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七話 『冒険の兆し』

 時間は昼時。俺は大介達を広い部屋に呼んだ。その理由は大介達を元の世界に帰還させるためである。



「なんでだ!」



「私達を還すんだったら美結も一緒に還して!」



 大介達は元の世界に帰還することは反対はしなかった。むしろ賛成の感じもあった。しかし、ミユがここに残ることに反対だった。



「はぁ。さっきミユが説明しただろ。お前らがいた世界じゃあもう得るものは無い、と」



「だったらなんで俺達は帰還しなくちゃあいけない!」



「無駄に命を散らすわけにも行かないからだ」



 俺は淡々と問いに答える。



「……もうこうなっては致し方ない。力ずくで帰還させる」



 俺は大介達に腕を向ける。



 『記憶操作』を使い、大介と優里のミユと春香に関する記憶を抹消、改ざんした。何故、ミユだけではないかと言うのは後々わかる事だろう。



 大介と優里が力が抜けたように倒れる。ちなみに、『記憶操作』は何度も同じ相手に使用することはできない。個人差はあるが、対抗が出来てしまい忘却も改ざんも効かなくなる。それと忘却や改ざんは出来るのだが、忘れた事を思い出させることは出来ない。既に脳にある情報を削除したりは出来るのだが何処にあるのかもわからない情報を見つけるのは困難である上に危険である。だから思い出させたりは出来ない。



「…なんで春香に魔法をかけないの?」



 ミユが俺の袖の服を引っ張りながら聞いてくる。



「あぁ。こいつは俺の使い魔だ」



「リーヴァ。あなた何時使い魔をミユの世界に送ったのよ」



「転生する前だ。事前にミユの魂と混合させておいて転生した後に分離する」



「そういえば、リーヴァって色々と無茶苦茶だったわね。忘れてたわ」



 フリズが唇を尖らせてジト目で見つめてくる。俺はそんなフリズを目尻に春香に話しかける。



「今までミユを守ってくれてありがとうサラステ」



 立っていた春香、もといサラステが跪いた。



「滅相もありません。私は主の命に従ったまでです」



 黒髪黒目だったのが上の方から流れるように赤髪赤目に変わった。赤といえば好戦的なイメージを持つ人が大半だと思うが、サラステの赤は落ち着いたお淑やかな雰囲気が感じられる。それはサラステの性格が滲み出ているのも理由の一つだろう。



 元々、黒髪黒目ではなかったしもう黒髪黒目でいる必要性もなくなったので元の赤髪赤目に戻したのだ。髪の色や目の色を変えるのは難しい事ではない。自分の魔力を眼や髪に纏わせると好きに色を変えられたりする。が、微量とはいえ魔力を常に送り続けていなくてはいけないため利用する人はそんなに多くはない。



「え…?今まで私を守っていてくれてたの…?」



「まぁな。ミユはサラステと仲が良かったし、元々サラステがこの役を買って出たからな」



「そうなの?ありがとう。サラステさん」



「いえ。私も早くミユ様に記憶を取り戻してほしいので。それと私のことはサラステと呼び捨てでお願いします。そちらの方が慣れているので」



「そう?わかった。それなら私のこともミユって呼んで」



「いえ、それには従いかねます」



「やめとけミユ、そいつは何度言っても呼び方は変えないんだ」



「うぅ…わかった。これからよろしく、サラステ」



「微力ながらも手助けいたします。こちらこそよろしくお願い致します」



 ミユとサラステのきちんとした対面が行われた。どうやら前世の仲は今世でも続いているようだ。



「それじゃあ大介達の帰還を行う」



 帰還させるには召喚される時の魔法を反転させて使えば帰還させることが出来る。召喚魔法とは一種の転移魔法である。違う場所、違う世界から転移させて呼び出す。帰還魔法はその真逆の事をする。召喚魔法は最初さえしっかりすれば召喚など容易い。だが、帰還魔法は最後が肝心なのだ。召喚、帰還魔法は対象が召喚、帰還するまで魔力を消費していなくてはいけない。魔力が有り余っている最初と魔力が少なくなっている最後、どちらが難しいかなど分かりきっている。



 だが、ほぼ無限の魔力を持っている俺にそんな常識は通用しない。



 俺は床に手を置き帰還魔法を発動する。大介達の倒れている床に黒い魔法陣が現れる。刹那、黒い光が部屋を包み込む。光が収まった頃、もう大介と優里の姿は見えなくなった。帰還に成功した、という事だ。



「それじゃあ、次は何をするの?」



 ミユは腕を後ろに組み、微笑みながら問う。その微笑みには悲しみ、後悔などは一切含まれてはいない。むしろ、これからの冒険に心を躍らせている様な微笑みだ。



  ――あぁ。俺もミユとの冒険が楽しみで仕方ない。ミユの記憶は絶対に取り戻させる。今度は失わない。


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