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第13話 ザイード砦

サイオン砦から国境を挟み、向かい合うように建っているザイード砦。


このザイード砦には、普段から1万の兵が常駐している。


が、現在は王都守備隊5千兵と各部署からの応援が訪れ、かつてない活気に溢れていた。



士気は高まる一方であるが、手を出せない状況に変わりはなかった。


砦を任されているルンデール将軍は、血気に逸った兵士の暴走を抑えることに必死だった。



ルンデール将軍は、王国の兵士たちから絶大な支持を得ている。


歴戦の勇者であり、優秀な将校ということもある。


それに加えて、王国でも数少ない「戦士」の上位職である「魔法剣士」ということも理由の1つである。


しかし、かのルンデール将軍をもってしても、現在の状況を動かすことはできずにいた。


軍議の席でも、好戦的な意見ばかりが飛びかい、この日も実効的な意見は現れていなかった。



ため息をつきながら、執務室に戻ったルンデールは、ふと窓の外から見える練兵場に目をやった。



「なにやら、面白いことをしている者たちがおるな」



もともと武人であるルンデールである。


彼は、武の才をもつ若者をこよなく可愛がっていた。


そのため、ザイード砦では、若くとも才ある者が上に立つという気風ができていた。


むしろ、ルンデールはそのような気風が育つような人事を率先して行ってきた。



練兵場では、ハルファスとサブノックが、召還したゴーレム20体づつを操り模擬戦を行っていた。


互いに正面に10体、右翼・左翼に5体を配置する陣形をとっていた。



先に動いたのはサブノックの方であった。


20体すべてを前進させ、正面から当たっていった。


この動きに対してハルファスは、一気に20体を正面に集める。


その際、横4体縦5体の陣形を取らせると、そのまま中央突破を図る。


サブノックの正面部隊は横5体縦2体の陣形をとっていたが、この中央を一気に突破される。


この中央突破により、残存兵力はハルファスが16体、サブノックが12体となる。



ハルファスの操るゴーレム隊は、中央突破を成功させると、そのまま転進。


サブノックのゴーレム隊の左翼に対して、後ろから16体で総攻撃をかけた。



しかし、サブノックもぼんやりはしていない。


ハルファスのゴーレム隊が転進した瞬間、自陣右翼の7体全てを転進。


自陣左翼を攻撃してくるハルファス隊の更に後ろへ突撃し、挟撃を試みる。


サブノックのゴーレム隊の左翼は、16体の総攻撃を防ぎきれず、5体が全滅する。


しかし、左翼が壊滅すると同時に、相手の後衛を大きく削ぐことに成功する。


そして両隊は、そのまま乱戦へと突入した。


結果としては、サブノックのゴーレム隊が全滅。


ハルファスのゴーレム隊は5体残った。



「参った!


ううん、ここまで差がつくとはな。


負けるにしても、せめて3体以下に削りたかったな」


「いやいや、そんなことはない。


左翼が襲われると察知して、残り全軍で後ろをとった指揮は見事であったぞ」



お互いの検討を称えながら砦に戻っていくと、入り口でルンデールの姿が目に入り、2人同時に膝をつく。



「楽にするがいい、若者たちよ。


大変おもしろいものを見せてもらった。


お前がサブノック百人長か。


お前の武勇は、このザイードにも届いておるぞ。


武勇だけでなく、指揮も見事であった。


早くお前と馬を並べて戦場に立ちたいものよ」


「ルンデール将軍のお褒めに預かり、僥倖の限りであります」



サブノックは、そう言って更に頭を垂れる。



「ところで、お前は格好からすると魔法士のようだが、稀にみる見事な指揮であった。


お前も魔法剣士を目指しておるのか?


であれば私の弟子にしたいところだが」


「名将と名高いルンデール閣下よりのお褒めの言葉、恐悦至極にございます。


しかしながら、私は古文書を解読することを生業としております。


剣技にいたってはからっきしダメです。


魔法剣士を目指すなど、恐れ多いことでございます」


「なんと!


あれだけの指揮をとれる男が、王城の書物庫に埋もれていたか!


かっかっか!これは、おもしろい!


お前の名前は、なんという?」


「ハルファスにございます」


「うむ、良く覚えておこう」



そう言うとルンデールはマントを翻し、執務室へ戻っていった。



「面白いやつらをみつけたな、明日の軍議にあいつらも呼んでみよう」



新たな若い才を見出したルンデールは、頬を緩めるのであった。




翌日、軍議の場に呼び出された2人は緊張で顔が強張っていた。


1万5千という軍勢に関する軍議である。


到底、今の2人が立ち入れるような場ではなかった。



軍議の場には、2人よりも遥かに高位の将校が集まっていた。


ルンデール将軍

ザイード砦の5千人長が2名

ザイード砦の諜報士と魔術師

王都守備隊の5千人長


後から入ってきた2人に対して、この6名の視線が集まる。



「昨日、面白いやつらを見つけたので、今日の軍議に参加してもらうことにした」



端的なルンデールの言葉に、王都守備隊の5千人長は眉をひそめた。


が、ザイード組は慣れたもので、特になんとも思っていないようであった。


軍議は、帝国軍の動きを中心とした諜報士の報告から始まった。

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