73,面談
一月の終わり、今日は学校で面談がある。
「渡邊くん、保護者の方は?」
「いません」
「お仕事か何かですか?」
「そんな感じです、たぶん」
「たぶん……相変わらず適当ですね。……まさか、そもそも知らせていないとかじゃありませんよね?」
「嫌だな、先生ったら。そんなわけありませんよ」
「なんとなく胡散臭いのは気のせいでしょうか」
「気のせいですよ」
「……はあ、まったく。詳しいことは分かりませんが、貴方の家庭が複雑なのは知っています。何かあったら相談に乗りますから、お互いに歩み寄ったらどうですか?」
「今でも十分歩み寄ってますよ」
「なら、せめて高校生のうちは一緒に暮らしたらどうですか? まだ未成年ですし」
「歩み寄った結果が今の状態なんですけどね。あの人達は僕のことが嫌いなので、一緒に暮らすのは駄目です。ギスギスしている様子とか、妹に見せたくないんですよ。可哀想じゃないですか」
「……妹さんに優しいんですね」
「家族ですから。ほら、そんなことよりも進路について面談しましょうよ」
「……そうですね。えっと、渡邊君は就職希望でしたね。理由を聞いても?」
「大学に行くほどのお金がないので」
「お金なら奨学金とかがありますよ」
「それに、大学に行ってまで何かを学ぶ理由が感じられないので。そんなことをするくらいなら、さっさと就職してお金を稼いでちゃんと独り立ちしたいです」
「保護者の方も納得されていますか?」
「はい。年末に会ったときに話してますよ」
「ふむ……本人と家族が納得しているならいいですが。最後にもう一度確認しますけど、進学の意思はないんですね?」
「はい、全く」
「分かりました。成績もこのままなら無事に卒業できそうですから、この調子で頑張ってください。では、これで面談は終わりです。ありがとうございました」
「ありがとうございました。それでは、さようなら」
今日の夕飯はレトルトのカレーにしようと思いながら帰宅した。




