一話 『最強の英雄、三千年後へ』
――俺は、最強を目指した。
血反吐を吐くような努力をして毎日、死んでもおかしくない特訓と実践を繰り返して来た。
そして、俺は最強と呼ばれるまでの存在になった。ここまで来るのに俺の心は何度も壊れそうになった。守った相手に裏切られ、殺されかけた事もあった。だが。今思えばそんな事は極些細な事をだったと思える。何故なら――
「ミユっ!しっかりしろっ!」
「……あぁ、リーヴァ。私はリーヴァと出会えて本当に幸せだった……。」
彼女の腹部は紅く染まっている。俺はそれを抑えている。
「おい…何を…何を言ってるんだよ…!」
「世界中の誰もがリーヴァを信じなくて、裏切っても…私は最期までリーヴァを信じているから」
「だからっ!何の話をしているんだよっ!……まるで……まるでお前が今から死ぬような…!」
俺は彼女の体が冷たくなっていくのを感じた。その瞬間、今までで最も恐れてきたことが起ころうとしているのが手に取るように分かった。
「今までありがとう……。私はこれからも永遠に貴方を愛しています……。また、来世で会いましょう」
その言葉をと共に彼女は俺にキスをした。そのキスは今までで一番悲しくて血の味がした。そしてそのキスを最後に彼女の体は動かなくなった。
「ミ、ミユ?なぁ。おい。何で…動かないんだよ……!」
俺の眼から涙が流れてくる。それは止め度なく流れている。
「いつものように……あの笑顔を見せてくれよ……。ああ、ああああ、ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺は狂ってしまったかのように叫んだ。
「何故だ!何故ミユは死ななければいけない!違うだろ!本当に死ぬべきなのはアイツらだ!……何故だ…何故、俺は最後の最後まで守る事が出来ないんだ……!」
――俺は最強とまで呼ばれる存在になった。だが、本当の意味で守りたい人を守ることが出来なかった。
俺はミユを抱き抱えて歩き始めた。
そこは神聖な場所だった。穏やかな川が流れている。俺は近くにある木に寄りかかった。ミユを俺の膝の上に乗せた。そして俺はミユの頭を抱くようにした。
「これからも一緒だ。ミユ」
俺も瞼を閉じて、真っ暗な世界に身を委ねた。
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――――
――
俺は冷たい石の上で目が覚めた。頭がガンガンと鉄の棒で叩かれたかのように頭が痛い。
「…ここは……?…ッ!」
――ミユ!ミユはどこだ!?さっきまで一緒に居たはずだ!
俺は勢いよく起きて周りにミユが居ないか探す。
「ミユ!」
俺はうつ伏せになっているミユを見つけた。俺は、ミユの体を持ち上げて怪我が無いか確認する。
俺はその時点で可笑しい部分があることに気が付いた。今倒れている少女は確かにミユだった。だが、先程まで一緒にいたミユと着ている服が違う。それに腹部にあった傷も血も消えていた。
今気が付いたが、俺とミユのの他にも男1人、女2計3人いた。そして、倒れている3人とミユの服装が同じだった。
「うぅん…此処は…?」
その瞬間、俺の呼吸が止まりそうになった。俺は気が付いたらミユの事を抱き締めていた。
「きゃあ!」
目の前で死んでしまった愛する人がまた生きて俺の目の前に現れてしまって、自分の制御が出来ない。
その時俺は誰かに引っ張られ、胸ぐらを掴まれて殴られた。
「ぐっ!何しやがる…!」
なんの強化もしていない人間に殴られても平気だが、俺は殴られた事に腹が立った。
「美結から離れやがれ!」
「美結大丈夫?」
さっきまで倒れていた男が俺の事を殴り、女がミユの安全を確かめている。そして、男もミユに寄り添う。
「テメェ!気安くミユの事を触んじゃねぇ!」
俺は一歩前に出て、怒鳴る。
「美結。あの男、知り合い?」
女がミユに問いかける。
「ううん。知らない…」
――何……?じゃあこの娘はミユじゃない?いや、そんなはずは無い。俺はミユと数百年は一緒に居たんだぞ?見間違うはずが無い。まさか――
俺はミユに近づく。
「おい!何をするつもりだ!」
「黙れ」
俺は睨んで男の動きを止める。
「じっとしてろよ」
俺は座っているミユの額に手を当てる。そして、俺は目を瞑る。
――『記憶解明』
約3分後。俺は目を開けた。
「やはりか」
ミユの記憶には産まれてから今まで約17年分の記憶しかない。その中にはもちろん俺の事なんて一欠けらも無い。だが、それは今世の記憶。もし、ミユが転生していれば記憶は失われている。
転生にも二種類ある。一つは生きている間に転生する『生前転生』。これは生きている間に何らかの影響で強制的に転生される事。転生されても記憶などはそのまま。もう一つは死んだ後の『死後転生』。自分が死んだ後に転生するものである。これは転生した後だと記憶が全くない。しかし、転生したとしても魂は同じなので記憶を取り戻す事がある。記憶を取り戻すには前世で強い印象だった物、言葉をもう1度見せたり聞かせたりすると記憶を取り戻す事がある。
――ふぅ。あれを言うしかないか……。まさか二度もいうことになるとは……。
「ミユ」
「は、はい…」
「俺はミユのものになる。だから、ミユも俺のものになってくれ」
「リーヴァ……嬉しい。……あれ?なんで私……?」
――よし!ビンゴ!
俺は薄らと笑みを浮かべた。
「おい!」
男は敵意剥き出しで話しかけてきた。
「……なんだよ」
「美結に何をしやがった!」
「何って……2回目のプロポーズだが?」
「ふざけんな!お前が美結にプロポーズしていい訳ないだろ!美結に迷惑をかけるな!」
「たかが数年しか知り合ってない小僧がミユのことを知ったふうに口を聞くな」
「はっ!お前なんて今出会ったばかりだろ?」
「残念。数百年間ずっと一緒にいた」
「はぁ?人間がそこまで生きていられ――」
「――勇者様。召喚に応じていただきありがとうございます」
男の言葉を遮ったのは重量感のある錆びた扉から入ってきた年配の男性だった。
「そんな所でお話するのも何ですし召喚の間からでて綺麗なところで説明致しましょう」
俺達は、案内してくれている男性に着いていく。
「ここでございます」
案内された場所は随分と広い部屋だった。奥には更に高くなっている。そして真ん中には豪華で真っ赤な椅子があった。その椅子には威厳のある老人が座っていた。そして、その周りには騎士や大臣と思われる人物が俺達を品定めするような視線を送ってくる。
「此度は召喚の応じてくれた事、感謝する」
「なんか、上から目線だな」
男の言葉が聞こえた大臣がざわつき始める。
「なっ!王の御前で……」
「不敬罪にあたるぞ…!」
俺は、はぁ。と一回ため息を吐き、跪いた。
「申し訳ありません。王よ。この者は王、などと言う存在と全く関わりなく生きてきたと思われます。何卒、ご容赦を」
俺が王に向かってそう話したら大臣のざわつきも収まった。
「うむ。それでは話を進めようか。まず儂はゴルドン・ログ二ザードだ。そなた達はなんという?」
「はっ。私はリーヴァ・フィルフォードで御座います」
俺の名前を聞いて、大臣の中で騒ぎが起きた。が、俺は気にせず自己紹介した後にミユ達にも目で自己紹介するように促した。
「お、俺は大泉大介です」
俺に敵対心を持っている男だ。
「天鳥美結です」
ミユは前世と変わらず綺麗な黒髪である。名前が少し変わっていることに少し腹が立ったが俺は平然を保つように心掛けた。
「私は渡辺春香です」
落ち着いた雰囲気醸し出している少女である。
「わ、私は泉本優里です」
大介同様、緊張した茶髪の少女である。
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