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第96話 考えろ! 感じろ!

「見つけた! 3個目!!」


 怪物が頭上から空爆のように爆発する木の実を降らせてくる。その爆撃は常にレイスとアリオンを狙い、レイスが防御しアリオンを庇っているからこそ、アリオンは冷静に観察が出来、その結果、殆ど時間をかけずに3つの赤い木の実が生っている様子を確認出来た。


 その観察をしている2人を集中的に攻撃している事からも、あの赤い木の実は弱点であるのだろう、とアリオンは確信した。


 これだけ抵抗が激しいという事は、その攻撃を受けている人間、つまり、アリオンとレイスが相手にとって嫌な事をしている、という証拠だろう。


 だが、アリオンの頭の中に焦りが出始めた。まだ3つなのだ、アリオンが発見した相手の急所足りえる場所は。


 急所は4か所あり、それを同時に叩かなければならない。イザークの言葉が正しいのなら、あと1か所が見つからない。


 既にこの怪物の周囲は1周してしまった。つまり、爆発する木の実に守られている急所は、3個だけなのだろう、となると……落ち着け、考えるんだ、とアリオンは自分に言い聞かせる。


 どこか見落としたのか? どこだ? いや、この怪物は、上の方がごちゃごちゃしてるから、何かを隠しているなら上の方だ。上の方はずっと見上げていた、だから、表面にあるのに見落とした、と言う可能性は低い。


 となると、最期の急所は胴体内か? 確かに、レオ達が胴体に纏わりついた時、爆発する木の実でレオ達を吹き飛ばした……急所が表面に出る事も厭わず。


 いや、そう決めつけるのは早計かもしれない。せめて、レオにバトンタッチするにしても、より確実な物を提示したい。


 何か……何か、見落としはないか?


「危ない!!」


 考え込むアリオンに、怪物が頭に生やした触手が一斉に襲い掛かる。その5本の職種はアリオンを叩き伏せようとするが……


「はぁ!! たぁ!!」


 レイスがアリオンに襲い掛かる触手を片っ端から切り捨てる。だがレイスに切り捨てられた職種も数秒もすれば再生し、再び2人に襲い掛かる。


「くっ!! これは、きついな!! 思ったより力が強い」


 レイスもその職種に段々と追い詰められているようだ、何か……何かヒントは……


 アリオンはどうしても魔法でサポートするのが仕事な所がある、だからこそ、戦いに加勢して戦力となるのは難しい、先輩が倒れる前に突破口を……


――魔法でサポートするのが仕事、だから、目くらましをするため、最初は顔があるであろう場所に、石つぶてを混ぜた竜巻をお見舞いした。その時、こいつはどんな反応してた!?


 あの時、アリオンは、触手よりちょっと上に頭があると仮定して、触手よりちょっと上あたりで石つぶての竜巻を作っていたのだ。それが……効いていた?


「くっ!!」


 ついにレイスの剣が、触手に捉えられた。数本の触手が剣に巻き付き、レイスは思うように剣が振るえなくなっていた。


「一か八かだ、俺の仮説が正しいなら、そこだ!!」


 アリオンは怪物の頭のさらに上に、巨大な岩石を生成した、その上に、岩石に炎を詰め込み、燃える岩として怪物の頭上に落とす。さて、どう反応するか!?


「ピッ!! ピィィィィ!!」


 それまで代わる代わるレイスに襲い掛かっていた触手は、ふと動きを止めたかと思うと、それまで巻き付いて動きを封じていたレイスすら放り出し、慌てたようにその岩石の処理を始めようとしていた。


 やはりか……最後の弱点は、あの触手の頭、いや、触手があるあの場所は頭じゃないかもしれない。

 とにかくあの上に、弱点はある!!


***


 技の発動まで、あと30秒くらいとなった。俺はそのまま瞑想するかのように、目を閉じる。


 言っておくが、アリオンを信じてないわけではない。仮にアリオンが全部の弱点を見つけられなくても、何かしらの手がかりを見つけてくる、と俺は信じている。


 アリオンは魔法の腕が突出しているわけではない。山登りでへばるくらいだから、体力があるわけでもない。そして、勉強したことをちゃんと覚えている人間、でもない。


 ここまで聞くと、ただの劣等生に聞こえるかもしれない。だが、アリオンは自分の持てるものを全て使って観察し、その物事の本質を見極めるのが上手い部分がある。


 この街が元住民の行商を受け入れている話を聞いた時、まず最初にその理由を推察したのはアリオンだった。そして、その答えはほぼ正解であった。


 そんなアリオンだからこそ、この窮地に陥った俺達が逆転を狙える何かを掴んでくれるのではないか、俺はそう思っているのだ。


「おっと!!」


 俺を守ってくれているオッサンがそう声を出したかと思うと、怪物が砕き、俺達にその一部の破片が降り注ごうとしたのを、斧の一振りで弾き飛ばす。


 そうこうしているうちに、残り10秒……流石に、アリオンでも難しかったか?


「おーい、レオ!! よく聞け!!」


 アリオンが叫ぶ声が聞こえる。この技が発動するより前に報告が間に合うか……? 9……8……


「3つの急所はあの木の実の中に隠れてる、そして最後は……」


 7……6……5……


「あの触手の頭の上、頭頂部辺りにあると思う!!」


 4……3……2……間に合った!!


「ああ、分かった!! 後は任せろ!! 行くぞフェン!!」

『うん、僕と主の力、見せてやる!!』


 1……0……時間だ


「発動!!」


 俺がそう声を出すと同時に、俺とフェン以外の時間が、止まった。

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