表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/52

06 俺と子種はここにいる

 ここは…? 


 ここは何処だ?


 何もわからない…。


 気が付いた時、俺の手足は動かず、目は開かず、喉はカラカラに乾き、息苦しかった。


 異様な臭いを感じる。これは…?死臭…か?


 俺は誰で、何故こうなっているのか。意識を取り戻したり、また失ったり。記憶をぼんやりと思い出すのにかなりの時間がかかった。その頃にはどうにか手足が動くようになった。目も開き、自分が何か袋のようなものに包まれている事に気が付く。


 …そうだ。俺は、気が狂ってしまいそうになって、冷凍冬眠魔法で自分の時を止めて…。




 俺を包んでいる袋の内側には、このような記述がされていた。



~~~~~


死体蘇生袋【試作】


死者を蘇らすことが出来るかもしれない。

確率は低い。元とは違う生き物になるかもしれない。

時間がかかる。試作品。(なるべく使用しない)


使用可能回数 9/10


~~~~~



 袋を出ると、見慣れた光景である。女子更衣室を住処にしたのには幾つか理由があるのだが、この部屋には何故か、備え付けの自動食堂やドリンクバーがあるのだ。


 沢山あるボタンを押すだけで好みの料理が出てくるし、食べ終わった食器は下げ膳コーナーに置いておけば勝手に消える。その他にも暮らしていくのに大変便利な機能が満載されているので、気が付けばこの部屋に入り浸るようになってしまった。どうせ俺しか居ないのだから、かまうことはなかった。


 以前良く飲んでいた野菜ジュースのボタンを押す。すぐに出てきた野菜ジュースは新鮮そのもので大変うまい。一息ついて、重大な事に気が付く。俺は何故、死体蘇生袋に入っていたのだ?


 俺を…!

 復活させたやつがいる!


 まだうまく動かない体に鞭を打って階段を駆け上がり、1Fの部屋を見渡す。どう見ても誰かが居た形跡があちこちに残っていて、家の外には沢山の家畜がおり、ふわふわの犬たちが駆け回っていた。


 家の周辺には畑が作られ、この世界特有の不思議な木が等間隔で生えていた。おそらくはこれを整えて、植えた人間がいる。誰かが俺を氷の冬眠から取り出し、あの袋に入れた事に間違いはないだろう。何十年ぶりだろうか、やっと人と話せる。


 もしも若い女なら、話し合って…場合によっては力づくでもイイ。とにかく孕ンでもらえば、この空間から脱出できるはズだ。


 女だ。女に決まっていル!もしも男だったなら、俺を復活なンてさせなイ!


 俺は!自分でも驚くほどの大声をあげて、まだ見ぬ女を呼んダ。しかし!誰一人とシて姿を現サない!俺は諦めず!もっと!もっと大声をあげて!この空間を虱潰しに探スことに決メた!


 それなりに広いが、それほど広くナい事は知っている!数年もあれば、探し終えるコトが出来る!この、無数の目があれば!見逃すことはナい!


 いちもつも、何本もアる!おんな!孕ませるコトがデきル!俺を解放シたおんなを孕ませて、二人で現実世界に戻ル!


 オオっ!俺を見てくレ!


 俺、ドン、どん、元気にナってきていマす!


 ア、アっ!


 俺の心は、今


 史上最高の喜ビに満ち、


 無数に生えた手が


 虚空を掴み


 沢山の眼球、爛々と


 輝いてイました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ