表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/78

75,昔話

 僕と妹と父と母。そんな昔話が始まるよー。




***




 あるところに兄妹がいた。つまりは僕と絆。

 父と母は分け隔てなく僕らを育てていた。……いや、絆の方を少しだけ優遇していたかな? まあこれくらいはよくあることだよね。「お兄ちゃんなんだから我慢しなさい」ってさ。

 ま、滅多に笑わない息子と明るくかわいい娘なら当然そうなるよね。

 僕はそれを気にすることはなかった。どうでもよかったし。


 でもある時、ひょんなことである秘密を知ったんだ。何がきっかけだったかな? たしか……ああ、そうそう。母親が知らない男と喧嘩していたのを見たんだ。母親の側には泣きそうな父親もいた。

 まあ有り体に言ってしまえば、母親がその男と浮気をしたんだよ。で、こともあろうに子供まで作って産んでしまったんだ。

 その浮気自体は出産前に分かって、一時は離婚寸前にまでなったみたいだけど、詳しくは知らない。僕が見たのは浮気相手が慰謝料のことでゴネたとかなんとか、そういうことらしかった。

 で、もう分かったと思うけど、その浮気相手との子供は僕ら兄妹のうちの片方。これが僕らが半分しか血が繋がっていない理由。

 最初はショックだった……気がする。うん、流石に何かしら思ったんじゃないかな? 何の動揺もなかったら我ながら気持ち悪い。


 それでも、それに折り合いをつけてどうにか通常通りに日々を送っていた。知っていたらいけないことだって、何となく分かっていたから。

 でもある時、絆が僕にある質問をしたんだ。「どうしてお兄ちゃんのお願いは叶えてくれないの?」ってさ。子供って凄いよね、ちゃんと親のことを見てるんだよ。


 父と母は、周囲にこのことを隠そうとしていた。僕らを分け隔てなく育てて、さも僕らが本当の兄妹だっていう風に。

 でもやっぱり精神は疲労していった。当然だよね、外でも家でも隠さなきゃいけないことがあるんだから。その内、僕への扱いは杜撰になっていった。


 絆はそれに気がついたんだよ。はっきりとは分からなくても、何となく自分が優遇されていることに気がついた。

 僕は絆の質問に対して、どう答えようか一瞬迷った。「お兄ちゃんだから」で通すか、本当のことを言うか。

 ……結局、僕は嘘を吐いた。「僕は拾われた子で、この家の子供じゃない」なんて中途半端な、ね。

 どうしてなのかは分からない。知らせたくなかったけど、やっぱりどうでもよかったからなのかな。

 絆はこの嘘を最初は半信半疑な様子で聞いていた。でも僕と絆の扱いの差が顕著になっていくにつれて、僕の嘘を信じていったらしい。直接絆から聞いたわけじゃないけど、たぶんそう。


 で、僕が九歳、絆が七歳のとき。両親が死んだ。旅行に行く途中に、積もっていた雪で車がスリップした。両親は即死、一緒にいた絆は運良く大きな怪我もなく助かった。

 僕はそもそも車に乗っていなかった。出発の朝に置いていかれたんだ。


 その後、僕らは叔母さんのところに引き取られた。何故だかその時から僕は嫌われている。生前の両親の僕への態度が関係しているかもしれないけど、まあどうでもいいか。

 それから、えっと、いつだったかな? たしか絆が反抗期に入ったくらい……十二歳? たぶん僕が十四歳だから……三年前か。それくらいの時に、何がきっかけだったのかは覚えていないけど、絆が本当のことを知ったんだ。

 本当に、何で分かったんだろう? 両親もいないし、僕以外は知らないと思ってたんだけど。今でも謎なんだよね。

 まあそれはともかくとして、絆はとてもショックを受けたらしい。

 それで、僕に対して今まで騙してた怒りやら何やらが噴き出して、とても険悪な、そして気まずい状況になってしまったというわけだ。

 今は大分改善したんだけどね。絆の中で多少は整理がついたんだろう。


 それにしても、「自分は母親と浮気相手の子供だった」だなんて複雑な気持ちだっただろうね。僕には想像もできないけど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ