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嫌いな主  作者: 小田桐
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はじめての料理


 刃は切れ味と大きさは比例しなかった。小さなナイフが俺の指を切る、中指に感じる痛みに思わず顔をしかめてしまう。

「いてっ」

 思わず口から漏れる言葉、沈黙を破るのには十分だった。

「痛そうね」

 夕月が怪しい笑みを見せた。苦痛にゆがむ俺を掴んだ夕月は華奢な体からは想像も出来ないほどの力だった。

 そして夕月は美味しそうに俺の血をすする。俺の苦痛や痛みを味わうように・・・・。

「やめて」

 俺が言った。夕月がクスクス笑うように俺を離した。そして、俺を傷つけたナイフを握った。恐怖に震える俺を夕月が見下ろしていた。


「って、変な回想しないでくださいよ・・・・・」

 現実に戻された。夕月に料理を教わりだしのは水鏡家に来て半年たった頃だった。



「理央、無理しない方が良いぞ」

「いや、覚えたいんです」

「兄さん、大丈夫よ。私がちゃんと教えてるから」

 夕月から料理を習ってるところだった。水鏡家に夕月に仕えてると言っても家事的なことは今までやったことがなく、夕月のほうが得意だったのだ。

「今まで包丁とか握ったことあるの?」

「小さい頃学校でやったぐらいかな」

「自分でご飯を作ったことは?」

「カップラーメンやトーストを焼くぐらいかな」

「野菜の皮とか向ける?」

「えーと、皮むき器使えば」

「リンゴとか皮をむいたことないの?」

「母親や弟がやってくれたかな」

 って感じの俺だった。料理を覚えようと思ったきっかけは朝食だった。夕食は家政婦の篠塚さんが用意してくれているが朝は夕月が早起きして人数分作っていた。俺は夕月が早起きしてご飯を作ってる間、布団の中で寝ていたのだが。

「包丁の握り方とかぶきっちょで怖いわ」

 夕月が言った。俺も自分で怖いと思ってるよ。

「心配するな、薬の用意は出来てるから」

 京司さんが居間から響く声で言う、京司さんと社長は居間でのんびりくつろいでいた。

「大丈夫ですよ」

 俺も大きな声で言い返す。

「芦屋くん。料理を覚えるのは良いことだと思うが、怪我だけはしないでくれよ」

「はい、わかってます」

 絶対に意地でも料理を覚えてやろうと心に決めた。


「とりあえず、簡単な料理からおぼえましょう」

 俺に料理を教えるのに悪戦苦闘してる夕月が言った。夕月に人参を渡されそれを細く切るように言われる。

「わたしが見本を見せるね」

 見事だった。料理が出来る家庭的な女の子に憧れるというが、俺も例外ではなかったらしい。料理を作ってる夕月にほんの少しだけ憧れてしまった。

「リオくん、やってみて」

 言われたように包丁を握って人参を切ってみた。夕月と違ってなんか危ない気がする。

「指を少し丸めるように。猫の手みたくね」

 そう言われて想像したのが招き猫だった。刃の部分を左指の第2間接ぐらいに当てて人参を切る。

「にゃんにゃん」

「リオくん。鳴き真似はしなくていいから・・・」

 危なっかしく料理をしている俺たちを心配になってか面白がってか京司さんが台所まで様子を見に来ていた。そんな京司さんに思いっきり笑われてしまった俺が居た。


「京司さんは料理できるんですか?」

「おまえよりはな」

 そう言って京司さんはまな板の上に乗っていたタマネギを器用な手つきで細かく切った。夕月の方が上手だったが京司さんもそこそこ料理が出来るらしい。

「まぁ、別に男は料理できなくてもかまわないんじゃない?料理が得意な可愛い彼女でも見つければ」

「その彼女がいないから料理を覚えるんですよ」

「ユヅに友達でも紹介してもらうんだな」

 そう言うと京司さんは椅子に腰をかけた。どうやら居間に戻らず俺たちの料理を見学していくつもりらしい。それと中学生の友達を紹介してもらっても家に連れ込んで料理を作ってもらうわけにはいかないでしょ?しかも、ここは俺の家じゃないし。

「リオくん、次は兄さんみたくタマネギ切ってみてね」

 えーと、京司さんは指を曲げて包丁を早く動かしてタマネギを切っていたな。俺も同じように指を曲げてゆっくりだが切ってみる。

「そうそう、その調子」

 俺もやればできるじゃん。夕月が切るほど細かくはなっていないが初めてにしてはそこそこ上手いと自分で思う。

 調子に乗ったのがいけなかったのかもしれない。徐々にスピードを上げてタマネギを切っていたが途中で指に鈍痛を感じた。

「いてっ」

 手元を見ると指先が血で滲んできていた。

「ほら、調子に乗るから」

 タマネギの汁が指にしみて余計に痛かった。少し涙目になったのは痛みだけのせいではないだろう、きっと。

「そんなの舐めてたら治るわよ」

 夕月は俺の指を見て、そしてペロリと舌をだし舐めた。痛みは治まった気がするが何かくすぐったい、そしてニヤニヤと見ている京司さんの視線の方が痛かった。

「っきゃ」

 何かに気づいた夕月は乱暴に俺の手を投げる。俺と夕月は言葉に詰まった。



 その日、俺たちが作ったのは卵焼きだった。細かく切った野菜を具として溶かした卵に入れてフライパンで焼くだけの単純な料理。でも、当時の俺にとっては大変な一品だった。

 そして、できあがった料理を酒のつまみとしてみんなで食べた。当時、俺は未成年だったけど、京司さんに勧められビールを飲んだ。初めてという訳じゃなかったが久々のアルコールは美味しかったのを覚えてる。

 料理を覚えたいと思ったのは夕月と一緒に朝食を作ろうと思ったから、正直、あの時はまだ夕月と話すことも少なく出来るだけ仲良くなろうと思っていた。それに仕事と接してるのにそれらしいことを夕月にしてあげることも出来ていなかったし。でも、今思えば簡単なことだったんだと思う、でもその簡単なことが出来るまで半年ぐらいかかっていた。

 嫌いだった日々を取りもどそうと思い、出来るだけ夕月と仲良くなりたかったのだ。

出だしの部分はお遊びですw 毎回こういうくだらないことを書いていきたいです。

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