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嫌いな主  作者: 小田桐
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嫌いな日々


 静寂や沈黙は俺にとって心地良いはずだったのに夕月と同じ部屋に居るときの沈黙は苦痛だった。言葉を交わすこともなく同じ部屋でお互いに自分の机に向き合って勉強をしている。そして、それが俺たちの日常だった。夕月と出会った半年間は。


「いやな、思い出ですね・・・・・」

 あぁ、全くだ。



 令嬢という者は無駄だと思えるほどの習い事をしているイメージがあった。茶道や華道に始まり、社交ダンス、そしてテニスなどのスポーツ。最後に身を守るための護身術。夕月は俺のイメージ通りにいろいろな習い事をしていた。

 こんなことばっかりやってると友達を作る暇がないだろうと思ってしまう。だけど、京司さんに聞いたらこれらは全て夕月が自分の意志で習ってるらしい。

「芦屋くん、その本おもしろいですか?」

 田中さんに本を借りて読むことが多かった。もともと自分自身読書する習慣がなかったが暇な時間をつぶすのには読書が最適だったのだ。

「ええ、読み始めると止まらなくなりますね」

 夕月が教室で学んでる間、運転手の田中さんとカフェでコーヒーを飲むのが習慣になっていた。田中さんは元々タクシーの運転手をしていたみたいで、前任の水鏡家の専属ドライバーが田中さんを推薦してここに勤めることになったらしい。前任のドライバーさんはもともとはタクシー会社の先輩だったとこの前、話を聞いた。

「田中さんって結構読書家なんですね」

「もともと、そんなに本を読むほうじゃなかったんだけど、待ち時間が長いからね。いつのまにか読書が趣味みたいなモノになったんだよ」

 確かにそうだろうと思う。夕月につきあってるだけでもこんなに待ち時間が多いんだ、これが社長につきあって職場や取引先を回るなら暇な時間がたくさんあるに違いない。

「さて、そろそろ夕月さんが戻ってくる時間ですね」

「ええ、車を暖めて待ってますので」

 田中さんがそう言って車の方に戻った。夕月が戻ったら田中さんの携帯に電話して玄関までつけてもらう、これがいつものやり方だった。


 基本的に車の中は沈黙だった。BGMとしてラジオが流れている、だけど会話はほとんどなかった。

「夕月さん、今日はどうでした?」

「いつもどおりです」

「お腹すいてませんか?」

「いえ、別に」

「疲れてませんか?」

「疲れてます」

 こんな感じ。だから、必要以外は何も言わないようにしている。話せば話すほど疲れるからだ。

 習い事をしてる教室が近くにあるときは別にかまわない。だけど、水泳を習ってるプールと護身術を習ってる道場は車で1時間かかる場所にあるのでその2つの時の移動は苦痛だった。


 屋敷に戻ったら、食事の時間。田中さんは夕月を送り届けるとそのまま帰ってしまう。だけど、俺はそう言うわけにはいかなかった。俺の住んでる部屋は夕月の屋敷の中にあるのだから。

「いただきます」

「いただきます」

 篠塚さんが作ってくれた料理を二人して食べる。もちろん、会話はほとんどない。夕月が早く帰れるときは家族がそろって食事をするが、帰りが遅いときは夕月を二人で食べることになる。正直、どんなに美味しいモノを食べても美味しくは感じない。

 京司さんや社長がいると、夕月は二人と会話もするし、二人は俺にも話を振ってくれるから会話がなりたつ。この時は夕月と会話をして楽しい食事をしたいとは考えずに二人だけの食事の時間がなくなればいいとずっと考えていた。


 食事が住んだら、風呂に入ったりテレビを見たりする。この時間はまだ他の二人がいるから心の平穏が保たれるが勉強をする時間は部屋に籠もることになる。夕月は学生の本分として勉強をする、そして俺は大学受験のために勉強をしている。部屋でふたりきりで。

 まぁ、お互いに自分の世界に入ってるから苦痛ではないが、それでも居心地は悪い。いっそのこと自分の部屋に戻って勉強したいぐらいだ。

 たまにどちらかが勉強をやめてテレビを見たり本を読んだりすることがあるが、やっぱり会話があまりない。こんな日々が2年続くと思うと憂鬱だった。


2人が仲の悪かった時のことを書いてみました。2人が仲が時期を書いてる方が楽しいです。

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