気。
俺は元気が無く、フェンはどこかいつものマイペースよりもテンションが高く、姉さんはそんな俺達をどこかしら訝し気な目で見る。
居づらいというよりも、どこかしらこの空気感が嫌だ、と思う感じだ。
「そ、そういえばロゼッタとミナさんは?」
「二人ならミラちゃんの家に行ってるわよ。明日から学校があるのにロゼッタとミラちゃんがが宿題やってなかったから今日は泊まり込みで勉強会するとか。ミナはそれに付き添ってるわ」
そうか……今回は7連休だったから宿題も多かろう。
俺も俺で、今回は旅行中に色々あったなぁ……
初日に買い物に出た時から考えると、全く想像出来ないほどの波乱に満ちた道中だった。
2日目はアリオンが毒キノコサラダを作り、3日目は高い山の上で戦闘、4日目は封鎖された街を観光し、5日目は夜間から昼にかけて2連戦、しかも巨大な敵が続けて出てくる始末。
……あれ?
「明日から、学校?」
もしかして、今って、連休の最終日の夜?
「そんな!! 明日から学校なんて!!」
「いや、あんたは休み取りなさい」
姉さんがそんな事を言うが、そこまで姉さんに心配をかけるわけにもいかない。
休みが予想以上に消えてしまったのは残念だが、寝たままで心配をかける訳にもいかない。
「いや、一晩寝れば大丈夫だよ。姉さん……ありがとう」
俺が2日半寝てた間、俺を介抱していた姉さんには頭が上がらない。
「私だけじゃなくて、ロゼッタとミナにもお礼言っておきなさいよ。あと、皆も心配してお見舞いに来てたのよ」
そうか、皆にもお礼を言わないとなぁ。
***
レオが目を覚ました頃、王城の謁見の間には、レイス、アリオン、イザークが膝を付き頭を垂れていた。その先、数段高いところの玉座には国王、そしてその国王の横にはシャーロットが立って控えている。
そしてレイス達の後ろには、旅行の際にシャーロットの護衛に付いた兵士が膝を突いて頭を垂れ、控えている。
ここに集まったのは、旅行中の事の顛末の報告のためであった。
「ふむ、それでお主ら3人が変身したというのか……そうか……」
本来であれば、国境を跨いだ宗教の司祭に対して弓を弾くような行為をしたレイス達は処刑されても仕方ないはずなのだが、そうはならず淡々と報告をする会となっていた。
予め謀反の可能性を報告していたり、教会の武器の妖しい動きを予め確認し合っていたので、今回の一連の戦いについては何も言わなかったのだ。
「顛末は分かった、本件については教会に対し厳重に抗議をしよう」
だが……アリオンは何かがおかしいと感じていた。どこか、全てが予定調和であったような……
レイスが剣を持っていて襲撃を受ける事が予定調和、と判断するのは分からなくはない。その襲撃者が、王都の司祭であった事が予定調和だと言うのも分からなくはない。
では何か……今回の出来事で異常事態は何か、その中で、国王が予測しているとおかしなものは何か? ……3人が変身したと普通に流しているが、そもそも変身という概念を当たり前に認識している国王……
何故、国王は変身と言う単語を聞いて平然としているのか……そう考えると、国王すら怪しく感じる。
国王、あんたは一体、何を隠しているのだ?




