50 私と精霊とキラキラ精霊ランドの輝き
「おっ?日が暮れてきたね!暗くなると、精霊さんたちが精霊城の周囲で、ものすごくキラキラ光る綺麗で不思議な大行進を始めるんだ!是非見に行かないと!」
「あたし聞いたことある!キラキラに包まれた精霊さん達による、不思議な音楽ときらびやかな踊りが繰り広げられるんだよね!」
「すごーい!あたしも踊りたーい!みんなも光の輪に加わって、キラキラ踊りたいよね!うん、うん、聞こえる!聞こえるよ!踊りたーい!っていう、みんなの声!」
「みなさん!さあ、大砲をキラキラ☆サイリウムモードに切り替えて!いっしょにキラキラ精霊パレードで、ズン!ドコ!ズン!ドコ!盛り上がっちゃおう!」
大きなココさんと3匹の精霊が、唐突に園内アナウンスモードのお姉さん役を始めた。
彼女たちの指示通りに操作し、大砲をキラキラ☆サイリウムモードに切り替えると、バコン!と音を立て真ん中から2つに割れて、両手で持てるようになった。どういう仕組みなのかわからないが、全体がキラキラと輝いている。
ズン!
ズン!ズン!ズン!ドコン! 『精霊っ!』
遠方から聞こえてくる、大きなドラムの音と、リズムに合わせた謎の呼び声。
お腹の奥底が重低音で揺さぶられて、振動が伝わってくる。足元にはスモークが焚かれ、間をピカピカと光線が走りまくり、周囲はあっという間に摩訶不思議な光景に変貌した。
ズン!ドコ!ズン!ドコ!ズン!ドコ! 『精霊っ!』
異空間内全域に響き渡っている事は確実な音量で流れる陽気でリズミカルな音楽。よく見ると、ライトアップされた城のテラスで精霊たちが生演奏しているようで、城からも沢山のキラキラと光線が放たれている。
「みんなっ!キラキラ精霊パレードが始まるよ!みんなの持っているキラキラ☆サイリウムバズーカを使って、精霊さんたちの踊りの力を増幅させる方法を教えるね!」
大きなココさんのキラキラサイリウムなんちゃらの取扱説明が始まった。トトちゃんもチャレンジしたいようで、私のものを片方貸した所、笑顔で頑張って持ち上げて、一生懸命降り振りしている。
音楽が一段落ついたタイミングで出現し、こちらに四つん這いで向かってくる巨大ななにかの群れ。背中には歌ったりセクシーなダンスを踊る精霊さんをたくさん載せて、色とりどりに装飾された全身を震わせ手足をばたつかて蠢いている。
目や口や鼻からキラキラした光が満ちた蒸気を吹き出す、守護精霊のココさんがこれまでに出会った、精霊の視点からするととっても不思議な数々の生命体を模した乗り物たち。先頭の乗り物は…。
「おおおっ!おおきいねっ!」
トトちゃんは大喜びでサイリウム大砲を振る。キラキラした光が溢れてこぼれ、周辺のスモークに触れると、キラキラがぶわっ!と広がり、とても幻想的ではあるのだが、私達の目に映る乗り物たちのドン引きな姿は…。
ズンドコ!ズンドコ!ズンズンズンズン!ズンドコ! 『精霊っ!』
「ぱおおっ!ぱおおおおん!!」
空に向かってけたたましい謎の鳴き声を上げる乗り物人間達。人型のくせに象みたいな鳴き声なのは一体何故なのか。顔の穴という穴からはキラキラと光を放ち、尻の穴からはボトボトと何かを落とし、首からは名札が下げられ、ライトアップされているため、暗がりでも簡単に読むことが出来る。
そう、私達の名前を…。
「ピカピカァ!ズンッ!ズンッ!ボトボトォ!ぱおーん!ぱおおおー!!」
トトちゃんが音やダンスに合わせて体を揺らして大喜び。鳴き声に合わせてぱおぱお言いながら大興奮している。
ああ…この苦境を脱するには、いつのまにか手に持っていたこれを使うしかないのではないだろうか?ああ…そうだよ、さっくりやっちゃえばいいんじゃない?この子が止まれば私も止まる。二人一緒の運命共同体なのだから、何も怖い事なんて…。
急に後ろから、2号さんにしっかりと抱き止められて、ハッと我に返る。振り向くと、2号さんが接吻してしまいそうな距離で必死に叫んでいた。
「いけません!いけません!お気持ちは良くわかります!私や妹もあのふざけた乗り物にされているみたいですし…でも、殺すことはさすがによくない!お二人は…大切なお友達同士だったんでしょう!?」
えっ…殺す…?どうして?誰が、一体誰を…?気がつけば、いつの間にか私の手には子種おじさんの空間で入手した、代償として使用者の記憶の半分を失う代わりにどんな敵でも必ず一撃で屠ることが出来るという、魔法の屠りナイフが握られていた。
その妖しげな輝きに驚いて手を話すと、硬く舗装された地面に簡単にさっくり突き刺さる。そう、いまだに拘束されて縛られている女囚ココさんの手前の地面に。
自分の目の前の地面に突き刺さったナイフをじっと見つめ、その後真っ青な顔を私に向けて、プルプル震えながら無理矢理笑顔を作り出す女囚ココさん。
その無理矢理作り出した友好的な態度を見て、2号さんの口調が変わる。
「考えてみれば、私達の空間が必要以上に破壊された理由は、この女児のせいでもあるわけで…あなたがやる前に、私が…この手で…」
「ちっ、ちっ、違うの!違うんです!聞いて!聞いてください!あんな誰が見たって怒っちゃうヤバい見た目の趣味が悪い乗り物…確かにちょっと考えてはいました!でも、あたしの設計図には一切入ってないのですぅ!」
「しかし精霊様、設計図を頂いた時、頭の中では楽しくご想像されていましたよね?」
大きなココさんがさらっと怖い事を言う。
「…あ、頭の中を…覗ける?」
「はい、勿論です。どのようなお望みでも叶えるのがAIの仕事です。園内に溢れる夢の全ては精霊様がお考えになったお望みの通りに作成しました。夜のお望みはキラキラ精霊パレードの他にも、精霊様がお考えになられていた、性転換、虫の飽食、排卵体験に始まり、実体験戦争映画館『僕の町が消えて…』などの作品も、全て実現させていただいております。AIは、喜ばれるのが大好きですから!」
胸を張る大きなココさん。大きいけど小さい胸がピンと張って目前に晒される。
「この施設は、本日をもって廃棄し、エネルギーとしてリサイクルします」
2号さんが、今まで見たことが無いくらい冷たい目になって言い放った。




