第113話 絶命へのカウントダウン
力を使うのはやめてほしい、とフェンは言ってきた。
だが、フェンは今までそのような事を言ってきたことは無かった。
どういうことだ? 今まで経験しなかった連戦が悪かったのだろうか?
「連戦したことで今まで見えなかった問題点が浮上した、それもあるかもしれない。だけど僕が思うに一番の問題点は……主が他の人に、力を貸し与えたあの力のせいだと思う」
確かに、フェンの言う通り他人に力を貸し与えるような能力は使った事は無かった。1回目はフェンに、2回目は3人に対し能力を貸し与えた、と言い替える事も出来るかもしれない。
戦闘後に倒れた2回、確かにその直前にその力を使っていた事は間違いない。だが、倒れたからといって、命の危険があるとは限らないのではないか?
そもそも急に倒れるという事自体が異常だと言うのに、俺は手に入れた力を否定したくないせいか、そんな事を考え始める。
「どうすれば分かってもらえるのかな……主、何かここで、魔法を使ってみて」
「ああ、いいだろう」
とはいえ、布団の中で水や炎の魔法を使うわけにもいかないし、土魔法はよごれて後で洗濯掃除が大変だ。
俺は魔法で風を操ろうとして……違和感を感じる。何と言えばいいのか、風が重い。自由に操作する事が大変である、といった感じだ。
「うん、確かに魔法が使いにくくなっている……魔法使いとしての人生は確かに終わるかもしれないな」
「主、魔法を使いにくくなるってのは、それだけじゃないんだよ……精神が蝕まれている、ともいえるんだよ」
なんだか、重たい話のようになってきたが……。
「主はもう少し、真剣に捉えて欲しいかな……魔法が使えなくなる、これは仕方ないにしても、精神が摩耗するということは、死ぬことと同義なんだよ?」
そう言われても、それが死と直結する事がなかなかピンとこない。だが流石に、命を削って戦うほどは俺は戦いに飢えているわけでも無い。
襲ってくる脅威には抵抗するが、自ら進んで戦いに行く気はない、そうなると、自重するのは「コンビネーション設定」だけでいいのか、が次の疑問点となる。
「本来、人間は魔法を使えない存在なんだよ。体内に居る幼獣、幻獣が力を貸す事で、人間は魔法の使い方や魔力循環、魔力回復について学んでいるんだ。そうやって、人が魔法を使えるようになるまでサポートするのが幼獣の役割なんだけど……」
人間は本来、魔法を使えない存在。これが出てきた情報の中で一番の驚愕ポイントである。だが、それと俺の命が危ない事に何の関係が……?
「話が逸れたかな。本来、魔法的なサポートは幻獣の仕事なんだ。ただ、主の使う技のうち、他人に影響を与える技、今回で言うとコンビネーション。これは、サポートする側が幻獣レベルの魔力を駆使していると思う」
「つまり、変身して他人を強化するような技を使い続けると……」
「魔法力が尽き、その魔法力の代わりに今度は、精神を削っていくようになると思う。そして、主の精神が完全に尽きたら、その時は……」
どうなるか分からない、とフェンが呟く。
なるほど、これまでの必殺技と違い、明確に俺の命を削ってたように見えたからフェンが取り乱したわけか。
俺はフェンの頭を撫でながら、安心させるように声を掛ける。
「わかった、無理はしない、約束するよ」
「主、そう言ってもいつか無理をするでしょ?」
「ああ、やらないといけない時はやるよ。お前に嘘はつかないし、それが俺のやりたい事だからな。でもお前の言うように、むやみやたらに無理はしない、だから……俺が無理する時は……」
「わかった、主を信じるよ……」
やはり相棒だ、俺がムリする事を理解している、そして、止まらない事も。
そして、本音では俺に無理をさせたくないと思ってる事も分かってる。俺の子供みたいなものだからな。
「フェンには迷惑かけるな……あと、済まないが……」
「分かったよ……この事は皆には内緒、って事だよね?」
俺がただ無理をするというだけで、心配して俺に歩幅を合わせようとする仲間ばかりだからな……。俺の命が危ないと聞いたら、足並みをそろえて命を懸け始めるかもしれない……それはダメだ。
俺は皆が平和に生きるために頑張るんだ、皆の命を削らせるために頑張ってる訳じゃない。
「悪いな、黙ってるのが辛いかもしれないが頼む」
「僕は主の唯一無二の相棒だからね、これくらい、大した事じゃないよ」
……嘘つけ。そんな震えながら言われても説得力が無いよ。そして、無理をさせて済まない。
そして、このタイミングでよかった、誰に聞かれる事も無い、特に……心配性の姉さんには利かせられないからな。




