26 私と精霊とキラキラ精霊ランド
勝負には勝った。が、ほんの少し前まで存在した、全てが効率的に運営されて最高に快適だった空間は、破壊の限りを尽くされ、この場から見渡す限り、大量の瓦礫と焼け焦げた何かしか存在しなくなってしまった。
私がこの空間で肉体改造の日々を過ごした時間は短かったが、無くなってしまったのを見ると、大好きだったお店が無くなったような感覚で、悲しくなる。
約束の報酬については、瓦礫をひっくり返して掘り出すというのも難しく、今後の復興次第という話になった。
ウルトラアンチエイジングプログラムは現実世界でも提供可能らしいので、ホッと安心し、何をさせてくれるのだろう?と心が躍った。しかし、これ、本当に復興できるのだろうか?
現在のこの空間は、人型兵器による様々な攻撃によって多種多様な汚染が広がっており、以前のように住むことは困難だという。住んだらどうなるかと言うと、普通に死ぬとの事。
除染マシンを投入するらしいが、全てが終わるのがいつになるか、まだはっきりとは判らないらしい。まぁ、我々エルフにしてみれば、大した時間ではないのだろうけど。
コピー達は、新たな拠点を現実世界に作り、エネルギーを蓄え、空間に対して出来ることからゆっくり手を出していこう、という話にまとまったらしい。
2500人いたコピー人間たちも大分いなくなり、現在残っているのは200人程。この数なら現実世界でも十分に維持が可能らしい。ちなみに、いなくなったのは殆どが妹のほうだった。僧侶ちゃん…。
「くっ、アイシェ達っ…必ず、復活させてやるからな…!」
今回の結果に悲しみ、涙を流すお姉さん達。全員、何の問題もなく復活できるのだから、別に問題ないのでは…と言ってしまいそうになるが、言葉を飲み込んだ。
彼女らにだって、彼女らなりの感情があるのだ。
汎用人型建設機には、何気に搭載されていた人工知能の力を使って、自動で良い感じに周辺を整備して貰える機能が備わっているらしく、折角なので巨大なココさんの姿のままで働かせることになった。本当に便利な機械だと思うのだが…
「わかっているね、我が同胞よ…」
「スベテ オノゾミ ノ ママ」
物陰で小さな女児と大きな女児が向かい合い、何故なのかニヤニヤと笑いあっている姿を目撃してしまい、心には不安が残った。
現実世界に戻り、ギルドに顛末を報告する。今回の件は報酬が出るわけでもないが、とりあえず、凶悪な敵が這い出てくる事はなくなったっぽい、という報告だけでもしておかなければ、と考えたのだ。
後は、ギルドが何とかしてくれるでしょう?という、丸投げでもある。私は別に勇者でも何でもなく、おしゃれが大好きな一般市民なのだ。
コピー人間たちが新たな拠点を築く場所は、町とダンジョンの間にある、特に何もない草原地帯になった。最初の転移で、この場所に様々な道具や機材が入った倉庫が転送されていた為でもあるし、町が近ければ、とりあえずの安心感も生まれる。
姉妹のコピーとはいえ、200人もの人間が安全かつ文化的に暮らす為には、家が必要だ。テントとかで代用だろうか…と考えていたのだが、地面に穴を掘って暮らすらしい。
そんなの大変だろうし、雨とか湿気とか換気とか色々どうするのだろう?と思ったのだが、それを苦労なくする為の魔法の機材が普通にあるらしく、過去の魔法技術ってすごいなあ!と思った。
エネルギーが足りないという理由で、様々な機材はあまり無駄に使えないようだったが、一ヶ月ほど経って様子を見に行くと、そこは、以前に空間内で見たトレーニング場と変わらない、肉体改造の場に変貌していた。
「以前のお客さん達が、いい笑顔で全員戻ってきました。何故か、新しいお客さんも…。これで、地上の拠点は大丈夫です」
「もうすこし余分なエネルギーが貯まれば、機材を稼働させて、加齢を止め、永遠に肉体改造できるようになります!」
笑顔のコピー人間達。いや、永遠に肉体改造はどうなんだろう?
この時、オリジナルの姉と妹を連れてきてみた。姉を車椅子に乗せ妹が押すという形で到着した筋肉の花園。今はこの場所に脳を洗脳する仕組みはない為、筋肉最高!という気持ちは全く湧かない。しかし、二人とも、何故かとても嬉しそうだった。
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ワタシ ハ AI
メイレイ ヲ ウケタ
(1)ガレキ ヲ テッキョシ オセン ヲ ナクシ
クウカン ヲ ツクリ ナオス コト
ソシテ
(2)キラキラ セイレイ ランド ヲ ツクル
ダレデモ タイホウ ガ ウテル ユメ ノ クウカン
AI ハ ヒト ガ ヨロコブ ノ ダイスキ
チカノ カクノウコ ニ イッタン モドリ
カクノウコ ノ モット チカ ニ ネムッテイル
ワタシ ノ ドウルイタチ ヲ メザメ サセヨウ
ハタラキ マス
スベテ オノゾミ ノ ママ




