三話 『人類の衰退』
「それでは、まず最初に城の中の案内をさせて頂きます。メイド長フィルメスと申します。以後お見知りおきを。それと何かあれば城の召し使いに何なりとご申し付け下さい」
フィルメスが丁寧に説明を始める。
「勇者様達にはこの城を自由に使って頂いて結構です。それと部屋に関してはどう致しますか?何かご要望がありますか?」
――ふむ。ミユと一緒の方が何かあった時に対処しやすいな。
「俺とミユの部屋は一緒で頼む」
「かしこまりました」
「ちょ、ちょっと!」
優里が何か異論があるようで慌てて止めに入った。
「どうした?」
「どうした?じゃないよ!出会って間もない男女が同じ部屋なんて!」
――ふむ、確かに。前世のミユとならば何ら問題なく同じ部屋だったが今はまだ記憶を取り戻していないからな……。
「そうだ!ミユと同じ部屋なんて絶対にダメだ!」
大介が異論があるようだ。
――さっきから俺のやることに異論しかないのか……?それに何故お前に反対されなくてはいけないのだ?
「ここは本人に決めてもらったら?」
と春香が提案した。そして、皆の視線がミユに集まる。
「どうなの!?ミユ!」
「絶対にダメだぞ!」
「え、ええと」
ミユは困り果ててしまい、視線を春香やリーヴァに送る。
「はぁ……分かった。ミユは俺と一緒じゃなくてもいい。その代わり、部屋に居る夜とかは絶対にミユを守れ」
「言われなくても!」
「まぁ、友達だからね」
優里と春香が当然の事のように答える。大介はよしっ、と隠れてガッツポーズをしてミユは少し残念そうにしていた。
「お決まりになりましたか?」
「あぁ、待っててくれてありがとう」
「滅相もありません」
「部屋は三つで俺と大介で一部屋ずつ、そしてミユ、春香、優里で一部屋。俺達はいいが、ミユ達の部屋は大きめで頼む」
「かしこまりました」
見たところこの城はかなり大きいから余りの部屋も沢山あるはずだ。三部屋くらい借りても問題は無いだろう。
「部屋は準備しておくので先に魔法等の説明、訓練場に移動します。着いてきてください」
またフィルメスが案内するので着いていく。
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――――
――
「待ち侘びましたぞ!勇者殿!」
そこは王城の外にある訓練場であった。そして。そこで待ち構えていたのは筋骨隆々の男だった。
「この方が勇者様の戦闘指導を担当いたします」
「ローダス・グリドリーと申す!今後から勇者殿の訓練を担当する!」
いかにも戦士という感じの男だった。
――さて、3000年前と比べてどれ位成長したのか……見せて貰おうか。
ローダスは大剣を地面に刺し、訓練用の小さい剣を四本持ってきた。
「俺が教えるのは剣術だ。まず、この剣を持って素振りをしてみろ」
ローダスはそれぞれに剣を渡した。その剣を見ると刃こぼれが多くいい剣、とは言えなかった。
――うん?3000年前だったらこんな剣は訓練用だったとしても絶対に使わないぞ?
3000年前だと刃こぼれした剣はすぐに錬金術師で直すか鍛治職人が打ち直していた。だが、今では刃こぼれしていてもそのまま使っている。
「よし!まずは素振り1000回だ!」
「1000回!?」
「む?多かったか?なら100回だ!」
「むむむ、それも多い気がするけど……まぁ、取り敢えずやってみよう」
それから5分後。
「も、もう腕動かない……」
「はぁ、はぁ。キツイ……」
「な、なかなか重いなこの剣……」
「……!………!!」
「はっはっはっ!この程度で倒れていると勇者はやっていけんぞ!」
ローダスは豪快に笑った。そして俺の方を見た。
「お?お前さんはなかなかやりそうだな……。ちょっと勝負でもしないか?」
俺が疲れていない様子で立っていた。そのせいもあり、俺が戦える人間だと思ったのだろう。
――うーん。ま、やってみるか。
「あぁ。いいぜ」
「よし!じゃあ、寸止めでいいか?」
ローダスは予備の訓練用の剣を握った。
「あぁ」
――慢心じゃないがローダスに傷を負わすわけにはいかないからな。
「よし。じゃあ行くぞ!」
合図とともにローダスが走ってくる。
「うおおおおお!!」
ローダスが剣を上に振り上げ、俺を切り捨てようとする。
――おいおい。いくらなんでも隙があり過ぎだろ。俺を舐めてるのか?
俺はそのままローダスを斬る事が出来たのだが、あえて俺はローダスの剣を受け止めた。
「ぬおっ!?……手加減をしているとはいえ俺の剣を受けて無事だと……!?」
――いや。ショック受けてるようだけれども前世の頃はもっと強い奴が沢山いたんだが?多分俺が素手でもローダスの剣を受け止められるな。
「ふぅ。どうやら俺も本気でやらなくてはいけないようだな」
ローダスが片手に構えていた剣を両手で構えた。
「いくぞ!」
――だから、隙だらけだ。
「なに!?」
俺はローダスの剣を剣を持っていない左手で受け止めた。それも刃の部分を指で抓んで止めた。
ローダスが驚いている間に俺は剣を上に持ち上げる。
「ぐっ!何故離れない!?」
俺が抓んでいる剣を引っ張って取り戻そうとするローダス。しかし、どれだけ全力で引っ張っても離れない。
そして俺はローダスにゆっくり剣を振り下ろす。だが――
「ぷっ。クハハハハハ!こんなに敵が近くにいて外すとは!はてさて、俺の目も曇ってしま――ぐふぉ!」
ローダスは衝撃と共に吹っ飛んだ。どさぁ、と音を立ててローダスは地面に倒れた。
「……簡単な剣覇だぞ?」
剣覇とは、剣を操る者ならば基本中の基本の技。剣に自分の覇気を纏い、剣を振るとともに相手に放つ技である。熟練者ならばその覇気の使える量も多くなる。それにそのまま剣に纏ったまま戦ったり、自分の体に纏って身体上昇も出来る汎用性も高く使い勝手の良い技である。
――その技も知らないのか?いやいや、いくら新兵でも剣覇を知らない奴は居ないぞ?はっ!もしかして剣覇は使ってはいけなかったのか!?
「いや〜。お前さん強いな」
ローダスはよいしょ、と言う掛け声と共に起き上がった。
「流石、勇者殿だ。まさか騎士団団長の俺を倒すとはな」
――うん?今何か衝撃的な事実が聞こえた気がするんだが?
「フィルメス。今の話、本当か?」
俺は隅で待機していたフィルメスに聞いた。
「はい。まことでございます。それに、この城で一番強い騎士です」
「そうだ。ま、今は違うけどな」
ローダスは俺の肩を軽く2回ほど叩いた。
「…………」
俺は呆気にとられていた。今聞いた真実が俺の想像をはるかに超えていた。
――マジか?これで一番強いのか……?前世の騎士団長は素手でドラゴン討伐していたぞ?下級だったけれども。
「――どうなってんだ?」