75,昔話
僕と妹と父と母。そんな昔話が始まるよー。
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あるところに兄妹がいた。つまりは僕と絆。
父と母は分け隔てなく僕らを育てていた。……いや、絆の方を少しだけ優遇していたかな? まあこれくらいはよくあることだよね。「お兄ちゃんなんだから我慢しなさい」ってさ。
ま、滅多に笑わない息子と明るくかわいい娘なら当然そうなるよね。
僕はそれを気にすることはなかった。どうでもよかったし。
でもある時、ひょんなことである秘密を知ったんだ。何がきっかけだったかな? たしか……ああ、そうそう。母親が知らない男と喧嘩していたのを見たんだ。母親の側には泣きそうな父親もいた。
まあ有り体に言ってしまえば、母親がその男と浮気をしたんだよ。で、こともあろうに子供まで作って産んでしまったんだ。
その浮気自体は出産前に分かって、一時は離婚寸前にまでなったみたいだけど、詳しくは知らない。僕が見たのは浮気相手が慰謝料のことでゴネたとかなんとか、そういうことらしかった。
で、もう分かったと思うけど、その浮気相手との子供は僕ら兄妹のうちの片方。これが僕らが半分しか血が繋がっていない理由。
最初はショックだった……気がする。うん、流石に何かしら思ったんじゃないかな? 何の動揺もなかったら我ながら気持ち悪い。
それでも、それに折り合いをつけてどうにか通常通りに日々を送っていた。知っていたらいけないことだって、何となく分かっていたから。
でもある時、絆が僕にある質問をしたんだ。「どうしてお兄ちゃんのお願いは叶えてくれないの?」ってさ。子供って凄いよね、ちゃんと親のことを見てるんだよ。
父と母は、周囲にこのことを隠そうとしていた。僕らを分け隔てなく育てて、さも僕らが本当の兄妹だっていう風に。
でもやっぱり精神は疲労していった。当然だよね、外でも家でも隠さなきゃいけないことがあるんだから。その内、僕への扱いは杜撰になっていった。
絆はそれに気がついたんだよ。はっきりとは分からなくても、何となく自分が優遇されていることに気がついた。
僕は絆の質問に対して、どう答えようか一瞬迷った。「お兄ちゃんだから」で通すか、本当のことを言うか。
……結局、僕は嘘を吐いた。「僕は拾われた子で、この家の子供じゃない」なんて中途半端な、ね。
どうしてなのかは分からない。知らせたくなかったけど、やっぱりどうでもよかったからなのかな。
絆はこの嘘を最初は半信半疑な様子で聞いていた。でも僕と絆の扱いの差が顕著になっていくにつれて、僕の嘘を信じていったらしい。直接絆から聞いたわけじゃないけど、たぶんそう。
で、僕が九歳、絆が七歳のとき。両親が死んだ。旅行に行く途中に、積もっていた雪で車がスリップした。両親は即死、一緒にいた絆は運良く大きな怪我もなく助かった。
僕はそもそも車に乗っていなかった。出発の朝に置いていかれたんだ。
その後、僕らは叔母さんのところに引き取られた。何故だかその時から僕は嫌われている。生前の両親の僕への態度が関係しているかもしれないけど、まあどうでもいいか。
それから、えっと、いつだったかな? たしか絆が反抗期に入ったくらい……十二歳? たぶん僕が十四歳だから……三年前か。それくらいの時に、何がきっかけだったのかは覚えていないけど、絆が本当のことを知ったんだ。
本当に、何で分かったんだろう? 両親もいないし、僕以外は知らないと思ってたんだけど。今でも謎なんだよね。
まあそれはともかくとして、絆はとてもショックを受けたらしい。
それで、僕に対して今まで騙してた怒りやら何やらが噴き出して、とても険悪な、そして気まずい状況になってしまったというわけだ。
今は大分改善したんだけどね。絆の中で多少は整理がついたんだろう。
それにしても、「自分は母親と浮気相手の子供だった」だなんて複雑な気持ちだっただろうね。僕には想像もできないけど。




