誕生日
「お兄ちゃん、これあげる」
目を逸らしながら絆が何かを手渡してきた。何だろうと受けとると、かわいげな包装紙に包まれた小さな箱だった。
「何これ」
「……プレゼント」
「え、なんで?」
「は?」
聞き返すと、今度は逆に僕が怪訝そうな目で見られてしまった。何かおかしいことを言っただろうか。
「本当にお兄ちゃんって馬鹿ね。今日はお兄ちゃんの誕生日でしょ?」
「あれ、そうだったっけ?」
「……ほんっとうにお兄ちゃんって馬鹿ね」
「僕が馬鹿だなんて分かりきってることじゃないか」
「そうね、今更言っても無駄だったわね。……もしかしたらとは思ってたけど、まさか本当に忘れてるなんて……」
絆は呆れたように溜め息を吐いた。かわいい顔が歪められてしまって残念だ、できれば笑顔でいてほしいのだが。
「それにしても、絆が僕に誕生日プレゼントをくれるなんて驚いたよ。ありがとうね」
「別にお礼なんていらないわよ」
「それでも、ありがとう」
「……」
さて、中身は何だろう。包装紙を丁寧に剥がして箱を開けようとしたその時、シグがぴょんと僕の膝の上に飛び乗ってきた。
「あーば、あば?」
「これはね、絆が僕にくれた誕生日プレゼントだよ。自分でも忘れてたけど、実は今日誕生日なんだ」
「あ、あばば!? あば……あばばー……」
「いきなり落ち込んでどうしたの、シグ?」
「あーば、あばばば、あば……」
「ん?」
「……プレゼントの用意してないから落ち込んでるんじゃないの、その子」
「そうなの?」
「あば……」
「ふうん。別に気にしなくていいのに」
こんな僕に優しくしてくれるなんて、シグも絆も良い子だなあ。僕にはもったいない。
「その気持ちだけで十分だよ、シグ。ありがとう」
「あば……あーば!」
「うおっ? ちょっとシグ、いきなり飛び付かないで。驚いたし痛かったし」
「あーばあば!」
「はいはい、いいこいいこ」
「あばー!」
いやあ、うちの子はかわいいなぁ。……おや、何だか親馬鹿みたいな台詞だな。ま、いいか。
僕らの日常は今日も平和だ。




