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Difference World に花束を  作者: 雨野 素人
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第四話


「あらためてまして、僕は光崎(こうざき)(ひかる)です」


『私はリィン。気安く呼ばないでよね!』


リィンの所持者との再開。彼も新人といえば新人。何か手を打たなければ早々に破滅行きだろう。


「僕は千咲朱音。ネットで呼ばれている《サウレ》です」


『私はサイレンです。よろしくお願いします』


自己紹介を簡潔に済ましたところで本題に入る。光崎さんがどれだけDWM用の動画作りに適しているのか。また、コンピューターの技術があるのかを見たかった。


「これです。一本目にあげようとしている動画」


「プレイ動画。バトロワ系か」


DWMモデルを使用して行えるバトロワ系ゲーム【After Closed World】略してACW。DWMで動画投稿できなくともモデルさえあれば行えるゲームで自作モデルやフリーモデルを用いるだけで気軽にできるのが魅力。


「ノールックショットでヘッドか」


ACWでは主に二つの操作法がある。キーボード、コントローラー操作。そしてDWM用の機材を用いたVR操作。


前者では三人称視点という広い視野で行えるが画面内のカーソルの方向にしか攻撃できない。


そして後者では一人称視点という狭い視野で行える。しかしノールックショット。つまり見ていない方向にも攻撃ができる。


ゲーム内での見分け方は簡単。プログラムに近い動きかそうでないか。


また、ACWでは自由度の高いアクションが魅力でもある。操作設定で壁を上ったり天井に張り付いたり、その他人間が行えるアクションはほとんどできる。


ただ完璧に全てを扱うプレイヤーはほぼいないと言っていい。自分のプレイにあった特殊アクションのみ設定でONにするのが普通。


「光崎さん、FPSの大会に出る程の実力者だったりしますか?」


画面内の動画では特殊アクションをほぼ全て活用し圧倒的な力の差での勝利ばかりだ。素人の技ではない。


「いえ。あっ、これ僕じゃなくてリィンがやりました」


「は?」


DWMモデルが?意思を持っているからといって、ここまでできるものなのか。


「リィンのモデルをACWに適応させたらそのまま操作権奪われてこう」


申し訳なさそうに動画を指さす光崎さん。【DW-GATE】産はここでも特別機能があるのか。


ACWの制作者は僕の知り合いで製作に僕も関わっている。だから【DW-GATE】とACWの間に関係はないと断言できる。そしてバグや改造ツールを使われた場合、即座にその操作端末のデータを強制的に破壊するプログラムを仕込んである。だからその手の技も使われてはいない。


『どう?私強いでしょ』


『すごいです』


話している間も進んでいく動画。三人称視点からリィンのプレイをリプレイで再生されている。リィンのプレイスキルもさることながらそれを魅せるカメラワーク。


「なるほど。これは、すごいですね」


『楽しいけどさ。これ、実際に私にダメージがきてる感覚があるのよね。もしかしてゲーム内で死んだら消滅するかも?』


「そんな。ありえるんですか?」


「こればかりはイレギュラーが多すぎてわかりませんね。実際にやってみればすぐですけどリスクが大きすぎる」


『消滅するわよ』


動画を映していない方のノートパソコンから声がする。それは僕が持ってきたもの。


「オリジン。いつから」


『私が入ったものはもう自由に出入りできるわ。ACWでしょ?それ。そこでHPがゼロになった【DW-GATE】産は消滅するわ。実際に何体かはそれで破滅を迎える前に消滅したわ』


「これ、オリジンですよね!うわ、実物は初めだ」


『リィンのマスターね。どうも、オリジンよ』


『オリジン、あんたねぇ!』


怒りを露にするリィン。設定上の彼女の“救い”は実家の中華料理屋の再建。荒廃した原因のオリジンを憎むのも当然だろう。


些細なことが“救い”の娘は他にもたくさんいる。リアリティーをもたせるためのキャラ達だ。皆が皆、世界の再生みたいな大それたことを願っているわけではない。些細なことでもそれが救いになる娘はたくさんいるということだ。


『あなたの中華料理屋、とても美味しかったわ。私も食べに行ったことがあるもの。でも残念ね。もう廃業しちゃったなんて』


挑発を込めたオリジンの発言に我慢ができなくなったリィンは画面外に出ようとして弾かれる。当然だが、繋がってはいないのでこちらには来れない。


『私を消したければACWに私を引っ張り出すか私を最下位にすることね』


「何をしに来たんだ?」


『私の言動全てに意味があるわけじゃないわ。人間らしく、暇潰しとでも言っておきましょうかしら?』


残念だがそれはない。オリジンの設定を考えたのはこの僕だ。無意味に人を煽ったり無駄な行動をするような奴ではない。


今ここに来た理由は。


「警告。ACWの」


オリジンの赤と水のオッドアイが僕をとらえる。正解だったらしい。


『気まぐれよ。それこそ私のマスターはあなたに最後まで残っていて欲しそうだったから』


『勝負よ。今、ACWに来なさい。私があんたをこの手で倒してあげる!』


『あなたが私に?ふふっ。面白い冗談ね。可笑しすぎて笑えないわ。でも今日は少し気分がいいの。あなたの茶番に付き合ってあげるわ』


ーーー


『名無し 緊急生放送のお知らせ』


『名無し 急にどうしたんだ?』


『名無し あのオリジン様と新人のリィンって奴がコラボ生放送でACWをするだってさ!』


『名無し 新人が勝てるのか?』


『名無し さっきリィンって奴があげた動画見たけど相当の実力者だったぜ』


『名無し ま、それでもオリジンの圧勝だろうな』


『名無し でもさACWってバトロワだろ?生放送して残れるのか?


『名無し ?』


『名無し いや、居場所バレたりするだろ』


『名無し それを返り討ちにできてこそだろ』


『名無し あと何分で開始?』


『名無し 一時間もないくらい。急いでDWM開かないと』


『名無し だな!』


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