理央と真央と夕月
真央は俺の自慢の弟だった。勉強は出来るし誰にだって優しい弟は近所の人たちからも好かれている。別に俺が近所の評判が悪いわけじゃないけどね。
「兄さんいいの?」
親から大学に行かせる学費は1人分しか出せないと言われたときに俺は弟に譲ることにした。俺の成績も悪くはなかったが、名門高校に奨学生として通ってる弟と普通の公立高校の通ってる俺では同じ上位の成績でも学力のレベルは違っているはずだ。
「別に気にするな。俺だって2.3年働いたら自力で大学にでもいくさ」
「ありがとうね、兄さん」
俺たちは仲の良い兄弟で良かったと思う。そして真央が俺の弟として生まれてきてくれた運命に感謝だってしたいと思う。
「真央さんのことを大切にしているんですね。うらやましいです・・・」
そりゃ、そうさ。真央が俺にとって自慢の弟であるように、真央にだって俺のことを自慢の兄だと思って欲しいからね。
「理央も料理上手くなったな」
「そりゃ、毎朝作ってたら上手になりますよ。それに教えてくれる先生が優秀ですから」
俺はそう答えて夕月にウィンクする。夕月も少し照れながら俺の目を見ていた。5月の大型連休、社長に京司さん、夕月に俺で朝食を食べていた。
「最初、俺とおまえの皿に真っ黒な鮭がのってたときはなにかの嫌がらせだと思ったぞ」
「最初だったんだから仕方がないじゃないですか」
こうやって穏やかな日常をずっと望んできた。色々とトラブルは絶えないが今の生活に満足している。
「さて、後片付けが済んだら出かけてきますね。明日帰りますね」
今日は弟と待ち合わせをしていた。久々に弟と遊んでから実家に帰る予定になっている、親の顔を見るたびに色々とお節介なことを言われるがまだ未成年の身、それは仕方がない。
「俺も出かけるから、駅までなら乗せていってやるぞ」
「ありがとうございます。すぐに準備してきますね」
部屋に戻ってから充電器にささっていた携帯電話をポケットに入れて玄関に向かった。今日は気持ちの良い朝だった。
「さてついたぞ。おまえら降りろ」
っえ?おまえらって夕月も?混乱してる俺をよそに夕月も俺と一緒に車から降りた。夕月も一緒に車に乗ったときはてっきり京司さんと夕月でどこかに行くモノだと思っていたのだ。
「リオくん。早く行こ」
おめかしをして可愛くなってる夕月が俺を急かす。とりあえず、俺はどうして夕月が一緒にいるか聞くことにした。
「昨日、学校で真央さんに会ったの。そしたらこの前のケーキのお礼をしたいから一緒に遊ばないって誘われちゃったの」
真央は誕生日のプレゼントに夕月から手作りのケーキをもらっていた。弟は義理堅いところがあるけど、なにも俺が居るときに誘わなくたっていいじゃないか。仕事抜きでゆっくりと遊びたかったのに。それにしても夕月が初対面の真央に懐き、遊びに行くのに嬉しそうについて行くなんて珍しいと思った。
「リオくんの弟さんだからかな、なんか私のもう1人のお兄ちゃんって感じがするの」
きっと俺たちに妹が居たら真央は夕月に接してるようにかわいがるだろうなと思う。真央は近所の子供たちからも慕われているから。
「兄貴、夕月ちゃん」
夕月とファーストフードに入ってジュースを飲んでると真央がやってきた。
「夕月ちゃん、可愛い服着てるね。似合ってるよ」
「ありがとう、真央さんに言われると嬉しいです」
ん〜、もしかして俺って居ない方が良かったのかな。年齢的に真央と夕月が2人なら立派なデートに見えるだろう。
「さて、これからどこ行こうか?久々に兄貴、勝負する?」
「ん〜、今日はやめておこう」
そして俺たちは昼の町にとけ込んでいった。
「今日は楽しかった」
夕月が満足そうに言った。俺たちはあれからいろんな所に行った、3人でボーリングをしたりダーツをして遊んだ、ゲームセンターにも行った。お腹がすいたら甘い物も食べに行ったし、映画館でポップコーンも食べた。これ以上遊び尽くせないほど遊んだと思う。
夕月は俺と真央の手を握って3人で歩くのが好きらしい、こういうところが子供みたいだった。きっと俺と真央に妹がいたらこうやって3人で出かけていたんだと思う。
「夕月ちゃん、帰りはどうするの?」
「えーとね、兄さんが迎えに着てくれることになってるの」
夕月はそう言って携帯電話で兄の京司さんに電話をした。俺はトイレに行くと言って真央と夕月を残し、こっそりと喫煙所でタバコを吸ってくる。タバコを吸ってることは真央にも内緒にしていることだから。
「もう少しで兄さんが着てくれるって」
戻ったら夕月の電話は終わっていた。それなら京司さんが来るまでどこかで時間をつぶそうと提案する。
「なら、もう一度モグラたたきしたい」
夕月がそう言ったので希望を叶えるためにゲームセンターに行った。夕月はモグラたたきが上手だった、そりゃこう見えても運動神経も悪くないし喧嘩したら俺や真央よりも強いだろうしね。
「今度こそ100点を」
夕月の目に炎が見えるのは気のせいだろうか。結局俺たちは京司さんが来るまでゲームセンターで時間をつぶしていた。
余談になるが真央は京司さんともうち解けて仲良くなっていた。
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