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66,説明

 とりあえず一段落ついたので、何があったのか話を聞くことにした。


「俺、お前から電話が来たときにもう一回召喚されたんだよ」

「うん」

「で、魔王を倒してくれってまた頼まれてな。最初は断ってたんだけど、土下座とか泣き落としとかされて、まあ引き受けることにしたんだ。つーかそうしないと帰れなさそうだったし」


 一種の脅迫か。たしかに帰れないのは困るよな。


「魔王城の近くまで転送されて、魔物とかから逃げながら、なんとか魔王城に辿り着いた」

「勇者なのに、逃げながら?」

「しかたねえだろ? 生き物を殺したことなんてないし、大体俺があんな鬼みたいな魔物に勝てるわけねえし」

「あー、鬼さんは僕も逃げるかな。今度はぱっくりと食べられちゃうかもしれないし」

「は?」

「いや、こっちの話」

「あーば……」


 夏休みにあったことを思い出す。今では良い思い出だ。


「で、魔王城に着いたんだけど、驚いたことに宇宙人がいた」

「うん、シグの仲間なんだって」

「らしいな。見た目がそっくりだからすぐに分かった」

「あばー」

「そして魔王を倒した、とかっこよく言いたいところだが違う。そもそもその魔王がいなかったんだ」

「え?」


 あれ? 魔王って……ああ、そっか。


「魔王っていうのはこの宇宙人たちの総称だから?」

「そゆこと」

「ふぅん。じゃあ皆殺しにしたらよくない?」

「いや、皆殺しはちょっと……」

「そんなんでよく勇者をやろうと思ったね」

「うぐっ……。べ、別に最初から戦う気はなかったよ。話し合いとかで解決できないかなって思って……」

「というかさ、宇宙人たちの王様を殺したらよかったんじゃないの? そうしたら一応魔王を殺したってことになるんじゃない」

「え、王様? そんなのがいるのか?」

「ん?」


 あれ、なんか話が噛み合わない。


「ドランくん、どういうこと?」


 ドランくんに訊いてみることにした。最初はシグに訊こうと思ったけど、ドランくんの方が詳しいだろうし。それに言葉が通じるし。


「……王は、サリヴァル様は死んだ」

「え、まさかシグが殺しちゃった?」

「いや、寿命だ。高齢だと言っただろう」

「そういえばそうだっけ。じゃあ王様という名のスケープゴートはいないのか」

「渡邊、その言い方はどうかと思うぞ」

「あばばー……」

 

 呆れられた。なんとなく懐かしいやり取りだ。


「で? その後は?」

「ああ。どうしようかと思っていた時にこいつ、シグと会ったんだ」

「あば!」

「それで、シグから宇宙人たちに侵略を止めるように言ってもらおうとしたんだ」

「ふむ。それで、上手くいった?」

「いや。俺は遠くからその場面を見ていただけだったんだけど、シグが説得しているときに突然周りの宇宙人たちが発光し始めたんだ」

「……」

「あば……」

「何事かと思っていると、いきなりシグも発光。んで、後は気が付いたら真っ白……ってわけ」


 ふむ。

 さっきからシグがドランくんを避けているのは、それも絡んでいるのだろうか。怯えているような、怒っているような。


「ねえドランくん、シグに何をしようとしたの?」

「……」

「倫理的に受け入れられないこと、だっけ。具体的な内容は?」

「……言ったとして、それでどうする?」

「どうもしないよ」

「……」

「僕は何もしない。今訊いてるのだってなんとなくだ。言いたくないんだったら言わなくても構わない」

「あ、あばば……」

「シグは相変わらずだね。何を言っているかは分からないけど」

「…………その子の」

「ん?」

「その子の記憶を消そうとした」

「……へえ。なんでそんなことしたの?」

「我々に従おうとしないからだ。我らの同族ならば、一族のためにその身を捧げるほどの意志があるはずだ。なのにその子にはそれがなく、その子が果たすべき使命も責任も何もかもを放棄しようとしている! 言って聞かせても分からない、ならば! 強行手段に出るしかないだろう!」


 感情が昂ったのか、最後は叫ぶようにそう言った。シグはその剣幕に怯えたように僕の後ろにまわった。器用に僕の服の裾を掴んでくる。伸びるから止めて、シグ。

 相澤くんは理解できないと言うように顔をしかめる。


「一族のためとか、そんなことのために記憶を消すのかよ?」

「君達には分からないだろうな。でも、そういうものなのだよ、私達は」

「訳わかんねえ……」

「まあまあ、文化の違いってやつだよ。そんなに気にしなくてもいいんじゃない?」

「お前は気にしねえのかよ!? シグの記憶を消されそうになったっていうのに、なんで一番親しいお前がそんなに冷静なんだよ!」

「え、でも消されてないじゃん。消されそうになったってだけで。未遂だよ未遂」


 ま、本当に消されていたところで、僕が悲しむとか怒るとかそんなアクティブな感情を抱くのか疑問だけど。使命だの責任だのとドラン君が言ったが、その使命とやらも興味がないし。

 ……これがシグじゃなくて絆なら、どうなんだろうか。少しは悲しんだりするのだろうか。いや、やっぱり変わらないかもしれない。何て言ったって、僕だからなぁ。


「で、話は変えまして……だ。これからどうするの?」

「これから?」


 鸚鵡返しに相澤くんが言う。


「相澤くんは帰るでしょ? 魔王は倒せてないけど、放っておくなりなんなりしてさ」

「いや、放り出すわけには」

「ならどうするの? 勇者といっても、基本はただの高校生じゃん」

「そ、れは……」

「それに、心配しなくても大丈夫だと思うよ。ねえドランくん。まだここを植民地化するつもり? シグに妨害させるけど」

「あばば?」

「む……。そ、れは…………分かった。この世界からは手を引くように皆を説得してみよう」

「そう。じゃ、よろしくね」


 不機嫌そうだけど、ドランくんは確かにそう言った。ならもう良いだろう。……まだ明らかになってない事実とか伏線とかありそうだけど。こんな終わり方、ゲームだったらクソゲーだと評判になること必至だな。

 ま、現実なんてこんなものか。


「さて、これで一応解決ということで僕は帰るよ。相澤くんは?」

「……あー、俺もこうなったらあんまりやることなさそうだよな……でもなんか、放り出すようで気持ち悪いというか……」

「律儀だねえ。ま、自分で決めてよ」

「ああ……」

「で、シグは?」

「あばば?」

「シグはどうするの? 僕のところにもう一度来るか、ドランくんたちの方へ行くか」

「あーば。あーばーば、あーば!」

「うおっと」


 飛び付いてきた。これは、僕のところに来る、ということだよな。……面倒な。


「今更かな……」

「あば?」

「なんでもないよ、気にしないで。ドランくん、連れてくけどいいかな?」


 一応確認をとる。駄目と言っても意味はないけど。


「……我らではその子の力を御することはできない。だから、その子を止められる可能性が唯一あるワタナベに任せよう」


 残念そうにドランくんは言った。分かってくれてなにより。


「じゃあ、今度こそ帰ろうか」


 日常へと。




 そして無事に帰って来た僕らは家に向かった。


「あ、世界がまわ、る……」

「あば!? あーばー!」

「……去年、いや、もう一昨年か、の夏以来だな……」


 風邪で倒れた。


さあ皆さん。これが風呂敷を広げすぎて畳めなくなった一例です。

色々設定を考えてはいたもののそれを回収できずにこの様ですよ、さあ笑え!


そのうち、きちんと設定を活かした話を書けたらいいなぁ……。

とりあえずこれはぶん投げ過ぎだと思うので、番外編とかで相澤くんの勇者物語(仮)とか宇宙人一族の事情とかを書くつもりです。

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