千登里の意地。
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自分の状態が大丈夫なのか確認する。
「痛い……」なんとか歩く千登里。
顔はボコボコ、目は腫れてる。骨も痛いし、肘や膝も擦り剝いている。吐き気は無いものの熱がある。
けど、行かなくちゃならない。熱い思いが千登里の中に有った。
皆で逃げるという選択肢もあった。
けれどそれは食料の永続的な確保が出来ない以上、自滅行為だった。持ってきたパンだって1週間もすれば無くなる程度のモノ。
だから千登里は赤色集団のアジトに向かった。赤沢派のメンバーに限った話ではないがこの島の人間は血気盛んな者が多い。怒声が飛び交うし、女性に人権は無いし、新人は怒られるだけでなく、叩かれたりという暴力も受ける。
想像したら怖くなった。
「怖い……」呟く。遊びでナイフをくるくる回すくらい攻撃に積極的な集団。そこに居る新人たちは、今はその環境に居ることで似てきて前に見た時より怖い顔をしているし、怒った声で何か言うし、前は逃げたいオーラが出ていたのに今は肚が座っている。
千登里は小学校時代を思い出す。授業中にゲームをするのが流行っていた。色々な人がゲームをしていてある時、竹本君が先生にゲームをしているのがバレた。ビビった竹本君は自分だけでなく、今までゲームをしていた仲間たち全員を先生に売った。
「ひでぇ……」
千登里は頭を振った。前を見ると遠くに門兵が居て赤色集団のアジトが在る。彼らに見つかったら終わり。彼らは言ってみれば暴力団。それも法が無い分、暴力が直接的。仲間以外は敵だから千登里が近づけば攻撃するに違いない。仲間になれたらなれたで強制労働、それもレイプするような連中だからミスしたら死ぬまで殴られるかも分からないし、それか寝る暇もないほど休みなく働かされ続けるかもしれない。
千登里には大切な仲間たちが居る。自分を必要と言ってくれる人も居る、自分が好きな人もいる。面白い人もいる。今の環境も影響してるだろうが本土じゃそういうことを言ってくれる他人や変な他人は一人も居なかった。その変わった大切な人たちがもし赤色集団の仲間になったらひどく人格が歪むかも分からない。そういう想像をした千登里は自分を殴った。痛みで自分を奮い立たせた。全裸で門兵の前に立ち、微笑んだ。「仲間に入れてください」
仲間に入って2日経った。赤色集団『赤沢派』の中で暴力を受けたり、一緒にレイプしたりして親睦を深めて淡浪を連れだすことに成功した。暴れたり叫べないように喉などを痛めつけて頭に袋を被せて両腕を紐で縛って連れてきた。