第112話 ここまでやって夢オチ?
(……あれ?)
気が付くと俺は、自室のベッドで寝ていたのだ。
先ほどまで俺は皆と旅行に行き、戦い、最期は大きな亀を撃退したはずだ……。
周囲を見ると、暗い。夜のようだ。
――何だ? もしかして今までの旅行は夢か?
なんだかんだ、俺は旅行が楽しみでそんな夢を見たのだろうか……?
だが、喉が渇いた。厨房に行き水でも飲もうと体を起こそうとして……身体が動かない事に気が付く。何だ、何故体が動かないのか……
体が痛いのもあるが、そもそも力が入らない。しばらく動かない身体と格闘していたが、ふと、自分の部屋の扉が開く。
(……誰だ? フェンか?)
声を出そうとするが、声も出ない。そのくせ意識ははっきりしているのがまた奇妙である。
入口から入ってきた人物は俺の額に乗せたタオルを取り換えようとして……俺の顔を覗き込み、俺が起きた事に気が付いたようだ。
「レオ!? よかった、起きたのね!!」
姉さんが、俺が起きた事に気が付いたようだ。俺は姉さんに「水が飲みたい」と言おうとして、声が出ない。
「どうしたの? ……えっと、水が飲みたいのかな?」
俺は全力を使って首を縦に振る、が、ギリギリ辛うじて首が動いてるレベルだ。だが、姉さんは理解してくれたようだ。
起き上がれない、動けない俺を起こし、水を飲ませてくれた。
「ふー……姉さん、ありがとう」
水を飲ませてもらって、何とか声は出るようになった。とりあえず状況が分からないので姉さんと会話をする。
「もう、あんた、あの後倒れちゃって大変だったんだから」
姉さんが話をしてくれた内容によると、やはりあの旅行は夢ではなかったようだ。
「でも……あんたが無事でよかった……あんたが急に倒れるから、あの後皆が心配して……フェンなんて、レオが死んじゃうって大騒ぎして大変だったのよ、ほら」
何が「ほら」なのか、その答えは俺のベッド脇にあった。
「すぅ……すぅ……」
フェンがベッド脇に突っ伏して寝ていた。フェンにしては珍しい。俺がこんな無防備を晒せば、それに対して何かしらいたずらを考えてくるのがフェンの行動パターンであったはずだが。
「イザークのおじさまや、レイスやアリオン君が3人がかりで抑えてくれたからいいけど、あの時のフェンの暴れぶりは鬼気迫る物があったわね……今もずっとあんたの傍を離れようとしないし」
その時の光景を想像し、思わず笑いが出そうになり、それを抑える。
確かにフェンは甘えん坊で、俺の命が危険ともなれば慌てるのも容易に想像出来る。
だが、フェンは少なくとも戦闘のあるような状況では俺の相棒として冷静な判断をしようとしていたはずだ。それがあたりの迷惑も考えずに暴れる、となると、非常に違和感があるのだ。
――もしかして、俺の身に何かあったのか?
そう考えると、背筋に何か寒い物が走るのである。
「ん……うん……」
どうやらフェンが起きたようだ。顔を起こし、眠そうな目をゴシゴシとしてから……俺が起きた事に気が付いたらしい。
次第に目元に涙が溜まったかと思うと
「主ぃ~!!」
と、起きたばかりの俺に飛びつくのだ。
「全く、お前は甘えん坊だなぁ」
俺はやれやれ、といった態度で俺に抱き着いてくるフェンの頭を撫でる。出来るだけ心配かけまいとしたはずなのに、気が付いたら心配かけてしまってたな。
姉さんはそんな俺とフェンを見てから「仕方ないわね」といった様子で
「レオ、フェン、あんたたちしばらく何も食べてないからお腹減ったんじゃない? 何か消化にいいもの作ってくるわね?」
と。部屋を出て行った。
確かに、姉さんの言う通り空腹感をすごく感じる、が、先に気になる事を確認しよう。
今だに俺にしがみつき離れようとしないフェンの頭を撫でながら、俺はフェンをなだめるよう、出来るだけ柔らかな口調でフェンに問う。
「フェン、答えにくい質問かもしれないが教えてくれ。一体俺の身体に何が起きた?」
俺がこれを問いかけたのとほぼ同時に、フェンの身体が強張ったように感じる。
やはり、フェンは何かを知っている、または何かを確信している。
そもそも、俺がいくら弱っているからといっても、急に倒れる事自体が異常なのだ。
この異常状態を見たフェンは、俺が死ぬかもしれないと「確信し」取り乱したと考える。
だが、俺は自分の命が危険にさらされている状態を放置出来る程神経が図太くはないのだ。
別に、フェンの推測に過ぎなくてもいい。ただ、俺の身に何か起きているのなら、俺はその不安要素をひとつでもおおく排除したいのだ。
俺が平和に生きるために。皆と生きるために。
フェンは俺の顔を見、何かしらの考えを巡らせた後、決心するように告げた。
「じゃあ、話すね……主、フェンリルナイトの力をむやみやたらに使うのはやめて欲しいかな……。フェンリルナイトの力が、主の命を削っている可能性がある」




