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第5話 現状分析

ほどなくして、シャックスが戻ってきた。


声をかけられるまで気づかないほど、見事な隠密であった。



「どうやら洞窟で野営しているのは間違いないようだわ。


洞窟から明かりが漏れていたし、外に見張りが1人、立っていたから。


洞窟の中には、少なくとも4人はいるようだったわ。


うーん…聴覚のステイタスがもう少し高ければ、もっと正確にわかったのに悔しいわ」



この暗闇の中、洞窟へ行って帰ってくるだけでも凄いことだ。


そう感心しているハルファスだったが、それは口に出さず、更に尋ねる。



「他になにか気づいたことはあるかね?」


「そうね…。


見張りに立ってた男は、商人のように見えたわ。


あとは、『日が出る前に出発しなければ』っていう言葉が聞こえたかな」


「なるほど。シャックス、どうもありがとう」


「お礼を言われるほどの成果じゃないわ」


「で、ハル。これからどうする?」



サブノックが試すような目をして尋ねる。



「まずは現状を分析しておくとしよう。


おそらく盗賊団と思われる集団が野営をしている。


まともに戦った場合、多勢に無勢だ。戦力的には我々が不利であろう。」


「分析の根拠は?」


「まずは根拠の前提となる事実を3点挙げよう。


第1に、彼らは商人の格好をしている。


まず、まともな商人であれば、このようなところで野営をする理由がない。


であるならば、商人でない者が商人のフリをしようとしていることになる。


第2に、彼らは夜が明ける前に山を下りようとしている。


これは、山から街道に出るところを見られたくないからであると考えられる。


この2点の事実からわかることは、重要である。


彼らの計画通りにいけば、昼には普通の隊商が街道を移動しているようにしか見えないことである。


第3に、昨日の襲撃事件で王国の重要人物が攫われている。


我が王国が誇る諜報部の捜索が国境近くまで及んでいるにもかかわらず、まだ発見に至っていない。


拉致した人間を抱えたまま、諜報部よりも先に国境を突破したとは考えられない。


いまだ発見できない理由として考えられるのは…


事件を起こした地点から王城の方向へ逃げたという可能性である。


襲撃者からすれば、王都守備隊の警護範囲の外に向かって逃げるのが通常の逃走経路であろう。


当然、追う側もそう考えるのが通常である。


その盲点をついて、警護範囲内に逃げたとすれば、まだ発見できていないという事実にも納得できる。


以上の3点から導き出されることは、このようになる。


襲撃および誘拐を行った者たちがいる。


彼らは、追跡者の盲点をつき、王都守備隊の警護範囲内であるこの山に一旦逃げ込む。


日が上がるのを待って、こっそりと山から街道に出る。


そして、商人のフリをして、日中堂々と街道を使って他国へ脱出する。


そんな一連の流れが見えてくるとは思わないかね。」



一呼吸置いて、ハルファスは更に言葉を続ける。



「ところで、サブノック。


君は、越境盗賊団という者たちがいることは知っているかね?」


「ああ、もちろん聞いているぜ。


帝国にアジトを構えているくせに、国境付近で王国の隊商ばかり狙う盗賊団だろ。


襲撃してすぐに帝国へ逃げちまうから、王国守備隊としても手をこまねいている連中だ」


「そう、その盗賊団だ。


今回の襲撃も、その越境盗賊団の仕業であると私は考えている。


なぜなら、彼らの行動で一番特徴的な部分は、国境を越えて逃げようとしている点である。


かの盗賊団以外に、わざわざ国境を越えて仕事をする集団の話は聞いたことがない。


更に考察を重ねると、彼らは盗賊団としては大変奇妙な集団である。


彼らは、帝国国内では決して事件を起こさない。


そして、今回のように財産ではなく人物を攫うことは大変面倒であり、リスクが高い。


身代金目的だとしても、死体を隠してしまえば、生きていると嘘をつくだけで目的は遂げられる。


しかし、彼らはそのリスクを犯し、面倒を乗り越えても、生きたまま攫おうとしている。


これらから導き出されることは、彼らが帝国の為政者と密接なつながりをもっているということだ。


そう考えれば、盗賊団としての彼らの奇妙な行動にも説明がつく」



サブノックは、学生時代から不思議だと感じた現象があると、ハルファスに分析をさせていた。


ハルファスの謎解きじみた精密な分析を聞くのが、好きだったからである。


しかし、今日に限ってはそれどころではなかった。


目の前の現象が、想像以上の大事であることに気づいたからである。


サブノックは、ハルファスの説明を微塵も疑っていない。


なぜなら、これまでハルファスの分析が外れたことはないのである。



同様に、ハルファスの力を知っているシャックスも慌てた。


今、目の前で国家間の外交関係を揺るがす大事件が起きていると知ったからである。

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