第11話 練兵場
朝日が降り注ぐ練兵場に、ハルファスたち3人の姿があった。
わざわざ早朝から練兵場にいるのは、下賜されたアーティファクトを試すためである。
「おれは何も考えず剣を選んだんだけど、どんなアーティファクトなんだ?」
「うむ。それは魔力を付与された魔剣であるな。
製作者の名が刻印されているから、相当な名剣であろう。
『リンク』という名が刻まれているが、その名は様々な古文書に出てくる。
相当高位な魔道師であったのであろう」
「そいつは、凄いな。何か特別なコツとかいるのか?」
「いや、古文書には魔力を付与した旨のみ記載されていた。
詠唱などの特別な動作は必要なかろう」
「わかった!よしっ!いっちょ試し斬りといきますか!」
練兵場の魔石を作動させると、土から生成されたゴーレムが3体出現する。
気合の声をあげながら、ゴーレムに向かって走り出したサブノックは、魔剣を一閃させる。
「うわ、なんだこれ!軽く振っただけでゴーレムが真っ二つかよ」
勢いにのったサブノックは、残る2体も軽々と切り伏せる。
「こいつは、凄い!怖いくらいだ」
「凄いアーティファクトね!これなら私のマントも期待できそうね」
「うむ。シャックスのマントは、古文書に『不可視のマント』と記載されていたのだ。
魔法を扱えない者でも発動のキーワードを唱えれば効果が現れる。
いわゆる発声式魔法具と分類されているものだ。
このマントの場合、『インビジブル』という言葉がキーワードのようである。
発動するとマントを身に着けている者の姿が見えなくなるアーティファクトだと思われる。
効果時間に制限はないようだ。
効果を解除したいときは『アピアレンス』というキーワードを唱える仕組みのようである」
「へえ、まるで私の仕事のためにあるような道具ね。どれどれ」
突然、『インビジブル』という声を残し、2人の前からシャックスが消えた。
「ねえ、どうなってるの?私には何の変化もないわよ?」
「いや、シャックス!凄いぞ!どこにいるのか、全くわからん」
「ふむ。足跡は見えるし、足音は聞こえるようだな。そこは注意して使わねばなるまい」
『アピアレンス』という声とともに、2人の前に出現したシャックス。
だが、本人はアーティファクトの効果を実感できていない様子であった。
しかし、諜報士としてこれ以上ないアイテムである。
シャックスも、そのことは理解しているので、満足そうな顔をしていた。
「で、ハルのアーティファクトは…。っていうか、俺にはただの紙にしか見えないが?」
「うむ。古文書には、『千里眼の地図』という記載があったのだ。
この羊皮紙こそが、その『千里眼の地図』に違いないと思い選んだのだ。
これは、『マップ』というキーワードで発動する発声式魔法具のようだ。
効果としては、自分を中心とした付近の地形と生物が表示されるらしい。
拡大と縮小のキーワードに関する記述もみかけたのだが、それは今度試してみるとしよう」
『マップ』
ハルファスがキーワードを唱えると、羊皮紙に練兵場とその付近の地形が映し出された。
良く見ると、練兵場の中に赤い点が表示されており、古代魔法文字が記されていた。
「この文字は、なんて書いてあるのかしら?」
「これは、古代魔法王国で使われていた『3』という文字である。
赤い点が生物の地点をあらわし、文字で数量まで分かるようであるな」
「これはこれで凄いアーティファクトだし、ハルファス向きだな」
3人は、それぞれのアーティファクトの試運転に大満足であった。
これ以上は実験の必要もないので、意気揚々と朝食を食べに食堂へ向かう。
久しぶりに3人でとる食事の機会であった。
昔のように和気藹々と食事をしながら、3人はお互いの近況報告などをしていた。
するとそこへサブノックの部下が慌てて駆け込んできた。
「た、隊長!大変です!
帝国が鉄の国に攻め込みました!」