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嫌いな主  作者: 小田桐
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休日の過ごし方


 慌てずにゆっくりと俺は上着を脱いだ。露わになった上半身を鏡に映してみる、筋肉がさほど付いてはいないが、余計な贅肉も付いてはいない。そんな自分の体に満足して下も脱いだ。

 シャワー室から水が流れる音が聞こえている、きっと体を洗っているところだろう。俺は裸になってノックもせずに入った。

「はやいよ、もう」

「待ちきれなくてね」

「リオくんってエッチね」

 彼女は少し拗ねたような表情を見せる、それが可愛らしい。だから、俺はゆっくりと抱きしめた。服の上からだと小さな胸だと思っていたが意外とボリュームがあった。

「キスしていい?」

 答えを聞かずに俺は口づけをした。甘い味がした。


「私がいないときにそんなことしてたんですか!!」

 俺だって正常な男なんだ、休みの日に女の子を抱いたりだってするさ。



「理央、今夜暇だろ?合コン行かない?」

 京司さんの誘いはいつも突然だった。そして、誘われるときはいつも予定が入ってない日なのだ。

「別にいいですけど、私なんて誘ってもいいんですか?きっと京司さんと同じ大学目当てでくるんじゃないですか?」

「よく言うよ。それでもいつもお持ち帰りしてるじゃないか?」

「やめてくださいよ。夕月さんに聞こえるじゃないですか」

「聞かれてまずいことでもやってるの?」

 意地悪なことを言う人だ。

「わかりました。着ていく服がないので貸してくださいよ」

 俺と京司さんの体格って似ていた。だから、そう言うときはいつも京司さんの服を借りていくことにしている。その方が女の子受けがいいのだ。

「すでに用意してあるよ。部屋から勝手に持って良いぞ、一時間で準備してこい」

「一時間もいりませんよ。先に行ってちょっと買い物させてもらっていいですか?」

「わかった、車だすから10分後に玄関な」

 俺はいつものように京司さんの部屋から服を拝借して出かける準備をした、京司さんの話術が上手なのでそれに合わせるように話せば俺にも付いてくる女の子が多かったのだ。


「今日のメンバーは?」

「2vs2だよ。2人とも可愛い子さ」

「それって合コンって言わないんじゃ・・・」

 どうやらデートに誘った女の子が1人じゃイヤってことで友達を誘ったらしい。俺を誘ったってことは両手に花で遊ぶつもりはなく夜の町にとけ込むことが目的らしい。まぁ、そう言うのは俺も嫌いじゃないんだけど。

 俺はタバコに火をつけた。他の人たちの前では吸わないが京司さんと一緒に遊ぶときだけは吸っている、部屋で服を借りたときについでに京司さんのコレクションのジッポを一つ拝借してきたのだ。絶対にこういう姿を夕月には見せることは出来ないと思ってしまう。

「で、何時にどこ集合なの?」

 京司さんは遊びに行くときに敬語を使われることを嫌がる。特に女の子がらみだと余計にだ。まぁ、確かにそんな言葉を使われると周りがひくだろう。だから俺は休日の時だけは京司さんとため口で会話をしていた。

「駅前で彼女たちを拾ってから飯を食いに行くことになってる。これ使って良いぞ」

 そう言って一枚のチケットを渡された。ちょっと豪華なホテルのチケットだ、つまりここに行けってことらしい。俺も京司さんと同じホテルを使いたくないから素直にそれに従ってる。ホテルで会ったらお互いに気まずいしね。

「さて、あそこにいる子たちだ。理央、拾ってきて」

 俺は女の子たちに声をかけ車に乗せた。


「リオくんって19なんだ。私と一緒だね」

「そうなんだ、ユカちゃんって可愛いから年下だと思った」

 隣に座ってる女の子と仲良くなる。夕月と同じぐらい京司さんとも長いつきあいだから何を求めているかがわかってしまう。それって嬉しいことなのか悲しいことなのかはわからないが。

「リオくんって大学生してるの?」

「違うよ、社会人だよ。まぁ、安月給だけどね」

 女の子との会話の中で京司さんに合図を送った。自分のことを正直に話せば、相手のことを気に入った合図、逆に気に入らない子の場合は大学生と嘘をつくと。事前に決めてあるのだ。

 気に入った子であれば、仲良くなって次に会うときに嘘の情報を与えていたら不信感を抱かせるし、つじつまが合わなくなってしまう。もう、二度と会おうと思わない相手なら嘘をついたところで二度と会わないのだ、特に問題はないからだ。

「へぇ、すごいね」

「別にすごくないよ。たまたま働くのが早かっただけ」

 京司さんも同じように隣の子と仲良く話してる。つまり1vs1を2つにしてることだ、ホントは下心丸出しでイヤなんだけどね。

 まぁ、実際に下心はあるんだけどね・・・・・

「ユカちゃんのそれ美味しそうだね。食べさせて」

 ちょっと甘えた仕草をしてみる、この子は甘えるのが上手だけど甘えられるのも嫌いじゃないらしい。俺はこの子の心を掴むために一気にたたみかけた。

「この後、暇?」

「うん」

「なら、食べたら2人でどっかいかない?」

「ん〜」

「イヤだった?」

「イヤじゃないよ」

 そしてこの後のデートの約束を取り付ける。京司さんも上手くやったらしい、京司さんの隣に座っている女の子は綺麗系の子だけど、個人的にはユカちゃんのほうが俺の好みだった。

「さて、そろそろ解散しない?」

 みんなが食べ終わるのを確認してから京司さんが言った。俺は京司さんに目で合図をしてユカちゃんを連れて先に店を出た。



 ユカちゃんと別れて携帯の時計を見る、22:16と表示されていた。今日はアルコールを飲んでいたので屋敷に戻るのは躊躇われる、俺はまだ未成年なのだから。携帯を取り出して京司さんにメールを打った。

”今日は実家の方に帰ります。昼前にはそっちに帰ります”

 そして実家に電話を入れた。京司さんからの返信メールが来ないって事はまだお取り込み中か運転中にどっちかだ、今日の京司さんは酒を飲んでいなかったからもしかしたら家に帰るのかもしれない。


 翌日、夕月に何をしてきたの?と聞かれたがただ遊んできたとしか答えなかった。こんな事してると知ったら夕月は俺をどう思うだろうか?


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