First Movie
荒廃した世界。
全てのガラスは破壊され、もはや骨組みのみと化したビルの頂点に少女が一人。
名前はサイレン。
着る服はなくどこかから千切ってきたであろう布のみを身にまとい歌う。
音無き世界で声無き歌をその場に響かせる。
「行かなきゃ」
彼女は呟くとそこから飛び降りる。十階以上はあるであろうビルから。身投げをするように。
受け止める者はおらず落ちる彼女を受け止めたのは残酷にも無情な大地。
それでも彼女は怪我一つ無い。ただ、布と身体が汚れただけ。
そんな彼女の目に一つの人影が入り込む。
「あら、久しぶりね。サイレン」
その人影の正体はオリジン。こんな荒廃した世界でも輝く金のショートに軍服。赤と水のオッドアイ。明らかに異質な存在。
しかし、世界をこのように作り変えたのが彼女であるならばそれは当然なのかもしれない。
「あなたはもう少し自分を大切にするべきね。声無き歌なんてもう誰も聞きやしないわ」
「あなたは、どうしてここに」
「別に。することがなくて暇してただけよ。久しぶりに中華料理が食べたい気分だったのにあの店閉まってたから。私、あの店は気に入ってたのにね」
それはどこのことだろう。いや、この付近で中華料理と言えばリィンの店だ。彼女の家族の店は近所のみならず広く有名だから。
「はぁ。あなたと話してもつまらないわね。昔はもう少し話せると思っていたのに残念。今日は残念なことばかりでつまらないわ」
残念そうな口調でありながら表情は歪んだ笑みをうかべている。彼女が望んだ世界でありながらその世界は彼女にとってはつまらないものになってしまっている。
「リィン、だったかしら。あの娘、今はどこにいるの?彼女に直接作らせれば少しは退屈しないと思うのだけれど」
「リィンに会ってもあなたに料理は振る舞わないと思う」
「あら、やっと口を開いたと思ったらそんなこと。問題ないわ。私、ほしいものは絶対に手に入れる主義なの。それじゃ」
人に聞いておきながら答えも聞かずにオリジンは歩き始める。その先に迷いはなく、初めから答えを持っていたように。
そしてサイレンは空を見上げる。
青空は煙や雲によって隠され微かな日光のみが世界を照らす。
こんな世界が彼女達の生きる世界であった。
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『名無し 《サウレ》さんの初投稿!』
『名無し 一本目からオリジン様とコラボってスゴ』